2013年05月20日

◆安倍は“橋下三百代言”と一線を画せ

杉浦 正章



沈黙すれば世界は「同根」と見る
 

三百代言という言葉がある。詭弁(きべん)を弄(ろう)する弁護士の別称である。明治前期に資格がないまま訴訟や裁判の弁護を引き受けた者を称したのが始まりで、その基本は訴訟で勝てば良いのだ。


勝つためにはあらゆる弁舌を駆使してしゃべりまくる。しゃべりまくることによりサギをカラスと言いくるめるのが手法だ。その本質をそのまま露呈しているのが維新共同代表・橋下徹だ。


その品性の下劣さは筆舌に尽くしがたい。なぜなら自ら最初の発言を、日がたつにつれて巧妙に歪曲化し、あらぬ方向への論議の誘導をこころみているからだ。三百代言に素人はだまされるが、本物の政治家の目はごまかせない。


自民党幹事長・石破茂は「国政に影響力を持つ党の党首であり、大阪の首長だ。自分がどういう立場でいるのか、それを聞いた人がどう思うのか。公人として十二分な配慮が必要だ」と見切っている。


橋下は、筆者が最初に指摘した「米軍の風俗活用特例発言の違法性」だけは言い逃れられないと思ったか、「国際感覚がなかった」と言い訳した。橋下の言わんとするところは「風俗」が英語では売春業に翻訳されることを知らなかったというが、これがまず第一の詭弁(きべん)だ。


国際感覚の問題ではない。発言の流れが一番重要なのだ。普天間基地の司令官に米兵の性犯罪をなくす方策を語り「もっと風俗業を活用してほしい」と発言すれば、後講釈のいかんを問わずに「買春」の勧めだ。いみじくも“遣り手婆(ばばあ)”と筆者が表現したとおりだ。


花街の遊郭で「旦那、いい娼(こ)がいますよ」と耳元でささやいたあれだ。したがって司令官が買春をそそのかされたと思うのは当然だが、口にするのも汚らわしいと思ったか、橋下が発言するまでは表に出なかった。


自らの発言ですべてを暴露しておいて、あとから言い訳をする。しかも「合法的風俗と言った」と主張するが、インチキの“後付け”であることは見え透いている。あの脈絡は「海兵隊の性的な欲求不満を買春させて解消させよ」というものに他ならないのだ。三流裁判官でも「有罪」判決を下す。
 

第二の詭弁(きべん)は「猛者集団にやっぱりどこかで、そういうことをさせてあげようと思ったら慰安婦制度っていうものは必要」と言う下りを、あらぬ方向に置き換えようとしていることだ。


あらぬ方向とは「世界各国、そして米国も同じだ。日本だけが性奴隷を活用した特殊な国と非難するのは違う」という発言だ。これは慰安婦制度の容認という女性の人権を蹂躙した発言を、「他の国も同じではないか」と置き換えることにより、視点をそらそうとしていることに他ならない。


視点をそらせて、低俗なるナショナリズムを刺激して、自らの同情を買おうとする“根性”が見え見えで、浅ましい限りである。 


最後の詭弁(きべん)は19日共同代表・石原慎太郎に「発言の趣旨が曲解して伝わり、党に迷惑をかけて申し訳なかった」とマスコミのせいにしていることだ。筆者はテレビの発言と新聞の発言をつぶさに比較したが、こんどばかりはこじつけ記事は見当たらなかった。


発言はこじつけるまでもなく、そのままナマで報じただけでインパクトがあるものであったからだ。「曲解」し続けているのは本人であり、マスコミではない。これまで散々マスコミを利用して、都合が悪くなるとマスコミのせいにする。三流政治屋そっくりだ。


こうした事が指摘できるにもかかわらず維新は18日、大阪市内で橋下や幹事長・松井一郎、政調会長・片山虎之助ら幹部が「橋下氏の発言の撤回には応じられない」との点で一致した。橋下は19日「選挙に不利になるというなら維新の皆で僕を引きずり降ろせばいい。僕から辞めることはない」と開き直っている。


石原も「参院選に出よ」と国政への転身まで進めている。これはまさに三百代言ペースが維新内部でまだ続いている事を物語るものである。維新の自浄努力が全く発揮されない事を意味しており、参院選に向けて致命傷になる誤判断である。
 

問題は発言が国際問題に拡大しており、これに対する政府の対応がありきたりである点だ。各国で右翼国粋主義的傾向のある維新の方向を、首相・安倍晋三の右傾化傾向とダブらせて批判の対象になり初めていることだ。


米議会や新聞報道、識者の発言などにその傾向が出てきた。民主党代表・海江田万里も同様のとらえ方をしているが、海江田は何を言っても負け犬の遠吠えだから言わしておけばよい。だが国際的な反応を放置すべきではない。


韓国大統領・朴槿恵は狡猾にも「日本は何度も傷をうずかせ、韓国民を刺激している」と日本全体の責任に置き換えている。中国や米国の反応も同様の傾向がある。


一政治家の発言を、しかも日本の世論や政界から袋叩きに遭っている政治家の発言を、日本の「右代表」扱いされてはたまらない。安倍は橋下と親しいからといって、沈黙を維持すべきではない。橋下発言とはっきり決別する方向を打ち出さなければ、国益を阻害すると心得るべきだ。


どうせ維新などは参院選惨敗必至であり、自民党が維新票を獲得するためにも、この際橋下を切り捨てるしかない。それにしても橋下を褒めそやしてきた評論家やコメンテーターの顔が見たい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック