2013年10月09日

◆安倍のアキレス腱は「復興法人税」だ

杉浦 正章



民主党内も「反対」でまとまる
 

順風満帆に見える安倍政権だが、ようやくアキレス腱が見えてきた。安倍の打ち出した復興法人税1年前倒し廃止の方針が、バラバラだった民主党を結束させる流れとなってきたのだ。加えて、自民党内や公明党にも反対論や慎重論が根強い。


反対論は分かりやすい。「こともあろうに震災復興の財源を切り取るとはどういうことか。それも所得増税はそのままに、優良企業だけを優遇するとは」という1点に絞られる。上げ潮派の陥りがちな弱者しわ寄せ政策の象徴と受け取られてしまうのだ。


当然世論も反発している。ねじれ解消後初の臨時国会も首相・安倍晋三にとって一筋縄ではいかない雰囲気となってきている。
 

他に財源を探せば良いのに、なんで大震災で一番苦しんでいる層を狙い撃ちしたかのように受け取られる政策を打ち出したかといえば、根底には安倍の慢心があるとしか思えない。アベノミクスの大当たりで「上げ潮路線の正当性が証明された。財政再建派は下におろう」という意識である。


これは消費税の3党合意の経緯に当時は参画していなかった安倍の弱点でもある。政治は「経緯」の上に積み重ねられてゆくのであり、これを無視しては成り立たない。


自公民3党は復興財源でも協力関係を作り出し、被災地のために、個人、法人の別なく等しく国民が負担を分かち合おうという「絆」と「連帯」の精神に基づいて、法人、所得両税の増税を決めたのだ。それを所得税だけをそのままに大企業や優良企業だけが払っている法人税に切り込んだのは慢心がもたらす失策であろう。


安倍は安倍で復興法人税前倒し廃止を、上げ潮路線の本丸である法人税実効税率引き下げへの突破口とすることを狙ったものであり、容易に引けない事情がある。


この結果、民主党内に、“結束”の材料を与えてしまった。左派が支配する執行部に対して右派の6人衆がどう出るかが政界再編と絡んで焦点だが、前首相・野田佳彦、前原誠司、岡田克也ら6人衆は当面党の結束を維持する方向だ。


訪米中の野田を除いて5人が3日集まり、今後の対応を話し合ったが、当面政界再編などの動きは慎重に対応して、臨時国会に向けて執行部と結束して対応することになった。臨時国会でも復興法人税前倒しなどに焦点を当てていく方針となった。


6人衆の中心の野田はいまや、前倒し撤廃批判の急先鋒である。訪米中も「復興をまだやっている最中。法人だけ切り離す意味は理解できない」と真正面から安倍を批判した。ブログでも「復興特別法人税の廃止なんて、官邸の一部の考えとしか思えません。ごく少数の法人べったりの声で、政府・与党の重要な意思決定が決まるとは…。おかしな空気が漂っています」と強調している。


こうした野田の批判は党内にも影響を生じさせており、代表・海江田万里は「復興法人税の廃止は復興を全国民で成し遂げると誓った絆の精神に反する」と批判。政調会長・桜井充も「大企業だけ優遇されるのはおかしい。中小企業の大半は法人税を支払っておらず、効力は全くない」と断定した。


民主党は野田を予算委の代表質問に立てるべきであろう。海江田よりよほど効果的だ。


一方で自民党税制調査会にも批判論が依然として存在する。先月26日の税制調査会では「被災地で説明できるのか」とか「法人減税をやっても経営者は簡単に給料を上げられない」との批判が相次いだ。福島県選出の議員らは安倍に、「復興法人税廃止に反対する要望書」を提出したほどだ。


公明党の税制調査会も反対論が一色であった。さらにマスコミの世論調査では反対が圧倒している。朝日の調査では反対が56%、で賛成27%の倍。読売の調査では自民党支持層の60%、民主党支持層の68%、無党派層の70%が反対だ。

さすがの安倍も突出は無理と判断したのか、自民党内をとりあえず復興法人減税撤廃を「検討する」ことでまとめた。経済成長を賃金上昇につなげることを前提に、「復興特別法人税の1年前倒しでの廃止について検討する」とするにとどめたのだ。


12月中に結論を得る方針だが、全く取り下げる意思はない。従って、臨時国会では前倒し撤廃をめぐって激しい論戦が展開されることになろう。


民主党は「前倒し撤廃の撤回」を求める方針であり、この線で与野党の同調者を扇動することになろう。安倍が提出するアベノミクスを支える「産業競争力強化法案」の審議にも影響が出ることは避けられない。


安倍にしてみれば、数を背景に強気で押し切りたいところであろうが、自公両党に反対論を抱える構図では容易ではあるまい。厳しい綱渡りを強いられることになりそうだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

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