2013年10月08日

◆安倍政権で2度の増税は無理だ

杉浦 正章



費税10%は政局に直結


今回は消費税法通り8%の増税となったが、これが安倍政権で10%に出来るかどうかとなると、至難の技と言うしかない。煎じ詰めれば再来年の再増税で、その翌年の衆参同日選挙での政権維持が可能かどうかに絞られる。


おそらく3%アップまでは、おうように認めた国民も、その痛打が忘れられないうちにさらなる2%の連続パンチを浴びせられては確実に安倍政権を見限るだろう。


首相・安倍晋三が前首相・野田佳彦のように政権交代まで決意してやるかというと、そこまでの信念はないとみる。まず「先送り」しか選択肢はあるまい。首相周辺から早くも「1政権が2度も増税するのはきつすぎる」という“牽制球”が投げられ始めた。


こんなガバナビリティ(被統治能力)のある国民は世界広といえども日本国民だけだろう。驚いたのは来年4月に消費税引き上げを「評価する」が朝日の世論調査で51%、読売で53%と過半数に達した。まだ実感がない事もあろうが、1000兆円達する借金財政改善と社会保障制度の維持に向けての切なる願いが率直に反映されたものであろう。


しかし同じ調査で再来年10月の10%への引き上げは、拒絶反応である。反対が朝日で63%、毎日が65%、産経が61%といった具合だ。要するに今回は大目に見るが次回は許さないという反応が如実に表れている。


さらに来年4月に実施された後に調査すれば、8%を実感した国民の多くは反発、内閣支持率を50%割りにするであろうことは確実だろう。


そこで安倍がどう判断するかだが、「経済は生き物だから、10%に上げるかどうかは、その後の推移を見ながら判断しなければいけない。世界経済のはらんでいる様々なリスクが顕在化するかどうか、というのも重要なポイントだ」と述べている。


さすがに状況の見極めはしっかりしている。とても現段階で判断出来るような状況ではないということだ。その意味でも公明党代表・山口那津男の10%を前提にした軽減税率導入早期決定論などは、政局を全く読めない判断間違えだ。


長期の政治日程をみれば14年4月に8%への引き上げ、15年4月統一地方選挙、秋に自民党総裁選挙、10月に10%への引き上げ、16年夏衆参同日選挙という段取りが描かれている。もちろん10%もダブル選も現段階での予想である。


それでは10%が可能かどうかを見ると、ここで再び消費税法付則18条の「景気条項」が問題となる。


何と書かれているかと言えばその1項で2011年度から2020年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した総合的な施策の実施。2項で消費税率の引上げは、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずるとなっている。


いささか玉虫色だが素直に読めば、消費増税を判断する時点で、景気が目標の成長水準に達していない場合は、増税凍結も含めた見直しを行うことができるというものであろう。


ところがその判断の前提になる14年度の景気動向は生やさしくない。


日本総研の見通しでは4〜6月期は大幅マイナス成長に。その後は、米国景気の堅調な推移や、金融緩和などを通じた円安が引き続き輸出環境の改善に寄与し、回復軌道に復帰。ただし、年度前半の落ち込みをカバーできず、2014年度の実質成長率はほぼゼロ成長となると見ているのだ。


三菱UFJもGDP成長率は前年比+0.2%と小幅プラスを予測している。これは安倍の増税したくないという思いにプラスに作用するものとみられる。今回もアベノミクス腰折れへの影響を考えて最後まで抵抗した安倍である。次回も抵抗する絶好の材料となり得るのだ。
 

そこで政治展望を鳥瞰図で見れば、引き上げが予定される再来年10月は、想定されるダブル選まで一年を切る段階である。選挙戦はとっくに開始されており、10%への増税が自公両党を直撃する。


ちょうど大平正芳が一般消費税を掲げて選挙に突入したのと同じで、有権者が離反して自民にとって選挙にならない事態が想定される。ダブル選挙は自民党に有利に作用してきたが、増税後の選挙は衆参同時敗退が必至のものとなるだろう。敗北傾向が増幅するケースとなり得る。


自民党は衆院で294議席の確保など夢のまた夢であり、240議席台まで落ちるだろう。もっと落ちるかも知れない。参院の過半数割れはさらに拡大して、自公でも過半数を維持できず、再びねじれ現象が生ずる可能性が高い。つまり安倍政権にとって“悪夢”の現出である。


この状態をひたすら望んでいるのが野党であり、小沢一郎が象徴的発言をしている。「消費増税を国民が肌身に感じたとき政治は動く」と述べるとともに、周辺に「10%にすれば確実にダブル選挙の争点は消費税だ」と漏らし、「最後の勝負」の時期到来をひたすら願っている。


こうした情勢を知りながら安倍がやすやすと10%に踏み切るとは思えない。8%でアベノミクスとのバランスを考えたほど消費税に消極的な安倍が、政権を賭けた10%に簡単に踏み切れるわけがないのだ。


首相官邸では早くも「何とか先延ばしするしかない」との声が漏れ聞こえるようになった。たしかにせっかく達成した安定政権を手放すか、先延ばしかとなれば為政者は99%先延ばしを選択するだろう。
 

消費税は法律で定められている限り実施しなければならないが、政権が無理と判断すれば、法改正で実施時期をずらすことも考えられる。ダブル選以降にずらすのだ。ダブル選自体を断念し、消費税を実行して16年12月の任期満了選挙という手もないわけではないが、三木武夫と同じで任期満了は追い込まれて敗れる。


こうした情勢から再来年の通常国会段階から、消費増税法改正問題が浮上する可能性がある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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