2013年11月26日

◆防空識別圏は空域の盧溝橋対峙様相

杉浦 正章



米中も一触即発の様相に至った
 


このケースは直ちに国家安全保障会議(NSC)を開催して対策を打ち出すべき場面だ。NSC設置法案は成立するものの、その要の秘密保護法案はピントの狂った反対論で難航している。


その平和ぼけした日本の姿をあざ笑うかのように中国による防空識別圏の設定である。まさにやくざが他人の庭に線引きして地上げをしている姿だ。


日本政府はこれに対して当初はなんと外務省アジア大洋州局長レベルの電話による抗議であったが、米国の反応は素早いうえに問題の認識が深かった。国務・国防両長官が声明を発して中国に警告したのだ。まさに盧溝橋事件前夜に匹敵する一触即発の事態である。


しかしこの危機はチャンスに変え得る。政府は国連安保理で国際社会に訴え、中国の理不尽な姿を浮き彫りにしてその孤立化を図るべきである。


中国の防空識別圏の設定は極東における安全保障の構図を根底から覆すものと言ってよい。日中一触即発から米中一触即発へと事態は変質したとも言える。


そもそも日本の防空識別圏は1945年に連合軍総司令部(GHQ)が制定した空域をほぼそのまま使用しており、尖閣諸島の久場島は米軍の射爆場になっているし、空域は米軍機が日常的に訓練に使っている。それを知ってか知らずか中国の線引きであり、米国にしてみればまさに“縄張り侵入”なのである。


国務長官・ケリーが強く反発したのは当然として、国防長官ヘーゲルの反応が極めて厳しいものがある。ヘーゲルはまず歴代長官で初めて「米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されるという米国の長年の政策を再確認する」と公式に明言した。


これは中国の尖閣諸島領域における軍事行動には、米軍が軍事力で対処するという意味を持つ。さらに注意すべきは「中国の今回の発表によって、米国の地域での軍事作戦のあり方が変わることは全くない」と、中国にくぎを刺した点である。


要するに軍事訓練も演習も中国の指定した識別圏で行う。やるならやるぞという姿勢である。これ以上の対中けん制を米国が行ったことは過去になく、一部評論家の間で今流行の「米国は尖閣で日本を助けない」などという議論を根底から覆すものである。


これは、日本が躊躇している間に頭越しの米中正面衝突が発生する可能性すら出てきたということだ。


中国側も軍主導の様相が色濃い。習近平は先の共産党3中全会以降、対日政経分離の動きを強めていたが、軍部の反発が極めて強く、抑えきれない状況となったとされている。この結果軍をなだめ、国民の不満を外に向けるための対日“禁じ手”の一つを打ち出したのだ。


これが何を意味するかといえば中国空軍の「関東軍化」である。トップの意向を無視しての独走が可能になったことを意味する。


というのもスクランブルの判断は自動的に空軍が行い、発表にあるように「防衛的な緊急措置」と称して軍事的な行動による進入阻止に出ることが可能となるからだ。だから自衛隊は抑制気味に動いても米軍は逆の行動に出る可能性を否定出来ない。


既に米中間には2001年に米中空軍機接触の海南島事件が発生している。空軍機が空中衝突した事件だ。中国側の戦闘機は墜落しパイロットが行方不明になり、アメリカ側の電子偵察機も損傷し海南島に不時着したものの中国側に身柄を拘束された。尖閣諸島をめぐってもこのような状況が発生し得る事態となったのだ。


海上での進入に対しては、とりあえず海保が対応しているからいわば間接的な対峙だ。だが、空での進入は空軍対空軍の直接対峙であり、常に墜落の危険性を伴う。したがってひとたび衝突すれば事態はさらに深刻な段階へと移行する。


1937年一触即発の状況で対峙していた日本軍と中国国民革命軍が7月7日に接触して日中戦争のきっかけを作ったようなケースが、いつ発生するかは知れないのだ。まさに空における盧溝橋対峙の構図が現出したのだ。


日本政府がなすべき事は、この常識外れの中国の軍事圧力を正面から見据え、妥協はしないことだ。中国は日本国内の愚かにも平和ぼけして、NSCに不可分の特定秘密法案に反対している一部メディアや有識者と称するノーテンキ集団を“教育”する材料を幸いにも提供してくれているのだ。


反対論者は国の存否がかかわる事態に直面しても反対するのかということだ。もう逡巡する必要などはますます無くなった。民主党や極左政党が国家の存亡の危機であるという認識などないことは分かりきっている。ちゅうちょなく秘密保護法を成立させて、早期にNSCの第一回会議を開催して対応を練るべきであろう。


また国際的に中国の孤立化を図ることが重要ポイントだ。誰が見てもこの防空識別圏の設定は一方的な現状変更であり、あきれるほどの国際常識の無さを露呈している。


日本にとって絶好のチャンスである。米欧主要国はもちろん、安倍と良好な関係のあるプーチンも日本側につく。日本は安保理での中国非難決議に持ち込むべきであろう。戦争の事態を未然に防ぐことは国連安保理の主たる役目であり、尖閣防空識別圏設定問題はまさに重要テーマとなり得る。


高い分担金を長期にわたって払ってきた日本も、その平和志向が各国に理解されている。このチャンスを逃してはならない。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 
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