2013年10月03日

◆小泉“原発ゼロ院政”は無理筋だ

杉浦 正章



「寂しい老人」は見守ってあげよう



中国のことわざに「騏(きりん=駿馬)も老いては駑(ど)馬に劣る」があるが、仮にも元首相に対してそんな侮辱的なことを言ってはいけない。日本のことわざでは「年寄りの達者は春の雪ですぐに消える」というが、そんな失礼なことも言ってはいけない。


むしろ「年寄りの強情と昼過ぎの雨はたやすくやまぬ」と言ってあげなければならない。「自民党をぶっ壊す」の小泉純一郎が狂ったように今度は「原発ゼロ」を唱え始めたが、71歳の年寄りに一から物の道理を説くのも、気が引ける。


言っていることは元首相・鳩山由紀夫の普天間基地発言「最低でも県外」とそっくりの“空想的理想主義”だが、鳩山は「ルーピーだからしょうがない」で済む。


しかし小泉は、名うてのアジテーターだから馬鹿なマスコミや、みんなの党あたりの政治家が利用しようと同調する。それではどうしたらいいかというと、「年寄りと釘頭は引っ込むがよし」などと言わずに、きっと寂しくなったのだから、静かに見守ってあげるしかない。そのうちに恥ずかしくなって自ずと引っ込む。


小泉は2011年5月頃から「原発の依存度引き下げ」を主張。今年の夏頃から「原発ゼロ」を唱え始めたが、マスコミにはほとんど無視されてきた。この無視に耐えられなくなって思いついたのがフィンランドの世界唯一の放射性廃棄物処分場「オンカロ」の視察だ。


日本では明治以来欧米の現状視察を背景に物を言うと、重みを持って迎えられることが分かっているからだ。案の定毎日のコラムが飛び付いて報道。これに勢いがついて膝小僧を抱えている政治家をアジったり、講演したりの毎日となった。


アジられたみんなの党代表の渡辺喜美は、催眠術にかかったのか大感激で「いますぐ決断しなければ間に合わないという小泉元首相の危機認識は我々も非常によく共有している。みんなの党は原発ゼロをずっと目指してきた。危機認識を共有する偉大な政治家が現れ、大変大きな勇気をいただいた」ともろ手を挙げて礼賛している。


小泉の第1の狙いは「寂しくなった」ので反原発発言で、マスコミや政界反対派にチヤホヤされて、晩年を多忙に暮らそうという魂胆だろう。反原発ならば「ニーズ」があるとにらんだのだ。しかし小泉は最初から政治判断を間違っている。


オンカロ視察に同行した財界人から原発推進の旗頭になるように求められて「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」と述べた。


これは甘すぎる判断だ。とてもバッジのない小泉如きが「院政」に乗り出せる状況にない。「原発戦争」でもあった昨年末の総選挙をもう忘れたかと言いたい。


小泉と同じように「原発ゼロ」で大衆を引き寄せられると判断した小沢一郎が、滋賀県知事・嘉田由紀子をだまして、「日本未来の党」を結成。嘉田は気色の悪い甘ったるい声で聴衆の気を引こうとしたが、選挙民はそれほど馬鹿ではない。


散々の結果であった上に、「原発再稼働」を唱えた自民党が294議席を取って圧勝、同党内で原発ゼロを公言するのはエキセントリックを絵に描いたような河野洋平1人にとどまったではないか。


再び小泉が「原発ゼロだ。この指とまれ」で政界再編を目指しても、与野党を横断した勢力の糾合などは夢のまた夢に過ぎない。出来るものならやってご覧と言いたい。資金など集まるわけがない。小沢の二の舞がいいところだ。


小泉は世界の潮流が見えなくなったのだ。今のところ北欧の小国が世界でただ一国だけ実験的に地下埋蔵を開始しているが、この流れは確実に世界各国に拡大して、より安全な埋蔵方法も合わせて研究され、実現していく流れだ。


見学したのなら同行した財界人が一致したように「この方向しかない。原発は大丈夫だ」と確信しなければならない。核廃棄物は地球に戻せばよいのだ。しかし「寂しい」が原動力になった“邪心”が逆に「原発ゼロ」のアジテーションに向かわせているのだ。


小泉は「原発を経済成長に必要だからといってつくるよりも同じ金を自然エネルギーに使って循環型社会をつくる方が建設的じゃないか」と述べているが、もう少し科学的知識と経済学の初歩を身につけた方がいい。それが不可能だから世界の潮流は「入原発」なのだ。


フィンランドなど視察するひまがあったら、中国やインドの原発建造ブームを視察した方がいい。より安全で災害やテロにも耐える日本製原発が今ほど必要とされているときはないことが分かる。小泉の「政府・自民党が原発ゼロを打ち出せば一気に雰囲気は盛り上がる。


そうすると、官民共同で世界に例のない、原発に依存しない、自然を資源にした循環型社会をつくる夢に向かって、この国は結束できる」発言に至っては、ルーピーの「尖閣中国領」発言レベルであり、舞い上がってしまったとしか言いようがない。夢を食ってこの国の経済は生きて行けないのだ。


政府・自民党は官房長官・菅義偉が「言論は自由」と皮肉ったように、発言をまともに取り上げる必要は無い。幹事長・石破茂も「再稼働は不動」と述べている。「原発ゼロ」で有終の美を飾ろうとするのは勝手だが、後輩が苦心惨憺して、原発回帰で日本の経済力を回復しようとしている事まで邪魔すべきではない。


元首相たるものは小じゅうと根性は捨てよと言いたい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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