2013年06月23日

◆国防軍・徴兵制・治安維持法

山堂コラム 475


安倍・自民党が「憲法改正はまず96条の改憲規定から取り組む」と表明した。憲法論議が俄(にわか)に盛り上がってきた。結構なこと。各社復刻版の「日本国憲法」が書店に平積みされている―――

居並ぶ与野党各会派の中で単純改憲反対というのはオモニ福島・社民党くらいのもの。日共もこのごろ護憲派ぶるようになったがこの党は違う。口先だけの擬態、敵は国体・本能寺。

無党派層を含む大部分の国民はというと、これは未だ無関心。憲法が変わるなどということはこれまでずっと想定外のことだったのだ。しかし戦後70年近く経って内外情勢も変わった。想定外だった原発も爆発した。

晋三の「戦後レジームからの脱却」は本気のようである。更なる立派な憲法が出来るというのであればまあ反対することでもなかろうかと。

かくして世の中は改憲ムードへと進む。問題はその方向と中身ということになる―――

しかしこれまで発表された自民党をはじめ、一部新聞も出した改正案。これがどれもこれも悉(ことごと)くお粗末。内容は現行憲法に遠く及ばない。旧・陸海軍の暴走、亡国寸前の大戦を齎した大日本帝国憲法よりも劣化ウラン。日本国の将来に相応(ふさわ)しい新しい基本法の体(てい)を為しているものはひとつもない。

自民党が今度の参院選へ掲げた公約のうち「改憲主張」の元としたのは保利耕輔座長が去年4月にとりまとめた「憲法改正草案(保利草案)」である。平成17年に森喜朗委員長の下で取りまとめた「第一次素案」を下敷きにしている。

骨格や文言、ちょっと目には現憲法とあまり変わらないように見える。そこが味噌。しかし草案各条文を子細に点検すると一段と国家主義・軍国主義的色彩が強くなっているのが分かる。

そもそもこの草案を主として執筆したのが元・自治官僚(磯崎陽輔・事務局長)。取りまとめたのが元・自衛官(中谷元・委員長)だから当然と言えば当然。

第9条、所謂平和条項。同条に国防軍創設を付加する――これが出発点。今の自衛隊では役不足というのだろう。せめて韓国軍なみの体裁を整え、軍備を増強して中共の人民解放軍に対峙できるようなものにしたと・・・

そうなると当然のことながら軍法会議や憲兵も必要になる。勿論徴兵制も視野に入ってくる。少子化で、それでなくても自衛官に成ろうという者が少ないのだ。徴兵制にしなければ若者を集めて軍備を増強することなど出来ぬ相談トテチテタよ・・・

残る各条項もそれに辻褄を合せるために手直しせざるを得ない。例えば言論・結社の自由。規定した第21条。「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」(現憲法)

これに[2]として余計なものを付加。「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない――」

ん?これって何だ。保障するとの文言を認められないという文言で否定する。真逆の条文、その併記だ・・・付加した後段の[2]ははっきり言って戦前の悪名高き治安維持法そのものである。

どう解釈しても「公益、公の秩序」とは「治安」と同義語。思想弾圧をやりまくった昭和前期への回帰。

同・付加文を作ったとされる起草委員の一人は宣(のたま)う。「反国家的行動を取締ったり、反政府デモを規制する意図があるわけではない」(片山さつき参議院議員・元大蔵官僚)。しかし取締まる気が無いのなら初めからこんな条文付加する必要、全くネエ。

一歩譲って、自民党やさつき女史、アカをしょっ引いたりはしないとしよう。しかし政権政党が変わって大日本極右党や、いやマル共だって分からんぞ。政権取ったらこの条文を盾に政府批判の記事や反政府デモなどは徹底的に弾圧するだろう。その取り締まりのための特高やKGBといった組織も作るだろう。

憲法は一党派の党利党略・その目的などのためであってはならない。昔ながらの自民党支持者でも96条変更の所謂「毛鉤り」になかなか引っ掛かって来ないのはそうした良識が働くから。戦争を体験した年寄りはまだまだ日本に残っているのである。(了)

<「頂門の一針」から転載>
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