古澤 襄
〜朝鮮総連本部の落札〜
<公安当局が「対日工作拠点」とみる在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物が26日、落札された。落札したのは宗教法人最福寺(鹿児島市)で、同寺の池口恵観法主(えかんほっす)(76)は何度も訪朝、総連首脳とも親交があり、公安関係者は「北朝鮮に近い人物」とみている。
北朝鮮は総連首脳だけでなく、政府高官も池口氏に中央本部維持への助力を要請しており、存続に向けた水面下の活動は「貸与」という形になりそうだ。
■29日にも売却許可
「今まで中央本部にいた方を追い出すということではない。(一部を)貸すのはいいのではないか。総連側と今後、話し合いをすることになる」
池口氏は会見でこう話し、総連への貸与に前向きな姿勢を示した。約45億円という高額落札だが、資金については「ある程度のメドは立っている。総連側からお金が入ることはありえない」と述べた。
民事執行法は債務者である総連の買い受けを禁止している。また、最福寺が総連から資金提供を受けていれば売却は許可されない。最福寺が自己資金で落札すれば、総連と賃貸契約を結ぶことができる。
東京地裁は29日、こうした問題がなければ売却を許可する。整理回収機構など利害関係者は不服があれば1週間以内に東京高裁に執行抗告ができる。高裁で審理されれば、その間手続きは停止される。
売却許可決定が確定した場合、地裁は1カ月以内の代金納付期限を指定。納付後、地裁が差し押さえている中央本部の土地・建物の登記は移転される。総連への貸与の可能性が高く、手続きはスムーズに進むとみられ、最短で1カ月程度で最福寺の所有となる。
最福寺関係者によると、池口氏は競売開始前に総連の許宗萬(ホ・ジョン・マン)議長からたびたび中央本部の物件購入を依頼されており、公安関係者は「総連がうまく死守したという感じ」と指摘した。
池口氏はどんな人物なのか。最福寺関係者によると、安倍晋三首相(58)と親交があるほか、政財界や芸能界、スポーツ界に幅広い人脈を持ち、多くの著名人が師事している。
一方、平成21年から5回訪朝し、23年には北朝鮮に「金日成主席観世音菩薩像」を寄贈した。昨年4月には金日成主席の生誕100年を祝う行事に出席するため平壌入り。北朝鮮から勲章を授与されていた。よど号ハイジャックグループとも交友があり、訪朝時にメンバーと会談したこともある。
こうした経緯から、公安関係者は「北朝鮮に近い人物」とみている。
池口氏は会見で、中央本部の物件に関心を抱いたきっかけについて「北朝鮮上層部の話」を挙げた。訪朝の際、最高人民会議幹部から競売を回避するため「中央本部は大使館。なくなると日本と敵対関係になるから、日本政府に話してほしい」と依頼されたという。
また、中央本部が靖国神社の近くにあることも挙げ、「中央本部を民族の融和と英霊の慰霊の拠点にしたい」とも語った。
■「いわくつき物件」
公告によると、中央本部の土地は約2390平方メートルで、地上10階、地下2階建ての延べ床面積は約1万1740平方メートル。JR飯田橋駅から徒歩約4分の好立地にある。
ある不動産大手の担当者は「普通の売買なら、大手不動産会社がマンション建設用地としてのどから手が出るほど入手したい場所」という。鑑定評価による売却基準価額約26億円に対し落札額約45億円が適正かについては「いわくつきの物件なので判断のしようがない」と話した。
朝鮮総連は昭和61年からここに中央本部を置く。公安当局によると、現在は事務総局、宣伝広報局、国際統一局など7局に加え、民族圏委員会や祖国訪問事務所といった部署がある。
外交窓口の役割を担う一方、総連内部の非公然組織が日本や諸外国からの拉致をはじめとした工作活動を行ってきたとされ、公安当局は「対日工作拠点」との見方も示す。
警察当局が捜査した2児拉致事件では、19年に警視庁公安部が総連の徐萬述(ソ・マン・スル)議長(当時)や許議長ら3首脳に参考人として出頭要請。総連は「対応するに値しない」と出頭拒否を表明した。3首脳は事件当時、総連で組織指導統括の局長や、対外活動担当の部長職などを務めていた。
中央本部は、13年に朝銀東京信用組合の旧経営陣らによる信組資金の不正流用事件で、警視庁が朝鮮総連の元財政局長らを逮捕した際に家宅捜索されている。(産経)>
<「頂門の一針」から転載>