2013年06月05日

◆野中発言は「売国的」だ

渡部 亮次郎


野中広務元官房長官が、中国共産党幹部との会談で、1972年の日中国交正常化交渉の際、当時の田中角栄首相と中国の周恩来首相との間で、沖県・尖閣諸島について「領土問題棚上げで合意していた」と発言して問題なっている。

日本政府は完全否定したが、事実はどうなのか。元NHK政治部記者で、園田直元外相の政務秘書官を務めた渡部亮次郎氏(77)が緊急寄稿した。
            ◇
私は、日中国交正常化の際は、NHK記者として田中訪中に同行し、日中平和友好条約締結の際は、園田外相の政務秘書官として立ち会った。

田中・周会談に同席した二階堂進官房長官からは「尖閣棚上げ」について一切発表はなかった。後日、田中氏が親しい記者を通じて発表した後日談にも「棚上げ」のくだりはない。

その後、私は外相秘書官となり、当時の関係者に聴取したところ、事実は以下のようだった。

尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本領土だが、中国は東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘された70年代以降に領有権を主張し始めた。

このため、田中氏から「中国の尖閣諸島に対する態度をうかがいたい」と切り出すと、周氏はさえぎるように「今、この問題には触れたくない」といい、田中氏も追及しなかったという。

私も同席した78年の日中平和友好条約の締結交渉では、園田外相は福田赳夫首相の指示に基づき、「この際、大事な問題がある」と、最高実力者だったトウ小平に向かった。すると、「あの島のことでしょう。あのことは次の世代の知恵をまつことにしましょう」と話し合いを拒否したのだ。

中国側はこうした経緯に基づき「棚上げ」を既成事実化しようとしているが、説明したとおり「棚上げで合意」などあり得ない。中国が勝手に先送りしただけであり、私自身が生き証人である。

野中氏はこれを中国側の都合のいいように誤解し、結果的に中国側に加担している。

日本政府が「日中間に領土問題は存在しない」という限り、中国は尖閣領有の手掛かりを国際的に失うが、日本に「棚上げ」を認めさせれば「手掛かり」を得るわけだ。

こう考えれば、今回の野中発言は「売国的」というしかない。

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック