2013年06月24日

◆トイレットペーパー

渡部 亮次郎


紙は文化のバロメーターといわれるが、もう1つのバロメーターはトイレット・ペーパーの質では無いか。旧ソビエトの迎賓館のトイレに坐りながら、つくづく考えたことだった。

1978年1月、外務大臣秘書官としての初外遊がモスクワでの「日ソ定期外相協議」への随行だった。1月のモスクワは零下20度まで下がるというので、防寒具を整えたが、経験者たる報道課長古川清さんの入れ智恵で、トイレット・ペーパーを多めに携帯した。

なるほど、モスクワの「レーニンが丘」に建っている何棟かの迎賓館のうち泊められた1号館は鉄筋2階建て、警備の警察官が寝ずの警備をしてくれている。

迎賓館の周囲を歩く靴の雪をこする音が夜中中していた。時差ボケでよく眠れないうちに、朝がきて園田大臣が寝室で5時に起きだしたようだが、外はまだ真っ暗。結局、9時にならないと明るくならなかった。

台所には、女性が1人いた。おっぱいがヘッドライトを括りつけたように大きいが、推理小説の読みすぎか、秘密警察の要員かと思って警戒。各部屋には冷蔵庫の備え付けが無かった。ビールも無かった。

トイレに入って驚いた。古川さんの教えてくれた通り。トイレット・ペーパーは、ごわごわと音がする厚さ。多分、ボールペンで字が書けたろう。東京から持っていったものが役立った。

トイレットペーパーは14世紀に中国で最初に生産されたとされている。その当時は皇帝用であった。

便所用につくられた初めての工業製品は1857年にアメリカ合衆国のジョセフ・カエティによって作られた。カエティの名前はすべての紙に印刷された。

トイレットペーパーやちり紙が普及する前は、裕福な人は羊毛、レース、麻を用いていた。そうでない人は、直接手を用いるか、ぼろ布、かんなくず、草、干し草、石、砂、苔、水、雪、トウモロコシの皮、貝殻などを用いて拭いていた。古代ローマでは海綿を用いていた。日本では、ちゅう木(糞べら)という細長い板を用いていた。

帝政ロシアでは、部下が皇帝が用いるトイレットペーパーに皇帝の刻印を押した。ヘンリー8世の宮廷では、その手で王族の臀部を清潔にする便所担当の廷臣がいた。

安全上の理由のため、特に信頼された廷臣のみが選ばれた。また、王と毎日二人っきりになる好機であるため、その影響力を得たいためにこの仕事を望む部下は多かったという。

その名残か、ソビエトではトイレット・ペーパーには政府は全く関心が無いようだった。帰国する時に、日本製をすべて彼女にさしだしたら、初めて笑って謝意を示した。金の入れ歯が確認できたわけ。

記者の大先輩、古澤襄(のぼる)さんによれば、最近のロシアはヨーロッパなどから輸入するらしく、「字の書けるトイレットペーパー」は姿を消したらしい。

しかし、私の訪問した13年後、ソビエトは社会主義体制に74年でピリオドを打った。目が爛れ、破れた靴を履いてクレムリンを訪れた市民を見ると、社会主義はとっくに破滅しているのが分かった。

ところで、トイレットペーパーは、日本ではどれもほぼ一定の大きさであって、便所の各個室備え付けのホルダーにとりつけてある。国によってはロールがかなり大きく、その場合はホルダーもそれに対応したものとなっている。

各国の紙資源の状況、下水道の状況により、用いられている紙は違いがある。一般的には柔らかい紙が使われるが、硬い紙が一般的に用いられている場合には同時に処理せず、別に汚物入れに捨てるように指示されている。

迎賓館にはそういう指示は無かった。

日本では、従来はB5版サイズ程度の大きさの、通称ちり紙が利用されていたが、水洗式便所の発達に伴って巻き取り式の物が普及した。その用途のために次の条件を満たす必要がある。

肌に触れて不快感がないこと。最近では2枚重ねのものが増えてきている。

強度があること。使用中に崩れてしまうと不快であり、また衛生上望ましくない。 吸水性に優れていること。 水に濡れると繊維がほぐれること。下水処理が行いやすくする必要がある。

また、下水処理を行うバクテリアなどにとって害のある物質が含まれないようにしなければならない。 安価であること。消耗品であるので、低コストである必要がある。再生紙がよく使われる。

この他にも使用者の利便性のためにミシン目などが入っていたり、香りがつけられていたり、文字が印刷されている物も作られている。

ホテルやアミューズメント施設などで顧客サービスの一環としてトイレットペーパーを三角に折ってあることがあるが、元々は「ファイアーホールド」といい、緊急呼集をかけられるケースの多い消防署で迅速に対応できるように考案されたものである。

一般にも広まったのは帝国ホテルの清掃員が清掃の完了の目印として行っ
たものらしい。

ペーパーホルダーの制約があるので、トイレットペーパーのサイズは標準化されている。

日本、アメリカでは、114 mm幅が主流である。この半端な数値は4インチ1/2に由来する。日本ではJISで114 mm幅に定められている。芯の内径は38mm(1インチ1/2)が主流である。

ヨーロッパではメートル法に基づき100 mm幅が主流である。

日本では、長さは60 m(2枚重ねでは30 m)前後が多い。ロールの状態では直径110 mm前後になる。JISでは、直径120 mm以下と定められている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


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