2007年01月28日

◆ハンケチはどこへ行った

                         渡部亮次郎

昭和29(1954)年の流行歌に岡本敦郎(あつお)の歌う「高原列車は行く」
というのがあるが、ここで歌はいきなり「汽車の窓からハンケチ振れば
・・・」と歌っているもんだから、いまどきの人から「なんでハンカチ
をハンケチと歌うんだ」という疑問が呈せられている。

私は、これは日本人にいかに英語が影響しているかの社会現象だと思う。
戦前生まれの日本人はハンカチなんか知らないし、仮に知っている人で
も、これがハンカチーフという英語の略だとは知らなかった。

ただ高原列車の歌より4年も前の昭和24年に二葉あき子が歌ったのは
「水色のハンカチ」となっている。藤浦は長崎県平戸、丘は福島県の生
まれ。「ケ」か「カ」か、出身地の違いからではなさそうだ。

なるほど、なんでも取り上げて解説してみせるフリー百科事典『ウイキ
ペディア』は「ハンカチ」を取り上げ、ハンカチ王子も取り上げている。

<ハンカチとは、ハンカチーフの省略形。ハンケチと称されることもあ
る。手を拭く、汗を拭う等に使う、通常は四辺を一にする正方形の布。
欧米では鼻をかむことに使われている>。

これではなぜ「ケ」ができたかがわからない。広辞苑は「ハンカチに同
じのそっけない。ただ、1936年生まれの私は少年時代はハンカチを持と
うにも戦争中の物資不足のため生産されておらず、言葉すら知らないで
育った。

野球をやるときはベンチのタオルで拭いたし、高校に入ってからは日本
手拭を小さく畳んで腰にぶら下げているのが普通だった。その昔、旧制
の高等学校の生徒は、その手拭が常に汚く「醤油で煮染めたような」と
表現された、とものの本で読んだ。


再びハンカチ。

<素材は綿、絹及び麻(リンネル)などが多い。近年の清潔志向を反映
し、抗菌加工を施した素材も広く出回っている。ズボンやジャケットの
ポケットなどに入れたり、鞄に入れて持ち歩く。マジックにおける重要
な小物の一つである。

2004年(平成16年)から2006年(平成18年)にかけてのイラク復興支援
群などの派遣に際して、派遣自衛隊員の安全を願って黄色いハンカチを
身につける運動が見られた。

2006年、第88回全国高等学校野球選手権大会の優勝校早稲田実業のエー
ス斎藤佑樹が青いタオルハンカチで汗を拭くことから電子掲示板やマス
コミから「ハンカチ王子」と呼ばれ青いハンカチが全国でブームになっ
た。>

かまやつひろしの歌にも出てくる。吉田拓郎作の『我が良き友よ』のよ
き友は腰に手拭をぶら下げてやってくる。決してハンカチで顔など拭か
ない。

戦前のサラリーマン(その頃は勤め人といった)がポケットに忍ばせたの
は「ハンケチ」であって「ハンカチ」ではない。昭和30年ごろになって
ようやく英語教育が普及するようになると「ハンケチ」が実は「ハンカ
チーフ」という英語の略称と知るようになる。するともう「ハンケチ」
とは発音できなくなった。

しかし「汽車の窓からハンケチ」と謳いあげた作詞家の丘 灯至夫は
2007年2月には満90歳を迎える大戦前派の人だから、この歌を作詞する頃
はハンケチがハンカチである事は知らなかったのではなかろうか。

それまでの日本人はハンケチすら持たずに手拭を常用としていたのであ
る。持ってもハンカチとは言わなかったように思う。

<手拭(てぬぐい、江戸弁・博多弁では、てのごい)は、手を拭いたり
洗顔、入浴時に体を洗ったりするための木綿の平織りの布である。日よ
けや汗拭いなどの目的で頭にかぶることもある。

各種のものがあるが約90cm x 35cm程度の大きさで、白地に藍染による
柄がある場合が多い。本来、日本古来のものを指すが明治時代に西欧か
らももたらされたタオルを含むこともある。特に区別する場合、日本手
拭という言い方をする。

起源は明らかではないが、古くは手巾、江戸時代頃に手拭という言葉が
使われるようになり庶民にも普及した。

現代日本での日常生活ではタオルあるいはハンカチの使用が多いが手拭
が廃れたわけではない。

粗い平織りで長さのある手ぬぐいは吸湿性は劣るがタオル地の製品には
ない利点があり、農作業、伝統芸能、祭、剣道などでのかぶり物、鉢巻、
目隠し、汗ぬぐいなどとして、あるいは布巾として今なお利用されてお
り、商店などの贈答品やイベントの際の記念品としての需要も少なくな
い。

近年、見直されいろいろな柄を和小物の店や手芸店で見ることができる
ようになった>(フリー百科事典『ウイキペディア』)

ハンケチは死語になったがハンカチは盛んである。だが死んだと思われ
ていた手拭も盛んである。

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック