2013年11月16日

◆「中国の夢」と「冬季五輪招致」

山本 秀也


中国の習近平体制が初めて本格的な路線討議に臨んだ共産党中央委員会(第18期3中総会、11月9〜12日開催)では、政権のお題目とも言うべき民族復興(すなわち「中国の夢」)を念頭に、経済改革と党の権力強化に議論が集中した。固い分析は別の記事に譲ることにして、ここでは3中総会の直前に公表された2022年冬季五輪大会の北京招致を考えてみたい。

簡単に触れておくと、22年の冬季五輪は15年7月にマレーシアのクアラルンプールで開かれる国際オリンピック委員会(IOC)総会で決まる。今月14日の立候補期限を前に、カザフスタンのアルマトイ、ノルウェーのオスロ、ポーランドのクラクフなどが立候補。北京は約200キロ離れた張家口との2都市共催という構想だ。

中国といえば、08年夏の北京五輪がまだ記憶に新しい。続いて22年の冬季大会も北京となれば、中国初の冬季大会となるのはむろん、同一都市での夏冬両大会開催という「五輪史上初」の快挙である。中国が狙っているのはまさにこの大金星だが、ことはそう簡単ではない。

スポーツ関係者がそろって指摘するのが、直前の18年冬季五輪が韓国の平昌で開催される点だ。地域バランスの観点から「アジアで2大会連続は困難」というのが普通の見方だ。

将来の北京招致に向けて、22年は「手を挙げておくだけ」というクールな声も。微小粒子状物質PM2・5をはじめとする北京周辺の環境問題となると、中国紙「環球時報」の世論調査ですら、過半数の回答(54・7%)が招致実現の足を引っ張ると指摘している。

実際、過去の五輪招致でも、中国が頭を悩ませたのがこの大気汚染である。シドニーに敗れた2000年五輪の北京招致活動では、IOC評価委員の視察中、汚染源となる工場操業のほか、石炭を使う暖房用の熱供給も止めて青空を呼び戻した。

ところが、中国は至って強気だ。国際バレーボール連盟の魏紀中・前会長は、北京放送へのコメントで、五輪開催を支え得る発展こそが招致の鍵だとして、「中国の招致申請は、中国の経済がよい方向に発展するというメッセージを世界に発信したのだ」と豪語した。

大会関連施設を含むインフラ整備による内需拡大や、招致に向けた環境対策そのものを否定する気はない。ただ、官製メディアを挙げての招致宣伝には、経済効果や国民向けのイベント効果を通り越し、「政治」の影がくっきりと浮かぶ。

すなわち、12年11月に発足した習近平政権が、2期10年を務め上げた最終年を飾る大舞台として、冬季北京五輪の招致は中国が本気になれる目標なのだ。

22年冬季大会は、習政権の「中国の夢」を象徴する大会として喧伝されるだろう。よって筆者はスポーツ関係者の懐疑論にはくみさない。中国は本気で22年の誘致活動を進めるはずだ。(産経新聞中国総局長)産経ニュース2013.11.15

<「頂門の一針」から転載>
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