2007年04月09日

◆巴里だより「マルモッタン美術館」

  
岩本宏紀(在仏)

出張で初めて巴里に来たのは1980年。そのころ巴里の美術館と言えばルーブルとジュー・ドゥ・ポームしか知らなかった。後者は印象派美術館と呼ばれており、オルセ美術館に展示してある多くの名画はここにあった。

エールフランスに乗ったとき、日本語の機内誌があった。葉書大で10ページそこらの小冊子だった。「Bon Voyage」(ボン・ボワイヤ-ジュ)という名前だったろうか。

そのなかでロダン、モロー、マルモッタンといった巴里のこじんまりした美術館が紹介されていた。モネが好きなぼくは、休みの日に迷わずマルモッタンに直行した。印象派という名前のもとになった絵、「印象・日の出」がそこにあると書かれていたからだ。

ベージュの石造りのこの建物は120年以上前に狩りの館として建てられたそうだ。今では高級住宅街のこの界隈だが、隣接するブローニュの森には当時は鹿や猪がいたのだろう。

地下展示室への階段を下りていくと、その絵は真正面にあった。一瞬、背中を氷水が流れ、ぼくは立ちすくんでしまった。淡い水色の朝もやの港に一艘の小船。やっと全貌を現した紅い太陽と、ほのかな朝焼け。海面には一条の朱色のひかりが反射している。

あの感動は27年経った今でもはっきり覚えている。「エトルタの夕陽というモネの有名な絵があるでしょう。」という友だちの言葉を思い出し、久しぶりにマルモッタンへ行ってきた。

「印象・日の出」は階段正面から左側面へ移され、以前はなかったガラス板が据えられていた。一度盗難に遭い、数年後にやっと発見されて、再びこの美術館に戻ってきたという事情を考えると、これもやむを得ないかと思う。

しかしこの絵の印象は相変わらず強烈だ。観光客の大きな喋り声にもかかわらず、何分も引き込まれてしまった。

アパートからこここにくるまで15分、行列もなく、6.5ユーロ(約900円)の入場料で、こんな感動が味わえる。あらためて巴里の豊かさを実感した。

エトルタの夕陽の絵もすばらしかった。縦21センチ、横37センチの小さなパステル(乾性絵具)画だが、燃えるような夕焼け雲に目を奪われてしまった。

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