2013年09月24日

◆先延ばし論で「安倍消費増税」化した

杉浦 正章



責任は一手に安倍にふりかかる


中国のことわざに「よく泳ぐ者は溺れ、よく乗る者は落馬する」があるが、首相・安倍晋三による消費税のハンドリングはまさにそれだ。結果的に憎まれ役の増税役を一手に引きうけてしまった。


政治的に見れば安倍は「三党合意責任」を「自らの責任」に転嫁してしまうという、わざわざしなくてもいい「決断」をせざるを得なくしてしまったのだ。アベノミクスの成功に舞い上がった政治を知らないブレーンの「先延ばし論」に傾斜してしまったのが失敗だった。この結果いわば政治全体の責任であった「3党合意消費増税」は「安倍消費増税」となり、その結果責任もすべて安倍に降りかかる姿に変ぼうしたのだ。



安倍は来月1日に消費税率を来年4月から現在の5%から8%に引き上げることを「決断」する。別に「決断」する必要のなかったことを自ら「決断」する事態に追い込んでしまったのだ。そもそも消費税は昨年8月の3党合意で決着を見ているのであって、首相の最終判断は付けたりであった。


消費増税の附則第18条は「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」とあり、あくまで首相の総合判断のうえでの最終決断を求めるものであったのだ。その総合判断はリーマンショックなど経済動向を左右する重大事態が発生した場合を想定したのだ。万が一の事態発生を懸念した上での「景気条項」であったのだ。


なぜ安倍が極端なまでにこれにこだわったかといえば、アベノミクスの大当たりが紛れもなく背景にあった。無理もない。民主党政権で断末魔のあえぎを見せていた、日本経済がアベノミクスで上昇機運が生じてきたからだ。これをはやす声は国内に満ちあふれ、首相官邸はごますり詣でがひっきりなしとなった。


安倍は天下御免の水戸黄門の印籠を手にしたと思ったのだ。それを掲げる助さん、角さんがブレーンの官房参与・浜田宏一と本田悦朗であった。両者は代わる代わるに印籠を掲げて「これが目に入らぬか」とやったものだ。


ところが政治素人の学者には政治の限界が目に見えなかった。過去政治が消費増税に使うエネルギーは、並大抵のものではなかった。大平正芳が一般消費税導入を口にしただけで選挙に大敗、竹下内閣が吹き飛び、橋本内閣も退陣に追い込まれ、最後に野田内閣も総選挙を経て政権交代になった。


その野田にしてみれば、自分のクビと差し替えの消費増税達成であり、「バッジを外す覚悟があったからこそ、達成できた」と述べているとおりだ。その消費税をいくら「アベノミクス様」であれ、印籠かざしてひざまずかせる事は不可能であったのだ。


安倍は実施すべき消費税を受け継いだのであり、最初から「決断」は宿命的に避けられないものであったのだ。それをブレーンはともかく安倍自身が先延ばしにできるとの判断に傾いたことは、政治家として甘いとしか言いようがないものであった。


普通政治家は既に決着済みの重大事項にあえて固執して、事を荒立てるようなことはしない。そのエネルギーを他に回すのが常だ。野田が「3党合意で法律を作ったのに、そもそも論から始めてはいけない」と述べている通りだ。


ここで重要なポイントは、何も消費増税で経済対策をするのなら、わざわざ消費増税の可否を盾にとって実現させる必要も無かったということだ。首相なのだから実施の判断を10月にしてから、必要な経済対策を財務省に指示すればよいのである。それをしないであわよくばの先延ばしを狙うところに冒頭の「よく乗る者の落馬」があったのだ。


こうして安倍は起こす必要のない事態をわざわざ巻き起こした。安倍自身は消費増税のリスクについて「10月上旬に判断する私の責任だ。結果にも責任を持たないといけない」と述べたが、その責任はいったん先延ばしにぶれたが故に、一身にかかってくることになってしまったのだ。


3党合意のせいにすればよいものを、自分のせいにしてしまったからである。順風満帆の安倍政権が見せた“弱点”はアリの一穴にならないとも限らない。


生活の党代表・小沢一郎のブレーンで元参院議員の平野貞夫はテレビで「4月に消費税を上げた2〜3か月後に政治が動く」と予言をし始めた。これを聞いた元代表・小沢一郎は「いや10月に決定するのだから、その時点で影響する」とより早い「政局」への連動を予言する。


こうして消費増税問題は、臨時国会を皮切りにぶり返しが避けられない見通しだ。とりわけ福祉目的税であった消費税を法人税引き下げで食いつぶすような方針を安倍が掲げていることは最大の弱点となろう。野党の批判は国民に通じやすいのだ。


法律は成立しているから野党の追及にも自ずと限度があるが、消費税法は2段構えであり、15年10月にはさらに2%引き上げて最終的に10%とする。これを安倍が成し遂げる余裕が残っているかは予断を許さない。


安倍自身「経済は生き物だ。(8%に)上げた場合、その後の推移を見ながら判断しないといけない。世界経済のさまざまなリスクが顕在化するかどうかも重要なポイントだ。そういうものもよく見て判断していかないといけない」と、今度は今から及び腰だ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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