2007年02月09日

◆大阪ドクターヘリ 実現

                    毛馬一三 
   (日本一メルマガ「頂門の一針」705号 07.02.09に掲載)


大阪ドクターヘリが、2008年1月から就航することが事実上決まった。これは大阪府が、新年度予算案を審議する2月定例府議会に同ドクターヘリ1機導入の予算額9500万円を提案することにしたためで、府議会全会派がこれに賛意を見せていることから文句なしのテイクオフとなる。

全国ではまだ12番機となる導入だが、キッカケからわずか2年と3ヶ月後にテイクオフに漕ぎ着けられたのは、異例のスピードだといってよい。

まして過密都市部での導入に対する難色論を抑え、首都圏東京に先んじて実施に踏み切ることは、まだ様子見の他大都市の関心を集めるだけではなく、導入への機運に弾みを付けることは必至であろう。

救命医療を目的とするドクターヘリのシステム大阪府計画そのものは、既導入10機と大筋では変わりが無いが、異色なのは過密都市で特に活躍する「救急車」と、ヘリポートに着陸して待機する「ドクターヘリ」とを巧みにドッキングさせる「ランデブー・ポイント(合流・救命処置)」を特別に設けたことだ。

この「ランデブー・ポイント」とは、119番通報を受けた通信司令室(市町村消防本部)からの同時指示で、「ドクターヘリ」と患者を搬送する「救急車」が無線連絡を取りながら合流する地点のことで、そこに患者が運ばれれば、ヘリ搭乗の医師と看護師による救命処置がまず行われる。

それが終わると患者をヘリに移乗させ、大阪府が指定するドクターヘリ基地病院「大阪大学医学部付属病院」に搬送するというものだ。

たしかにこの「ランデブー・ポイント」構想に行き着くまでには、曲折があった。

早い話、救急病院の数が完備し、道路網も発達して過密都心部では「救急車」の方が遥かに効率的だという意見が、知事の委嘱する専門検討委員会や事務当局で支配的で、むしろ市街地での着陸場所特定に手間隙かかる「ドクターヘリ」導入には否定的な雲行きだった。

しかし、15分以内に府下全域に到達できる「ドクターヘリ」の特性を生かし、搭乗医師と看護師が救急処置を施した後ドクターヘリ基地病院に搬送できれば、府民の救急救命の効果は測り知れない。

特に、最近は、医療の高度化、専門化に伴い、「最寄の」病院ではなく、遠くても「最適の」病院に患者を搬送する必要性が高まっており、このことは難しく複雑な疾病が多発する大都市圏においてこそ顕著である、との意見が出された結果、遂にこの「構想」を軸にドクターヘリ導入の方向へと集約されていったといわれる。

そして昨年暮れにこの専門委員会の意見具申を受けた大田房江知事が、ただちに関係部局の幹部を招集し、「1億円規模の予算で、年間推定500人に近い救急患者の命が救えるものなら、速やかに実現に向けた対応を進めてほしい」と述べ、

さらに、兵庫県のJR尼崎事故の際にドクターヘリが大活躍し大勢の乗客の命を救った事例を挙げながら、府下での災害発生時にもこのドクターヘリが迅速な医療救護活動が出来るよう実施に向け検討する「ドクターヘリ運航調整委員会」を設けるよう指示している。

ところで、この大阪ドクターヘリ導入のキッカケを拵えたのは、NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」の国松孝次理事長と同理事長を案内してきた元NHK記者の石岡壮十氏だったことは既に触れている。

その国松理事長を石岡氏同席の上で、大阪府議会公明会派の光澤忍議員に私が引き合わせた。05年9月のことである。

国松理事長はこう言った。「ドクターヘリを1機飛ばすのにかかるお金は、年間で2億円程度です。仮にヘリを各都道府県に1機ずつ配備し、約50機のヘリを運航すると、年間で100億円必要になります。大変な額のお金だと思うかもしれませんが、実は、そうでもないのです。国民一人当たりの負担として見ると80円ですから、これで助かる命が増えるのなら、安いものです」。


以来、光澤議員の動きは素早かった。同議員は、國松理事長の勧めで、「日本救急医学会近畿地方会(救急ヘリ搬送検討委員会)」の常任幹事で、「ドクターヘリの搬送システム」を長年研究してきた田伏久之医師に面談する。

その結果、脳疾患、心大血管疾患などの重症患者を救急車で病院まで搬送した大阪府下の955件(2002年度)のうち、「ドクターヘリ」で搬送されるべきだったと専門医の検証で判断された件数が、半数に近い414件に上ることを知らされ愕然となる。

また05年にドクターヘリを導入運用開始した札幌市の手稲渓仁会病院救命救急センターなどを訪ね、同機運用を現地に視察している。同議員は、こうした調査結果をもとに会派内で調整した上、関連諸機関、学識経験者等による「ドクターヘリ配備検討委員会」の立ち上げを太田房江知事に提唱する。

同専門委員会が開かれるのは06年4月だが、これに意欲を示した太田知事の決意の現われだった。

太田知事も、光澤議員の進言を受け入れて國松理事長と事務当局を接触させ、NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク事務局」から、「ドクターヘリ」に関する特別措置法の成立を目指す国会の動きや、「ドクターヘリ」を導入済みの道府県の運用情報などを積極的に入手している。

大阪府の大田知事が国松理事長の進言や光澤議員、府議会各会派の強い要望を受け入れて、わずか2年余でドクターヘリの導入を現実のものにしたことは、現在府職員の「裏金問題」で窮地に立たされている同知事とはいえ、これについては大いに評価されて然るべきであろう。

前出の石岡氏(NHK同期記者)が送ってきたコメントがある。
<行政の最大の責任は、市民の財産・生命を守ることだ。その一点を目指して、あのオウム銃撃事件で瀕死の重傷を負った経験を持つ国松氏が動き、その熱意をがっちり受け止めて、「ヘリのテイクオフ」にすばやい行動を起こした府会議員、それを結実させた大阪府知事に敬意を表したい>。
まさに同感である。    07.02.08

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