2013年07月28日

◆尖閣諸島「問題」の行方

馬場 伯明


国が尖閣諸島を購入し一件落着したかに見える。だが、あの大騒ぎは何だったのか。石原慎太郎(前)東京都知事による尖閣諸島(3島)の購入と活用のための国民有志の寄付金はどうなったのか。

「(国が買ってしまったので)・・もう購入はできないので、(目的を)活用にシフトしたわけです。寄付金は国に譲渡することになるでしょう。寄付金の返還は当初から想定していません。(都の「尖閣諸島寄付担当」談・2013/2/6「日刊ゲンダイ」より)」

単純で素朴な愛国者として私は些少・最低限の寄付をした。石原(前)知事のメッセージに「いざ鎌倉!」の一種高揚した気分で応じた。寄付総額は1,485,201,967円、103,602件。無論寄付者に返還する必要はない。

猪瀬直樹東京都知事による残金の「国への譲渡(再寄付)」で本件が終結となるのでは、肩透かしにあったような気がして、私は釈然としない。

尖閣諸島が日本の領土であることは実効支配上からも国際法上からも明白である。中国の挙動は、泥棒(自分)が、侵入した家の主人に向かって「泥棒!」と叫んでいるような倒錯した理屈である。

ところが、中国へのそれなりの応援者もいる。野中広務氏と鳩山由紀夫氏が利敵行為ともいうべき仰天発言で世間を驚かせた。

そこで、本誌主宰者は、かつて園田直外務大臣の秘書官として同行した北京等での「事実」に基づき、間髪をいれず、完璧に反論した。この反論は確かによかった。だが、それでも、私は、まだ、釈然としない。

中国は1970年以降、尖閣諸島「問題」では自信満々である。「俺たちには最強のカードがある!」と嘯く。「アメリカ」というスペードのエース。

でも、なぜ、アメリカなのか。尖閣諸島「問題」の「そもそも論」に立ち返り、尖閣諸島購入の経緯などを反芻してみたい。

尖閣諸島は、魚釣島(うおつりしま)、久場島(くばしま)、大正島(たいしょうとう)、北小島(きたこじま)、南小島(みなみこじま)の5つの島と3つの岩礁(沖の北岩・沖の南岩・飛瀬)からなる。総面積5.57k!)。

石原(前)知事は、5島の内、魚釣島、北小島、南小島の3島(栗原国起氏所有)を購入の対象とした。しかし、久場島(古賀花子氏所有)と大正島(国有)の2島は外した。2島は米軍に提供された射爆撃場である。

「2島は購入しないのですか」と指摘され、石原(前)知事は「久場島も購入する」と急きょ言明した(2012/6/4)。しかし、その後、何と、あっさりその購入方針を撤回してしまった(2012/9/7)。

どういうことだ。大正島は国有だが、個人所有の久場島を中国に購入されたらどうするのか。尖閣諸島では久場島がなければ画竜点睛を欠く。「中国が所有する米軍射爆撃場!」ならブラックユーモアだ(笑)。

石原(前)知事はなぜ購入方針を撤回したのか。筋が通らない。

発端は石原(前)知事のヘリテージ財団での講演である。中国を刺激した。(1)核兵器の開発のシミュレーション、(2)ピンポイント非核超高速ミサイルの開発、(3)尖閣諸島(ただし3島)購入の3点セットだ。

アメリカの有力な対中国強硬派であるヘリテージ財団との合作ないし事前の容認があったと(私は)邪推!する。石原(前)知事は(民主党政権と)中国を刺激することが主目的であり、久場島の購入や久米島との2島返還は、端から頭になかったと思われる。

じつは、中国艦船が久場島付近を通過し上陸や発砲したら、アメリカは、安保条約とは無関係に、自国(施政権)侵犯排除の戦闘に入らざるを得ないから困るのだ。だから「日本と中国は仲良く!」と強く要請している。

一時的な政治パフォーマンスではなく、戦略的に、かつ真面目に考えれば、尖閣諸島5島3岩礁を国有化すべきであることは明らかであろう。

「親分(アメリカ)、預けた娘(久場島)が長らくお世話になりました。そろそろ舎弟の私(日本)に返してください」。「そうだな、お前(日本)の娘(領土)だからな。そうしよう」・・・と、アメリカには「日本の領土である」という決定的な発言をしてもらいたい。

だが、アメリカは尖閣諸島の領有・帰属で「あいまい戦略」をとっている。アメリカは尖閣諸島「問題」で中立の立場をとる。だから、日本と中国(台湾を含む)の間には「領土問題が存在する」という立場の国なのだ。

中国はアメリカの「領土問題が存在する」という絶大な援軍があるので強気である。これが尖閣諸島「問題」のねじれと混迷の根本的な原因である。では、日本は何をするべきか。

第1.アメリカに対し「尖閣諸島の領有は日本である」と明確に認めるように何度でも迫る。無二の同盟国のアメリカだ。遠慮せず主張する。「蛙の面に・・」の確信犯の中国ではなく、敵は本能寺(アメリカ)である。

第2.久場島を国が追加購入する。米軍の射爆撃場の久場島と大正島の2島は1979年以降使用されていないのだ。東京都に保管されている寄付金を使わせてもらえばよい。寄付者に異存があるはずがない。

歴代の政府、外務省、石原(前)知事らは、これまで上記の2つをまともに検討し発信し実行しては来なかったし、今なお無為が続いている。

また不思議なことに、日本のマスコミ、さらに、右派言論人の多くも、久場島の国による購入と大正島(既国有)を合わせた2島の日本への返還をアメリカに求めていない。

なぜか。アメリカに拒否されたからだ。その訳は戦後68年去勢されたようなアメリカへの盲従体質にあると思われる。アメリカの言いなりばかりではだめなのだ。日本はアメリカに対しても、正面・裏面の両方からものが言える、まさに「普通の国」になるべきである。

「普通の国にしたいだけなんだ」と唱える本誌投稿者の一人である平井修一氏には、尖閣諸島を巡る日米中(台湾を含む)のねじれ現象をときほぐし、正常化する方策をぜひご提案いただきたい。

尖閣諸島が日本の領土であると(本音では)認識しており、日本が最も信頼する同盟国であるにもかかわらず、アメリカは、尖閣諸島について、中国が大喜びし、日本が困る「あいまい戦略」を、なぜ、取り続けてきたのだろうか。

それは、日中(台湾を含む)間に揉め事(魚の小骨)を残しておく、それにより、アメリカの存在価値を両国に高く売ることができるという「政治的な思惑(手段)」であったと推測される。

しかし、姑息な手段はいつか行き詰る。日中間の戦闘が始まればアメリカも出動せざるを得なくなる。小骨は大骨になって顕われる。だから、アメリカは「日中は話し合いで・・・」と必死で要請しているのである。

日本は、尖閣諸島の日本領有をアメリカに明確に認めさせ、久場島ら2島は返還してもらい、久場島は国有化する。これが中国の急所を衝く最上の策である。

石原(前)知事の尖閣諸島「問題」の発言は急減している。日本はいたずらにアメリカに盲従しその周りを徘徊するのではなく、民族の誇りと矜持を有する独立国家としてしっかり立つ。

「国際社会において名誉ある地位を占める」というのは、そういうことではないのか。
(2013/7/26千葉市在住)

<「頂門の一針」から転載>
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