2007年02月17日

◆大阪に超された東京

       <「頂門の一針」713号掲際(2月17日)>                      
                       

渡部亮次郎

ドクターヘリとは、重篤な患者が発生した場所に医師と看護師をいち早
く派遣し、初期治療を開始するためのものである。

日本では 2001年に導入促進事業が始まって以来、理解が進んで来ているが、まだ1道8県10病院での運用にとどまっているのが実情である。

最大の問題は、年間2億円近い運航費用の負担であり、昨今の地方自治体の財政事情で導入を躊躇しているところが多い。

また基地病院内や病院間の横の連携、十分な数の医師の確保、乗員の養
成システム、ヘリポートの不足、運用時間が日中に限られ、夜間離発着
が出来ない事などといった、解決しなければならない課題が多い。

しかし自動車より速度の速いヘリコプターによる救急活動は、コストは
高いものの非常に有効な救急活動である。従来だと助からない患者が助
かっている。今のところ日本では北海道、千葉、神奈川、長野、静岡、
愛知、和歌山、岡山、福岡、長崎の10道県11病院で運行されているに過
ぎない。

しかし世界では、特にアメリカやヨーロッパで活発である。それをつぶ
さに実感してきたのが元警察庁長官にしてスイス大使を務めた国松孝次
さんである。

オウム真理教摘発最中の1995年3月30日、東京都荒川区南千住6丁目の自
宅マンション前にて何者かに狙撃され、一時危篤状態に陥る警察庁長官
狙撃事件でも知られる。救急車の適切な判断で一命を取り留めた体験者
だ。

そこでスイスから帰国後、ヨーロッパ並みのドクターヘリの普及を決意
してNPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」を発足させて理事長に就任した。

直後、警察庁時代に懇意になった元NHK社会部記者の石岡荘十氏と会った。石岡氏は定年退職後、心臓手術を体験。救急は他人事でない関心事だった。

「石岡さん、ドクターヘリ1機の費用は年間2億円。全都道府県では年間
100億円かかりますが国民1人あたり80円です。これで助からなかった人
が助かるんですから安いものです」。

石岡氏は大都市の中でも東京よりはまず大阪と考え、同期生池尻一寛氏(元NHK記者大阪府庁キャップ)に連絡。池尻氏は府議会議員の光澤忍氏を招いて国松、石岡、池尻、光澤の4者会談で合意。

以後、光澤氏の大活躍でまず太田房江知事が乗り気になり、2月定例府議会に「大阪ドクターヘリ」1機を2008年1月から就航させるべく9500万円の予算を提案することとなった。

光澤氏らの根回しで府議会は全会派が賛成を表明しているので可決は間
違いない。大阪府の場合は大阪大学医学部付属病院が府指定の基地病院
となる。

元記者たちが過去を活用し、現役時代は避けてきた行政への容喙を積極
的に行い、世の為人のための責務を果たした例である。どこでもこうう
まく行くとは限らないが大阪に先を越された東京はどうする。(元NHK政
治記者 元外相・厚相秘書官) 2007.02.09



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