2007年02月28日

◆集りで殺された記者


渡部亮次郎

集り〔たかり〕と読む。脅したり泣きついたりして金品を巻き上げたり、おごらせる(「広辞苑」)。第2次大戦前の日本でも新聞記者が世間から嫌われたものだと若い頃教えられた。戦後はそうでもなくなった。

産経新聞の北京特派員福島香織記者は、報道統制下ながらいつも特異な記事を読ませてくれる頼もしい記者。その福島さんが2007年2月27日付6面「新せかい百科 アジア発」に報道統制下の悲哀 殺害された記者 と題して「集り記者」の現実を知らせている。

それによると2007年1月10日に山西省大同市郊外のヤミ炭坑で取材中の中国貿易報山西省分社所属の蘭成長記者が作業員らにツルハシなどで撲殺されたのは、炭坑主に「集っていたからだった」と言うのである。

事件を詳報した時事週刊誌「中国新聞週刊」2月5日号によると、地元記者たちは取材と称してハイエナのように群がり炭坑主の儲け1日約105万円の半分を分捕っていた。蘭記者もそのうちの1人であった。

炭坑に「ヤミ」と付いているのはなぜか。安全無視で只管生産に邁進する民間小規模炭坑である。安全無視だから落盤などの事故は凄まじく多発する。

<中国:炭鉱事故による死亡者数 世界の79%を占める

【大紀元日本6月30日】日中国国家安全生産監督管理総局(安監総局)の李毅中・局長は24日、中国の炭鉱工業は安全面において深刻な問題を抱えていることを認めた。

中国炭鉱の100万トン生産量あたりの死亡者数は3人、米国は0.03人、ポーランドや南アフリカは0.3人であり、中国の炭鉱労働者の死亡率は南アフリカの30倍、米国の100倍であることが明らかになった。2005年6月25日の「明報」が伝えた。

中国は世界最大の炭鉱工業を有し、中国政府の発表によると2004年の石炭生産量は世界の35%を占める。しかし、炭鉱事故による死亡率は世界の約80%を占めており、これは中国の炭鉱で少なくとも毎日15人の労働者を犠牲にしないと、経済発展を支えるのに十分な石炭生産量に追いつかないことを表している。

李局長はまた、炭鉱事故による死亡者数は、以前政府が発表した数字より若干減少はしているものの、依然として世界炭鉱事故死亡者総数の79%を占めていることを認め、今年の1月から5月までに中国全土で発生した各種の事故をあわせると32万件あまりに達し、その死亡数は49,000人を超えたと漏らした。


炭鉱事故多発の原因について李局長は5つの問題点を挙げた。1.経済成長方法が立ち後れているため、安全生産を脅かしている。2.長期にわたり安全面に対する人的、物的投資が不十分である。3.業界に対する管理の弱体化、企業管理の後退。 4.農村の労働力が都市部に流出し、炭鉱労働者の育成が不十分。 5.中国炭鉱の地質が極めてよくない。

中国のエネルギー資源は約70%を石炭に依存している。中国経済の急速な発展に伴い、石炭の使用量が激増している一方、一部の炭鉱責任者は安月給の労働者を顧みず、安全基準を無視して暴利を得ていると関係者は指摘している。

アジアニュースネットは、25日のAFP通信の報道を引用し次のように報じている。中国の炭鉱は世界で最も危険であり、政府は04年1年間で6,000人を上回る労働者が事故により死亡したと発表しているが、民間の調査によると実際の死亡者数は2万人を超えると見られている。(大紀元総合報道)> (05/06/30 01:36)

そこで今度の事件の炭坑主候振潤容疑者は地元記者たちに弱味を握られていた。だから集られていたわけで、供述によると殺された蘭記者は7人目の集り記者だったという。

しかも蘭氏は正式の記者証を持っていなかったことからニセだと思い、懲らしめてやろう、と作業員らに襲撃を指示したのだと言う。

福島特派員によると中国の新聞はとう小平による改革開放路線(1978年)に伴って大半が独立採算制に移行させられた。購読料と広告料で経費を賄う、という資本主義国と同じような条件に追い込まれたわけだ。

「だが、永らく体制の宣伝に明け暮れてきた既存メディアにとって、読者を引き付ける紙面を作る事は容易ではない。結局は、記者ら社員の給料を低く抑え、記者にまで広告取りのノルマを課す安易な道に走り勝ちだ」と福島記者。

一流記者は株を転がし、二流記者は広告を取り、三流記者はアルバイト原稿に勤しみ、四流記者は紅包(ワイロ〕を受取る。新聞記事だけを書くのは五流記者、との戯れ歌〔ざれ歌〕が中国では流れているそうだ。

殺された蘭氏の記事は生前、1本も紙面に載った事は無かった。それでもパリを拠点とする「国境無き記者団」は言論の自由のために闘い殺された記者リストに蘭氏の名前ものせた。

しかし、記者の肩書きがあれば広告取りに有利だと言うので、便宜上、記者と呼ばれている社員は少なくないのが中国の現実で、ヤミ炭坑という集り対象が集中する大同市にはこの手の「ニセ記者」が600人以上居るそうだ。

1本の記事も書かなかった記者を殺されたからと英雄化するのでは、中共当局もアタマに来ているであろう。

「蘭氏の死には無論、自業自得という側面はある。だが、ことの本質はむしろ、中国報道界のモラルの低下にこそある。権力に批判的だったり、当局の許可無く特種を書いたりすれば弾圧されるという報道統制の下で、記者としてのモラルや使命感を貫くことが如何に難しいか、である」と福島記者は述べている。2007.02.27

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック