2013年05月22日

◆中国、強まる“毛沢東の呪縛”

矢板 明夫


改革派経済学者の言論を記念日まで封殺

北京市と湖南省の共産党宣伝部が管理下にある各メディアに対し、毛沢東生誕120周年記念日(12月26日)まで、毛沢東の批判者として知られる改革派経済学者、茅于軾氏(84)を一切取り上げないよう通達を出していたとが、19日までに分かった。複数のメディア幹部が明らかにした。

反体制派ではない著名学者の言論封殺は近年では異例。習近平指導部による言論弾圧の一層の強化を示唆している。

複数の大手紙編集者によると、通達は5月中旬、党宣伝部の幹部が各メディア責任者に対し口頭で伝えた。19日現在、確認されたのは北京と湖南省だけだが、共産党中央宣伝部は全国に同様の指示を出した可能性がある。

保守路線を強めている習近平指導部は毛沢東生誕120周年にあわせ、毛沢東を持ち上げる一連の盛大なイベントを計画しており、茅氏への措置はその雰囲気作りのためとみられる。

中国国内の経済学者の中で大御所的な存在である茅氏はこれまで、中国社会科学院研究員や天則経済研究所所長などを歴任した。改革・開放初期に欧米の経験を国内に紹介し、中国の市場経済の推進に大きな役割を果たした。茅氏は現在も政治、福祉など経済以外の分野でも積極的に提言を行っている。

文化大革命(1966〜76)中に紅衛兵から激しい迫害を受けた経験があるため、文革を起こした毛沢東を批判する言論が多く「国と人民に大きな災いをもたらした毛沢東の肖像画がいまだに天安門楼上に掲げられ、みんなが毎日使うお札に印刷されていることは、茶番劇というほかない」との内容文章をインターネットで発表し、左派から「漢奸(国賊)」などと罵倒されたこともあった。

今年になってから、当局の意向を受けたとみられる毛沢東の支持者による茅氏への嫌がらせが急増しており、4月から5月にかけて、遼寧省、北京市などで予定されていた3つの講演が激しい妨害を受け、そのうち2つは中止に追い込まれた。

主催団体の関係者は「現場の警察官は妨害活動を黙認していた」と証言している。また、共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は5月8日、茅氏を「中国主流政治思想への挑戦者」と批判する文章を載せた。

茅氏は自身のブログで、自宅への「嫌がらせや脅迫電話が増えている」と明らかにし、「学者として自分の意見は隠さない。私の文章にはすべて事実の裏付けがある」と記し、圧力に屈しない姿勢をみせている。

 産経ニュース 【北京=矢板明夫】2013.5.20 12:30

            <「頂門の一針」から転載>


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