2013年11月10日

◆名護市長選の「保守分裂」は・・・

松本 浩史


政府・自民党がさらしたいかにもお粗末なこのざまは、どう受け止めればいいのか。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先となる同県名護市の市長選(来年1月12日告示、19日投開票)をめぐり、行き届かない候補者調整がたたり、移設容認派の2人が出馬表明するに至った。

移設反対派の現職に風を送っているのだからあきれる。事の行く末によっては、日本外交の基軸である日米関係を揺さぶりかねない。

「ダブルスタンダード(二重基準)で参院選に臨んだのが間違いだった。矛盾のツケが吹き出たようなものだ」

政府関係者は、保守分裂の様相を呈し始めた市長選をこう嘆く。7月実施の参院選で沖縄選挙区(改選数1)から出馬した自民党候補は、移設問題に関しては、県連の方針を踏まえ、党本部の「(名護市)辺野古への移設推進」を唱えず、「県外移設」を主張。しかし、3万票以上の差を付けられ現職に敗れた。

市長選で県連が支援する県議も出馬会見では、移設容認派に担ぎ出されながら、「容認」とは明言しなかった。受け入れ反対の空気が強い県内世論に配慮したためとはいえ、いささか分かりにくい振る舞いといってよかろう。それだから、任期中に移設を容認していた前市長が割って入る余地を残した。

石破茂幹事長が近く地元入りして一本化調整に当たるそうだ。けれども、そうやすやすと落ち着くとは到底、思えない。政府・自民党が振る「移設推進」の旗は、自滅で色あせてしまい、選挙戦を厳しい様相にしてしまった。

もっとも、移設に伴う埋め立て承認をめぐり、政府が仲井真弘多知事に申請した時期を今年3月に設定したのは、反対派が市長選で勝利する可能性に配慮していた。仲井真氏が「承認」などの判断をするのは当時、申請後、8カ月前後とされていた。

つまりは、11月ころに当たり、市長選前に結論を出せる環境を整えたわけだ。当然ながら、仲井真氏はもともと容認派だったため、「承認」に期待する向きが強かった。

だが、そうは言っても、直後に行われる市長選の情勢をいささかも顧みず、判断できるはずもない。保守分裂で容認派の劣勢が濃くなり、選挙前に「承認」の判断をすれば、反対派を勢いづけるのは必至。このため、政府・自民党では、「今のままだと選挙前の判断は政治的に無理」(同)との見方が支配的となっている。

それでも、どうにか容認派の一本化を実現させて、選挙前の判断に期待を寄せる声もある。しかし、たとえできたとしても、選挙戦が熾(し)烈(れつ)を極めるのは間違いなく、判断そのものが結果を左右しかねない。となればもはや、できる話ではないのである。

政府には、仲井真氏が「承認」せずに「不承認」とした場合、県に代わって政府が埋め立てを承認する特別措置法の制定という案もささやかれ始めた。「保留」であれば、地方自治法に基づき、県に是正を指示。従わなければ、代執行し政府が承認することもできる。

「承認」されず、政府があれやこれやでどうにか移設を進めるにしても、手続きに使う時間の浪費は、国益からみれば、この上ない損失である。もし市長選で反対派が勝てば、政府の対応にいくらでも抗議をするだろうし、市議会が反対決議をするかもしれない。

「米軍再編の非常に重要なステップだ」

政府が承認申請をしたとき、米国防総省のリトル報道官は、歓迎するこんな声明を発表した。約1カ月前に行われた安倍晋三首相とオバマ大統領との日米首脳会談で、首相は早期移設を目指す考えを表明しており、すかさず動き出したことを評価したといえる。

3年3カ月にわたる民主党政権で揺らいだ日米関係を立て直すという、首相の思いは強い。北朝鮮の核・ミサイル問題や尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる対中関係など、日本の安全保障環境は不透明さを増しており、日米関係を一層深化させなければならない事情もある。

移設問題の歯車を回すことは、その一助になる。市長選の一本化調整に政府・自民党がしくじったことは、そんな流れに水をさすようなもので、とてもまずいのである。
産経ニュース【松本浩史の政界走り書き】 2013.11.9

<「頂門の一針」から転載>

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