2013年11月08日

◆「炎上釣り師」山本太郎の狡猾さ

杉浦 正章



選んだ都民の民度を疑う


ウエブのサイトで不祥事などをきっかけに爆発的に賛否の議論を巻き起こすことを「炎上」と言うが、そのきっかけを作ることを「釣り」と言う。あちこちでサイトを炎上させる者は「釣り師」だ。参院議員・山本太郎はその「釣り師のポリティック」に出たのだ。従って論議が燃え上がれば燃え上がるほどありがたいのだ。


一見神妙な顔をしながらも本人は、しめしめと思っているに違いない。なぜならタレントであるからだ。タレントはテレビに出てなんぼの世界に生きている。もともと賛否両論が出るのは百も承知だ。賛否両論で燃え上がれば燃え上がるほど、非難が増えるが、一方で相対的に支持者も増える。そこが狙いだ。
 

案の定ウエブではノーテンキな都民の婆さんたちが「可哀想」などと、馬鹿な感情論を展開している。物事の真偽を見分けられなくなった婆さんたちは、天皇に直訴することが大それた事などとは理解できず「原発反対の山本さんがいじめられている」としか映らないようだ。


昔社会党系都知事の美濃部亮吉が失政をして、自民党などから叩かれる度に「美濃部さんお可哀想に」と同情した婆さんたちを思い出す。理屈ではなく感情で物事を判断するのだ。問題の根源はこうした政治家を選出する選挙民の側にある。


都民ほどガバナビリティ(被統治能力)に欠ける選挙民は日本広しといえどもいない。尖閣買い取りを主張するような石原慎太郎を選んで、国を危うくしたり、猪瀬直樹を選んで危うくオリンピックを逃しそうにしたり。今度は原発反対を唱えるだけのタレントを選んでこの始末だ。民度が低すぎるのだ。


読売川柳に「山本見て猪木見て参院見る」という傑作が載っていたが物事の本質を突いている。作者は山本と国会に無断で北朝鮮を訪問したアントニオ猪木を暗愚の見本として眺めている。そして参院を見て、この体たらくで参院が必要だろうかとあきれているのだ。実にうまい川柳だ。


逆に朝日は「不敬だと騒げば疼(うず)く脛(すね)の傷」という川柳を選んで、選者が「例えば主権回復式典」とコメントしている。なぜ主権回復式典かと言えば、同紙の論調が「山本が天皇の政治利用なら、主権回復式典で安倍政権が天皇の臨席を仰いだのも政治利用」という流れになっているからだ。


これを見てつくづく思うのが朝日の編集方針の全体主義的傾向だ。原発反対であれば、タレント議員が天皇に直訴しようと何をしようと非難しない。支持したがる。そして川柳に至るまでその方針を徹底する。

選者は上の方針を察知して、そのお眼鏡にかなうような川柳を選んで、吾が身の保全を図るのだ。その徹底ぶりは「ご立派」というしかない。


山本の卑怯未練な人格を浮かび上がらせたのが、事件拡大をマスコミのせいにしようとしていることだ。「マスコミが騒いだから、政治利用にされた」と発言しているが、テレビカメラが写してることを確認して手紙を渡しておきながら、よく言えたものだ。


この山本事件で、もたもたしているのが安倍政権だ。当初は幹事長・石破茂が 「テレビや新聞で大きく取り上げられることによって、存在感を大きくしようと思ったのではないか。天皇の政治利用と言われても仕方がない」と息巻けば、文科相・下村博文が「議員辞職ものだ。政治利用そのものだ」と批判。


しかしその後はなにやらぱっとしない。下村に至っては山本を、明治天皇に直訴した田中正造に例え「田中正造が直訴して大問題になったことに匹敵する」と批判してしまった。


足尾鉱毒事件で自ら議員辞職した上で天皇に直訴した田中正造はむしろその動機といい、心情といい英雄的行為であった。もとより売名タレントなどと比較すべきものでもない。党内などから批判が出ると「立派な田中正造に申し訳ない」と記者会見で謝った。


参院自民党も7日山本を参院議長による厳重注意と、皇室行事への出席を自粛させる方針をいったん固めたが、事前に方針が漏れたことを理由に、決着を8日に延期した。とにかく騒がれれば騒がれるだけその本能が快感を感ずるタレント議員を、都民が選んでしまった“祟り”は続く。「炎上釣り師」は今度は何をやって目立とうとするのだろうか。


◎読売は今頃後追いか


読売が「集団的自衛権の見直しを先送り」とまるで特ダネでもあるかのようにトップで報じているが、まだ書いてなかったのか。既に9月の段階で政府・与党の方針は先送りで一致しており、新聞報道もこの方向であった。


筆者も9月25日の解説で「安倍が集団自衛権導入を来春に先送り」と書いている。読売も解説や特集では書いているではないか。いまさら記事を大展開させる話だろうか。


9月の時点では、まず幹事長・石破茂が集団的自衛権の前提となる国家安全保障基本法案について、国会提出が来年の通常国会以降になるとの見通しを示した。「公明党の理解もなしに、秋の臨時国会に法案を出せるという話にはならないだろう」と述べたのだ。


さらに集団的自衛権の行使容認に向けた公明党との協議について、協議開始は大綱策定後の来年になるとの見方を示した。これと口裏を合わせるように安倍も9月22日のテレビで、憲法解釈変更の結論を年内に出すかと問われ、「いつまでにということではなく、議論がまとまるのを見守りたい」と述べている。


先延ばしは既定路線であり、物事はそれを前提に動いている。いずれにしても、いまさらびっくりさせるような話ではない。
【筆者より】小旅行のため月曜は休載します。12日に再開します。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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