2013年02月28日

◆黒田氏指名で財務省との亀裂回避

古澤 襄


米ウォール・ストリート・ジャーナルは、安倍首相が日本銀行次期総裁に黒田東彦アジア開発銀行総裁を選択した背景について詳しく報じている。

日銀総裁選びが本格化するなか、黒田氏を念頭におく安倍首相と、元財務次官の武藤敏郎氏を推す財務省や麻生副総理の間に綱引きがあったという。事実、武藤氏擁立の勢力は非常に強く、積極的に官邸に働きかけていた。

首相の経済アドバイザーは、武藤氏を次期総裁として指名した場合、金融緩和と景気刺激・経済成長促進策を合わせた「アベノミクス」にブレーキがかかったと受け止められることを憂慮していた。

結果として武藤氏が総裁候補から外れたが黒田氏も財務省出身であることに変わりはなく、麻生氏も財務省の為替政策を担当していた黒田氏は「正しい選択」だと同意の意を表した。首相と財務省の亀裂も回避されたことになる。

<【東京】安倍晋三首相は、日本銀行次期総裁に黒田東彦アジア開発銀行総裁を選んだ。これは首相と財務省との間に亀裂が入ることを防ぐための融和的な決定とみられる。

今月、日銀総裁選びが本格化するなか、安倍首相と、副首相も兼ねる麻生太郎財務相との間で候補者をめぐり意見の食い違いがみられたと、ある政府筋は言う。

だが、総裁選びに詳しい複数の情報筋によれば、25日に安倍首相が黒田氏を総裁に、学者の岩田規久男氏を副総裁の一人に指名したことが公になり、緊張は和らいだ。ある情報筋は今回の指名で内閣に深刻な軋轢(あつれき)が生じなくてよかったと述べた。

政府が安倍氏による黒田氏の指名を確認した後、麻生財務相は、財務省の為替政策を担当していた黒田氏は「正しい選択」だと同意の意を表した。

麻生財務相はこれまで理想的な候補者には「組織運営」の経験が必要と主張しており、政府関係者の間では元財務次官の武藤敏郎氏を念頭に置いていると考えていた。

武藤氏は財務省内の伝統的なエリートコースである主計局でのキャリアを積み上げ次官にまで昇り詰めていたからだ。黒田氏の財務省時代の肩書きよりも高い位置付けにある。

武藤氏は2003年まで日銀副総裁を務めていた経歴もあり、日銀は財務省と一致団結して武藤氏を推していた。だが国会議員の中にも多くの支持者を持つ武藤氏は交渉に秀でているものの、金融緩和に関しては黒田氏や岩田氏ほど積極的ではないとみられていた。

このため日銀による金融緩和の強化を強く提唱している経済学者や国会議員ら安倍首相の経済アドバイザーは、武藤氏を次期総裁として指名した場合、金融緩和と景気刺激・経済成長促進策を合わせた「アベノミクス」にブレーキがかかったと受け止められることを憂慮していた。

これまでアベノミクスへの期待の高まりによって円安が進行し、東京の株式市場は4年ぶりの高値を付けている。

安倍首相のアドバイザーの一人は、武藤氏擁立の勢力は非常に強く、積極的に官邸に働きかけていたと述べ、安倍氏がその圧力に流されるのではないかと心配するアドバイザーが多かったと述べた。

だが、これまで一貫して日銀による更なる施策を求めていた黒田氏を指名したことをこのアドバイザーは歓迎した。財務省で為替を担当していた黒田氏は何年も前に、円高によって輸出業者はコスト削減を余儀なくされ、その結果として賃金や価格が下落するためデフレが悪化すると警告していた。

また、黒田氏は総裁としてのアジア開発銀行の組織運営は既に6年間にも上っているため、麻生財務相も納得するだろうと、アドバイザーは指摘する。

過去に多くの財務次官が退官後に日銀総裁に就任したが、1998年に日銀の独立性が高まってからは財務省出身者が総裁を務めることはなかったため、同省はポスト奪還に力を入れていた。

結果として武藤氏が総裁候補から外れたが黒田氏も財務省出身であることに変わりはなく、安倍氏側近の一人はそれを財務省側の勝利ととらえている。

総裁の正式決定には衆参両院の承認が必要であり、白川方明現総裁が退任する3月19日までの時間を配慮して安倍首相は今週中に日銀人事案を国会に提出する予定だ。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
<「頂門の一針」から転載>
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