2013年11月21日

◆JR北は破綻処理するしかない

屋山 太郎
 

平成23年5月に石勝線で特急がトンネル内で脱線・炎上し、乗客79人が負傷する事故が起きた。これを機に、JR北海道の事故や不祥事が続発している。

乗務員のアルコール検査を昨年まで組合側が拒否していた一事をみても、この会社の異常さが分かる。本社が現場に送ったとされるブレーキ部品について発送記録も現場が受け取った記録もないというのは、信じ難い“無政府状態”だ。

 ≪国鉄分割・民営化時と酷似≫

経営側も組合側も、それぞれの言い分を言っているが、今の状態は、国鉄が二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなって、分割・民営化されたときの状況とうり二つである。

当時、国鉄は国労、動労、鉄労の組合が三つ巴(どもえ)の抗争を繰り広げていた。国労の富塚三夫書記長が「国鉄が機能しなくなれば国力が落ちる。そうすれば革命がやり易(やす)くなる」と言うのを聞いて、「絶対に国鉄を民営化しなければならない」と決心したものだ。

結局、国鉄は貨物会社も含め7つに分割・民営化されたが、再生に当たり、経営側は動労を取り込んで“革命的労働組合”を分断統治した。国鉄ストに実力を発揮するのは運転士組合(動労3万人)であり、これを崩した結果、23万人の国労は蹴散らされた。

民営化後の組合は、かつての鉄労系が中心となったJR連合系と動労、国労が支配したJR総連系という2大勢力体制となった。問題は、革マル系が牛耳る少数派の動労系が巨大勢力になったことだ。

箱根以西のJR東海、JR西日本、JR四国、JR九州で革マル系のJR総連は少ないが、JR東日本とJR北海道では総連系が80%を超す。東日本と北海道では総連系の組合員が他の組合員の結婚式に出ただけで組合幹部から脅されるという。国鉄時代は、先鋭的な組合の分会長が会社側の区長を脅して休日を増やすといったヤミ協定が平然と結ばれた。

国鉄の経営が破綻したのは、何よりも、組合側に人事権と給与権を握られたことにあっただろう。組合と仲良くしなければ総裁にも労政局長にもなれなかった。その癒着について、私は文藝春秋誌(昭和57年4月号)に「国鉄労使国賊論」と題して一文を書いた。驚いたのは、全国の国鉄職員(組合も当局も)から「その通り!」と激励の声が届いたことだ。

≪巨大労組に押しまくられ?≫

JR北海道のレール検査をめぐり、同社はこの11月12日、保線担当部署が測定した数値と社内データベースに複数の食い違いが見つかった、と発表した。

車両の幅とレールの幅が規定通りでなければ脱線につながる。JR北海道本社では、函館保線管理室の社員が社内調査に対して「数値を変えた」と述べたとし、「改(かい)竄(ざん)と認めざるを得ない」と表明した。こういう重大事がなぜ見過ごされていたのか。会社側と組合側との間で、「大目に見る」という暗黙の馴れ合いがあったのではないのか。

経営側は、線路の更新には資金がなく、検査する人手がないと言う。分割・民営化に際して、北海道、四国、九州の3社の経営が苦しいことは予想された。

このため、経営安定基金として北海道に6800億円、四国に2000億円、九州に3800億円を配分して、基金の運用益を使うよう措置された。その運用益が金融情勢の変化で徐々に減り、経営が窮屈になったことは確かだろう。

だが、四国も九州も賃上げせず持ちこたえている。その中で北海道の給与だけが高いのは、経営側が強力な組合要求に押しまくられてきた帰結ではないのか。

≪労使とも一新して出直せ≫

アルコール検査をしないとか線路検査でインチキするとか、鉄道会社社員である資格などないということだ。経営側はそんな不良社員は即刻、解雇すべきだ。石勝線のトンネル事故の後、当時の中島尚俊社長は線路の点検に懸命になった。

ところが、組合側は、休日出勤や時間外労働を押し付けたのは“36協定違反”だと経営陣を責め立てた。心労が重なって中島社長は入水自殺するに至った。

不可解なのは、JR北海道の取締役会に、坂本真一相談役(元社長)、柿沼博彦特別顧問(前会長)という、取締役以外の旧経営陣2人が毎回出席していることだ。新経営陣は前例を破ってでも現状突破を図るものだ。そこに経営を悪化させてきた旧経営陣がなぜ出席するのか。紙に書いていないヤミ協定、労組との暗黙の取引が引き継がれているのではないか。

11月7日、参議院国土交通委員会で民主党の田城郁(かおる)参院議員が太田昭宏国交相に要求した。田城氏は、革マルの総大将で動労元委員長の故松崎明氏の側近、JR総連の組織内当選者だ。氏が求めたのは(1)賃金の積み増し(2)レール補修の費用(3)枕木をコンクリートに代える−などである。しかし、問題の本質はカネではないだろう。

日本航空(JAL)は平成22年に、乗員組合、機長会の横暴の末に経営破綻した。JR北海道も経営破綻させて、経営側、組合側の双方を取り替えて再出発する以外、再建の見込みはない。(ややま たろう評論家)
  産経[正論] 2013.11.21

<「頂門の一針」から転載>
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