2007年02月14日

◆組織風土で蠢く「裏金問題」

                     毛馬一三

   (日本一メルマガ「頂門の一針」710号・07.02.14掲載)


「大阪ドクターヘリ」の実現で、久しぶりに地方自治体からの朗報として話題を呼んだ大阪府だが、ここに来て批判轟々の「裏金問題」で揺れている。

地方自治体の最近の話題と言えば、福島、和歌山、宮崎3県知事による相次ぐ官製談合事件で、これを機に地方自治のイメージは地に堕ちた。地方分権の風潮の中で、過度に集中する権力を逆手に取り、県政運営を悪に染めてしまったといわれる同事件だけに、地方自治体の権威や信用を失墜させた印象は拭うことはできない。

だが大阪府の「裏金問題」は、これとは質を異にする。早い話、お役所の思い上がりによって培われてきた「組織ぐるみ不祥事」そのものであり、それ故に知事個人から発した前述の「3知事事件」とはまるきり次元が違う。庁内多部局関与の事実から見ても、悪質極まりない「組織犯罪行為」と言っても言い過ぎではあるまい。

というのは大阪府の調査では、今回06年11月頃から発覚した「裏金」総額は、07年になってから一挙に拡大し、これまでに大阪府23部局で6850万円に上る。うち3500万円の金が既に流用されたというから驚きだが、流用金の使途が何と、職員への冠婚葬祭費、夜勤帰宅のタクシー代、職員同士の飲食代、陳情先の国の担当者への手土産用ビール券・商品券の購入代など、常識では考えられない目的に流用されていたのだから開いた口が塞がらない。

しかもどうしても理解出来ないのが、「流通対策室」と「大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター」の2部署での「裏金」1100万円が、使途不明という事実。「何に使ったか皆目思い出せない」とシラを切るというから話にならない。

そこで大阪府の大田房江知事は、2月9日課長級以上の幹部職員300余人を前に「情けない、悔しい」と悲痛な声をあげた挙句、主原因を「府の組織風土の問題がある」と率直に述べ、府庁の古来からの風土そのものが引き金となっている組織的犯罪である事実を暗に認めた。

とは言いながら、急ぎ事態打開を図らなければ迫っている統一地方選挙で批判の矢面に晒される可能性がある上、尾を引けば出馬予定の来年の知事選挙にも悪影響を与えかねない考えたらしく、「早期幕引き」を側近理事者に指示。取り敢えず、「裏金」の6850万円に年5%の利息分を合わせて約1億円を関係部局の職員に返還させると共に、1100万円が使途不明の「流通対策室」と「大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター」2部署の担当職員を横領で刑事告発することを決定。

それに加え8日、「外部調査委員会」の提言をそっくりそのまま取り入れて、府の「再発防止策」として公表、事態の早期収拾の道筋を付けようとした。ところがこれが裏目に出て、紛糾の火種を拡大してしまったのである。

ところで、大阪府の「裏金」には“前科”があることは、既に本欄で掲載させて頂いている。つまり平成9年に13億3300万円の「裏金」が発覚、当時の横山ノック知事が管理職全員に弁済を求めた。返済は、大阪府職員組合から一括借入して弁済に当て、管理職たちは退職金または分割返済等で平成15年までに完済した経緯がある。

だから今回再び「裏金」発覚した時、誰しもが前の「裏金」の一部を密かに隠していた残金だという認識が専らだった。ところが事実は相違していた。府議会が調べたところ、新年度の予算配分の度に、過去と同額の「裏金」を各部局毎に新しく溜め込み確保するという組織全体関与の卑劣な「裏金作り」の新手口があることを突き止めたというのだ。

府議会の「不適正会計特別調査委員会」は怒った。しかも議会側が調査・解明中に、府が「府独自の再発防止策」を先行公表したのは、進行中の議会調査権を無視し、同策の追認を求めて幕引きを強行しようとするものだとして、府側に同「再発防止策」を撤回させる異例の強硬策を取った。

さらに反発を増幅させたのは、撤回させた府の再発防止策そのものが、「専任巡回チームが全部署を回り、金庫の点検や公金管理の方法などを抜き打ちチェックするとか、所属長が定期的に“裏金”記帳の通帳を確認すること」など、何と前回「裏金」事件直後にまとめた防止策のそれとほぼ同じで、再発を阻もうとする意欲と熱意に欠けるものだったからである。

この経過について与党会派の有力議員は、<議会側の反発は当然だ。いま求められているのは、徹底的な事実解明と府の腐りきった組織全体の体質改善。前回の教訓がまったく活かされていない。府が声高に厳しい処分を発表し再発防止を叫んでも、どれだけの府民が信じてくれるだろうか、皆無に近いのではないか。知事のリーダーシップ、指導力が問われる>と手厳しく批判する。

また監査業務に従事していた府OBですら、<当時われわれの監査の目を潜り抜けた組織の不祥事を皆無にできるかどうかは、「裏金」を流用した多岐の目的をことごとく無くさなければ、大掃除は事実上無理>と告白する。

「裏金」問題は、官製談合と入れ替わって地方自治体の新たな火種になる様相を見せている。宮崎県の東国原新知事が就任早々「裏金」はありませんよねと職員に問いかけた光景は記憶に新しく、さらに「裏金」防止に名乗りを上げた県も幾つか出てきている。

だが、この組織ぐるみの「裏金」を、「我々を癒す金ではなく、府民(県民)を護るための必要な諸経費」だと思い込んでいる伝統的お役所気風が、職員間になお根深く定着しているだけに、一時的に姿を潜めてもほどなく復活していくであろと、関係者の多くが認めているところだ。「裏金」も、「官製談合」と同様、不滅なのだ。

紛糾する大阪府は、どのようにして府民の信頼を回復する手立てを考えて行くのか。「裏金」で揺れる他地方自治体も大阪府の後始末を注視している。
          07.02.14

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