2013年10月31日

◆テロは習の「ラストエンペラー」説

杉浦 正章



安倍は尖閣への“民衆扇動”に警戒を怠るな


10.28天安門テロが象徴するものは、紛れもない中国社会のブルネラビリティ(vulnerability=脆弱性)であろう。国家主席・習近平の力によるウイグル自治区押さえ込みが裏目に出て、共産党1党独裁の象徴である毛沢東の肖像画の前での自爆テロとなって現れたのだ。


しかしこの事件が中国の内政・外交に与える影響は甚大である。内政では習体制を揺るがすものであり、習が10年の任期をまっとうできない「ラストエンペラー」説を強めこそすれ弱めることはない。


問題はその習が国内の不満を外に向ける絶好の機会ととらえて、“尖閣カード”を切って軍事行動を起こすという禁じ手を使い得るということだ。内外の論調がこれを指摘するが、筆者はカードを切りきれないと見る。なぜなら日露戦争がロシア革命を誘発したように、尖閣戦争は中国の民主化革命に直結するからだ。


11月15日に総書記就任1周年を迎える習にとって、天安門テロはまさに痛打である。習は就任以来ウイグル族を力で押さえ込む政策を強行してきており、同地区ではかつての北アイルランド紛争以上の血で血を洗う紛争が続いている。


北アイルランド紛争はすぐにメディアが伝えたが、シルクロードの辺境の地で何が起きているかは当局が知らしめないし、知るよしもない。しかしウイグル族が毎月10人以上射殺されているという説が、まぎれもなく紛争状態に陥っていることを意味する。


共産党政権による漢民族との同化政策は、結果として漢民族によるウイグル族“搾取”の状態を形作っている。漢民族の資本が注入されれば漢民族だけが儲かり富を蓄積する構図だ。貧富の格差だけが目立つようになり、暴動の頻発を招いているのだ。


テロの詳細を見れば、夫婦と母親の3人が、6月26日の暴動で射殺された親族の恨みとばかりに、車を暴走させて漢族をはね飛ばし、自爆したという凄まじさだ。中東のように若者を使ったテロではなく、家族ぐるみのテロであることが事の深刻さと悲惨さを際立たせている。


中国の治安対策予算は国防予算を上回っており、いかに共産党政権が国内暴動で苦境に置かれているかを物語る。ブルネラビリティは、共産党の1党独裁がまさに過去の帝政時代並みに貧富の格差をもたらしている事から発生している。


わずか1%の家庭が4割あまりの資産を保有しており、東京の銀座通りで大声を出して闊歩し、ルイ・ヴィトンを買いあさる層を形成している。


この貧富の格差に、地域間の「東西格差」、都市部と農村部の「城郷格差」、国営企業と民間企業の「業種間格差」の4大格差が、高度成長と共にますます広がりを見せ、とどまる気配すらない。共産党幹部の汚職は常態化し、金持ちは海外へ資産を移し逃亡する準備にいとまがない。社会は疲弊の一途をたどっている。


米国のニューズウイーク誌がGDPが7%台で推移した場合、「2020年までに限って言えば、『衰退する大国』になるのはアメリカではなく、中国の方だ」と看破しているとおり、脆弱性は習近平の内外への高圧的な姿勢とは裏腹のものとなっている。


しかし中国には、無形の“資産”がある。それは長年に渡る「反日教育」という“資産”である。ネチズンの反応が、尖閣問題となるとすぐに炎上してとどまることを知らない状況に陥る。


共産党政権は昨年9月の反日暴動をネットを使って発生させ、その効果を試している。これをさらに大がかりに使い、対日戦争の世論を盛りあげるのはわけもないことである。


従って、首相・安倍晋三はこのカードを決して使わせてはならない。靖国参拝などと言うくだらない宗教儀式で国を誤ってはならない。石原慎太郎の主張するように灯台を建てたり、船だまりを造ったりしてはならない。


むしろ内部矛盾が露呈して“熟柿”が落ちるのを待つ時だ。この点安倍の中国包囲外交は大きな効果を上げつつあるのは、欣快(きんかい)の至りである。


安倍のすべきことは児戯に等しかった国の安保体制を、普通の国並みに強化することに尽きる。真の意味での日米安保体制を集団的自衛権の行使容認で確立して、習近平が尖閣カードを切ろうにも切れなくするのだ。


日米両国の軍事力から見れば、中国は「尖閣戦争」で勝利を収めることは出来ない。その抑止力で抑え込み続けるのだ。抑えが利かなくて習近平がカードを切って戦争を選択すれば、日本もそれなりの対応の仕方がある。日米同盟で戦争を勝利に導くと共に、中国に「倍返し」の民主化革命を巻き起こすのだ。


反政府勢力やウイグル、チベットなどに膨大な資金を提供して、北京に向けて蜂起を促す。日露戦争で、陸軍大佐・明石元二郎がレーニンと会談を重ね、資金を提供してロシア革命を成功に導いた史実もある。


レーニンは「日本の明石大佐には本当に感謝している。感謝状を出したいほどである。」と革命成立後に述べているが、戦時となれば、相手の懐深く忍び込んで工作を行うことなどはイロハのイであろう。10・28テロは床にガソリンがまかれていることを意味する。それに火をつけるだけだ。

この文章を愛読している中国の諜報員はすぐ本国に連絡すべきだ。習近平が「尖閣戦争」などやろうにもやれないことに気付くだろう。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック