2007年02月20日

◆医療費削減するかドクターヘリ


                 石岡 荘十

「ドクターヘリの普及は結果的に、医療費の削減にも貢献するのではな
いか」
 
現役記者時代、知遇を得た元警察庁長官、スイス大使を歴任した国松孝
次さんがドクターヘリ普及のNPO「HEM−Net」をスタートさせ
たころのことだ。彼にそう聞いたら、「はっきりした研究データが無い
んです」と否定的な答えだった。

ところが、その可能性があることを示す研究結果がこのほどまとまった。国松さんが有料会員制月刊誌「エルネオス」1・2月号でその概要を連載して紹介している。

ドクターヘリについては、本メルマ前号(711号)でも主宰者から紹介されているので、ここでは省略し、以下、国松さんが書いた記事を“盗用”しながら、概要を紹介する。

<ドクターヘリを活用すれば、救急車だけで救急活動を行なうより、医
療費負担は少なくて済む可能性が高い。

この点に関する実証的な研究はこれまで皆無に等しかったが、最近、わ
がNPO法人の委託を受けて、東大医科研の山口洋博士(生物統計学専
攻)が画期的な研究を行なった。

研究は、日本医大千葉北総病院が2003年1月から06年3月までに扱った交通事故患者のうち、救急車とドクターヘリが競合して利用される地域内で発生した事故の患者をから、救急車搬送44人、ドクターヘリ搬送26人を抽出。これらの患者を年齢、性別、現場血圧、外傷重傷度、現場呼吸数などで分類・標準化をした上で入院日数、入院保険点数の比較を行な
った。

その結果、ドクターヘリで搬送した患者の方が、救急車で搬送した患者
の入院日数(38.5日)より16.7日短く、入院保険点数で(救急車の患者
245.554点)より、112,959点少なかったのである>

保険点数は1点10円だから、患者1人当たり110万円以上の削減が可能になるという結論である。


国松さんは、「この研究だけで、確実に医療費削減の効果があるとは言
えず、今後、他の施設でさらに研究・検証する必要がある」と前置きし
ながらも、「結果の妥当性と再現性はきわめて高いものだ。ドクターヘ
リの活用は医療費の削減効果を持つことを数値的に実証できるものと考
えている」と自信のほどを覗かせている。

加えてこの記事では、ドイツの実例を引いている。

ドイツは世界最高の救急ヘリシステムを持っていることで知られている
が、救急ヘリ整備の最大のプロモーターは保険会社である。理由は簡単。救急ヘリの普及が、保険支払金額の削減に貢献すると判断しているからだ。

ドクターヘリの普及に二の足を踏む地方自治体の言い訳は「1機あたり2億円の運用経費」である。

ヘリの運用経費についてNPOは「医療保険でカバーすべきだ」と提案
しているが、国は新たな給付理由が出てくることに警戒感を隠さない。
消極的である。

しかし、医療費削減の貢献することが分かれば、ドクターヘリの普及に
はずみがつく可能性が大きくなる。
国松さんは、「ひたすら拒否反応を示すのではなく、データに基づいた、冷静で、実証的な議論が展開されることを心から期待している」
と結んでいる。

まったく同感である。

それにつけても、私の知る限り、こんな研究成果がマスコミのどこにも
掲載されていない。現役デスクだったら、担当記者を怒鳴りあげるとこ
ろだ。 20070214

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