2013年07月12日

◆安部は石破幹事長を留任させるしかない

杉浦 正章


〜内閣改造〜


“消費増税危機”の政局に不可欠
 

秋の内閣改造人事の焦点は何といっても幹事長・石破茂の処遇の一点に絞られる。自民党圧勝の流れが変わらなければ昨年の総選挙に続いて2度にわたる国政選挙を勝利に導いた最大の功労者である。


首相・安倍晋三がナンバー2叩きで下手な人事をすれば、虎を野に放つか平地に波乱を起こす結果を招くことは言うまでもない。安倍にしてみれば石破の処遇はもっとも優遇すべき人事であり、そのポストは幹事長留任しかあるまい。「石破農相」説もあるが、石破封じ込めの嫌がらせ人事をやっている余裕はない。


ところで本当に改造が行われるかだが、自民党役員の任期が9月末に切れるのだから、行われるのは当然だ。歴代自民党政権はほとんど自民党役員人事と連動させて内閣改造をしてきた。官邸筋によれば、既に安倍も石破に対して改造する可能性を示唆しているといわれる。


その人事だが、まず誰の手で国政選挙を連勝に導いたかが判断材料となる。もちろんアベノミクス人気と険悪化する極東情勢に右向きのかじを切っている安倍の人気によるところが大きい。


半年間の政治は「政高党低」であり、幹事長が目立つことは少なかった。総選挙も都議選も参院選も安倍への高支持率に支えられたところが大きい。


逆に石破は数々の地方首長選挙で敗北している。安倍周辺に、「地方首長選ではアベノミクスが争点にならないから敗北は幹事長の責任」とする見方があるが、これは近視眼的な見方の最たるものだ。


もちろん負けるより勝った方がいいが、地方の首長選は圧倒的強みを持つ現職への挑戦のケースが多く、幹事長の責任とするのは酷だ。また国政選挙圧勝が安倍の人気に支えられているからといって、安倍はこれ以上厚遇しようがない。その次の功労者は幹事長であることは言うまでもない。


安倍はその焦点の幹事長人事で何を考えているかだが、その前に選挙後の政治を展望する必要がある。安倍は9月末に改造を断行して臨時国会を召集し、「成長戦略実行国会」と位置づけると同時に、新たな成長戦略を推進する構えだ。改造内閣の最初にして最大の課題は来年の消費増税を断行するかどうかの1点に絞られる。


法律では消費税は2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられる予定であり、その最終判断は秋に首相が4月から6月の景気動向を見て決めることになっている。


首相周辺からは、はやくも安倍の経済政策ブレーンで内閣官房参与の浜田宏一が「本当に景気が良くなったら上げることができるが、現実的に見て心配だというときには延期する考え方もある」と述べるなど慎重論が出始めている。


この発言は安倍の本音が政権維持のためにも増税を延期したいところにあるということを物語っており、安倍との“あうんの呼吸”があるように見える。


しかし消費税法はその成立の経緯から言って“増税先にありき”であり、政権の恣意的な事情で先延ばしすることは想定していない。「増税からの遁走」は、これまで消費税実施を支持してきたマスコミを敵に回し、政権の信用失墜につながる要素が大きい。当然自民党内もざわつく。


野党は増税を断行したらしたで、またしなければしないで安倍を追及する。要するに消費増税の是非は、過去の首相があえなく潰えたように、もてはやされてきた安部政治が迎える最大の危機となりうるのだ。引くも地獄進むも地獄となる。国論は割れているからいずれの選択でも支持率は低下する。


だいいち自分の政権維持のための「遁走」では、余りにも見え透いている。こうした中で増税を数年遅らせて一挙に10%にする構想や、3%引き上げを予定通りに実施して、その後は毎年1%ずつ上げる構想などがささやかれているが、いずれも姑息(こそく)さが目立つ。


消費税はよほどのことがない限り法律通り実施すべきだ。日銀総裁・黒田東彦による12日の「景気回復宣言」は明らかに選挙と連動させようとする官邸の思惑と、やはり“あうんの呼吸”が感じられるが、消費増税には大きくプラスとなる。


こうした情勢が想定される中での改造人事となるのだ。るる消費税について述べてきたのは、安部は党内に敵を作っているひまなどないということだ。通常政治家も企業もトップはナンバー2を叩くことが自らのポスト維持に欠かせない。


安部は元外交官・田中均批判で意外な狭量さを垣間見せたが、よもや幹事長人事でそれを見せることはあるまいと思う。石破を外したらどうなるかと言えば冒頭述べたように不必要な波乱要因を作ることになる。石破は権力闘争が苦手だが、幹事長ポストは「安倍後継」として他の候補に圧倒的な差を付けている。


もともと昨年の総裁選で党員票のトップに立ったことが物語るように、党員の石破支持は厚い。この基盤は幹事長ポストで一層固められた要素が大きい。波乱必至の秋の政局をにらんだ場合、幹事長留任は欠かせない。人事のイロハのイだ。


ただ一つだけ石破も納得するであろうポストがある。それは外相ポストだ。現在の外相・岸田文男の外交を半年見てきたが、対中関係も韓国との関係も悪化させこそすれ、何らの打開策も見いだせない。


外務官僚の操り人形になっており、政治家としての力量が全く見えない。ここで石破を外相にすれば大きく事態は変わる気がする。首相を目指すなら外相ポストは悪いものではない。


しかし問題がある。安部は外交を自分でやりたいのだ。日経によれば安部は、事務次官・斎木昭隆と就任以来63回も会っている。官房長官・菅義偉が66回だからいかに“官邸外交”を重視しているかが分かる。したがって、改造人事の核は「石破幹事長」を軸に展開するだろうし、安部にとっても政権安泰に欠かせない人事だ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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