2013年06月15日

◆中国から逃げ出す富裕層

藤村 幸義


投資先は海外へ 6割が移民を検討

中国の富裕層は、2008年秋のリーマン・ショック後に発生した不動産バブルの中で、資産を一気に拡大させた。ところが過去2年は不動産相場も頭打ちとなり、投資のリスク分散を図らざるを得なくなってきた。とりわけ国内から海外に投資先を移す動きが目立っている。

招商銀行とベイン・キャピタルがこのほど共同で発表した「2013年中国私人財富報告」によると、12年に投資可能な個人の資産規模は80兆元(約1290兆円)に達した。前回調査(10年)に比べると、2年間で18兆元の増加となっている。

1000万元以上の資産家は70万人を超えた。10年に比べると、20万人の増加である。このうち、5000万元以上は約10万人、1億元以上は4万人に達した。

地域別にみると、1000万元以上の資産家が1万人以上いる省・市・自治区は合計20カ所。12年には重慶、黒竜江、山西、陝西、内蒙古といった内陸部が新たに加わっている。一方で、上海や広東といった沿海部の資産比率は減っており、資産が徐々に内陸部に移動していることが分かる。

だが、資産の伸び率そのものは下がっている。個人の投資資産は、08年段階では38兆元だったが、リーマン・ショック後の不動産バブルの中で、10年には一気に62兆元(08年比63%増)にまで膨れ上がった。

ところが11年秋から不動産価格が下がり始め、経済成長率も10%の大台を大きく割り込んできた。このため12年の個人投資資産も、10年比では29%増にまで伸び率が鈍化している。

例えば不動産や株などへの投資をみると、08年から10年の2年間には資産を55%も増やしてきた。ところがその後の2年間は逆に、資産を2%減らしている。

投資目的をみても、これまでは「財産をさらに増やす」という積極的な姿勢が目立っていたが、この2年間で「財産を守る」「高レベルの生活実現」「子女教育」といった守りの姿勢に転じている。

投資先はリスク分散のために、国内での不動産投資を減らし、海外に投資先を求める動きが目立っている。

海外投資先で最大の比率だったのは香港。また、米国への投資も加速している。海外投資と同時に子息を移民させるケースも多い。なんと資産家の6割が投資移民制度を活用して、すでに移民させたり、近い将来の移民を検討しているという。
(拓殖大学国際学部教授)

<「頂門の一針」から転載>
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