2013年10月16日

◆台湾の民運

Andy Chang


今年は台湾で大きな反政府運動が相次いだが、いまだに中華民国を倒す運動に至っていない。第4原子発電所の建設中止と核発電反対運動、大埔事件と呼ぶ土地強制買収と家屋取り壊し事件、洪仲丘兵士虐殺と軍の虐待証拠隠蔽に対する25万人の抗議など、続いて9月の馬英九と王金平の政争が起きた。

これらの事件で目立った変化は台湾の抗議運動が民進党や台聯党、党外組織などと関係のない大衆運動となったことである。白シャツ軍と呼ぶ若者たちが民進党の親中路線や派閥闘争に飽きて独自の反政府運動を始めた。

民衆運動(民運)は党外独立派とも違う。大衆は民運に期待をかけているが、民運は今のところリーダー不在で主張が不明瞭である。

●複雑な台湾の政治環境と政治意識

民運の目標が決まらないのは台湾の政治事情が複雑で明確な意識がないためだ。中華民国が台湾を統治している現状は台湾人の望むところではないし、8割以上の台湾人は独立意識を持っている。民進党が独立を放棄して中華民国を認めたから混乱が起きた。

(1)台湾は中華民国独裁で68年も苦しんでいるのに、李登輝が台湾は民主国家だと言ったから多くの台湾人が台湾(中華民国)は民主国家であると言い出した。李登輝は中華民国の総統だったから中華民国を民主化したと自慢したのだ。だが中華民国は今でも独裁国である。

(2)中華民国は台湾人の国ではなく人民は独立願望が強い。民進党は自党のため、中華民国政権を勝ち取るために独立を放棄して中華民国を認め、選挙で政権を取ると主張する。政権を取っても中華民国は滅亡した国である。

(3)台湾人は中国人ではない。中国人が台湾人は漢民族だと言い出し、漢民族は一つの国しかもてないように宣伝した。台湾人意識は強くなったが、今でも中国人と台湾人の区別意識が明確でない。

(4)馬英九が勝手に中国とサービス貿易協定にサインした。この協定が実施されれば中国人の移民が増えて台湾人意識が薄れる恐れがある。これに加えて中国の武力統一の脅威があり、人民は台湾独立も中華民国打倒を主張する勇気がなく一致した目標がない。

●目標が決まらない台湾の政治

政争が起きて馬英九の敗北が決定的となったが、台湾人はこの時期になっても政権打倒の目標が定まらない。人民の主張と政党の主張が一致せず、政党の目標も一致しないから達成の見込みがない。

第一の目標は、政争の張本人である馬英九を罷免することだが、総統を罷免するには公民投票が必要で、中華民国の公民投票制度は達成不能の制限がある。民運と体制外派は馬英九罷免に熱心だが、罷免は不可能だから掛け声だけである。

第二に国会で内閣総辞職(倒閣)の提案がある。民進党は倒閣案を推進しているが、無記名投票なら国民党員が賛成するかもしれないが、記名投票なら国民党員の寝返りは期待できず、返って国民党議員の結束を招く。

しかも王金平は国民党だから倒閣に賛成するはずがない。被害者本人が国民党のために倒閣に反対という矛盾が生じる。倒閣を主張して国民党員が結束したら逆効果だ。

第三に特務組織の解体と検察総長の罷免要求だが、これも国会で歩調が一致していない。特務組織を解体できるなら台湾人民は大歓迎するだろう。しかし国会で少数派の民進党が提案しても国民党員が賛成票を投じるかどうか。

最後に、馬英九が最も恐れるのは民運が群衆に呼びかけて大規模な街頭デモで政府を倒すことだが、民進党は街頭デモに介入していないし、体制外派も一致が見られない。民運は大きな反政府運動だが主張がハッキリしていない。

打倒中華民国の主張が明確でなく、単なる反政府である。政府が改善を約束したら民運は満足するのか、政府を倒すのが目標でないのか。

●民進党の倒閣は逆効果

民進党の倒閣案は火曜日に投票すると決まったが、投票しても過半数は得られないことは明らかである。これまで国民党内部では台湾人党員や古参国民党員などが馬英九に反対だったから馬英九罷免案の方が有利だったが、罷免案は通らない。

倒閣が立法院で通れば馬英九は国会を解散して立法委員総選挙に持ち込む。総選挙で民進党が過半数議員を獲得することは出来ない。逆に総選挙になって国民党が過半数を取れば立法院長選挙で王金平を降ろすことが出来る。薮をつついて蛇を出すとはこのことだ。

議会ではいつも記名投票だから国民党員は国民党を離脱する気持ちがなく国民党の結束を招く。政争が馬英九に不利になったのに民進党が倒閣を主張したため馬英九有利となった。

罷免も倒閣も、政権を持たない少数派の民進党は中華民国の制度の下で政治闘争をしても勝ち味はない。民進党が民運や体制外派と合作しなければ独立目的は達成できない。いまのところ民進党、体制外派、民運の合作する動きは見られない。

●民運と独立運動

民運、街頭運動は時間的に継続する可能性が薄い。民間のエネルギーは一時的に盛り上がってもチュニジアやエジプト、リビアなどのような大規模な反独裁、反政府運動ほどではない。台湾人民は長年の白色恐怖で恐怖心が強く、特務の監視下にあって反対を表現することさえ出来なかった。特務制度を廃止できれば民主運動は大きく前進する。

二ヶ月前の洪仲丘兵士殺害で起きた白シャツ軍街頭運動は25万人の自動的参加があった。今回の政争も街頭デモを呼びかけているが、ロートル政治家の参与がなく、民運リーダーの主張が明確でない。街頭デモが脅威となるには明確な主張が必要である。

民運の指導者は従来の政治運動に見切りをつけて街頭抗議を続ける傾向が強い。ロートル政治家と合作せず街頭抗議を続けると言うが、主張と行動方針が不明瞭である。一般大衆は民進党の親中路線を支持しないが選挙のほかに反中華民国の方法がなかった。

民運は民衆の要求に応える動きだが、単なる反政府抗議に終われば打倒中華民国は達成できない。民運が大きく成長して人民の独立願望に応える運動になることを願う。 

<「頂門の一針」から転載>
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