2013年12月24日

◆特定秘密保護法の対象

大野 敏明


多くの批判を浴びながら、特定秘密保護法が成立した。

日本にはこれまで、安全保障関係の秘密を保護するための法律もスパイ防 止法もなかった。それ自体が異常なことで、現在のような、近接する国々 があからさまな敵対行為を平然と行い、わが国の平和と安全を脅かしてい るとき、こうした法律が存在しないことははなはだ不都合である。

とくに日本は、核兵器はもちろんのこと、戦略爆撃機、攻撃型ミサイル、 航空母艦などを所持しておらず、相手国が何らかの形で、武力攻撃をしか けてきても、それに十分に対処することができない。対処できないという ことは、それだけで、攻撃される危険性を増幅しているわけで、その分、 国家の平和と国民の安全を脅かしていることになる。

このため、米国と安全保障条約を結び、欠陥を埋めることによって、抑止 力を維持しようとしているわけだが、そのためには、情報をふくめ米国と 緊密な連携を保たなくてはならない。これは米国が善か悪かとか、好きか 嫌いかといった問題ではない。策源地(敵の攻撃基地)すら攻撃する能力 を持っていない国の宿命である。

しかし、特定秘密保護法のような法律がなかったために、米国は日本に十 分な情報を開示してこなかった。軍事上の機密を日本に伝達しても、それ が漏れる可能性が大きかったからである。

米国政府が安倍晋三政権になってから、同法の成立をせかしてきた理由、 そして安倍政権が同法の成立を急いだ理由はまさにそこにある。危機をあ おる中国や北朝鮮を目の前にして、同法の成立は不可欠であっただろう。

しかし、今回成立した内容は、本来の意図とは少しずれている。それは、 同法の対象のことである。

同法の主たる対象は公務員となっているが、本来は国会議員だったのであ る。日本は世界でも珍しく、近代民主主義国家でありながら、立法府であ る国会議員から、行政府の長である首相と過半数の国務大臣を選任するこ とが憲法で規定されている。つまり、三権分立になっていないのである。

公務員として知り得た秘密を漏洩(ろうえい)すれば、公務員法違反で処 分される。最悪の場合は解雇される。解雇されれば路頭に迷う。したがっ て、公務員は秘密の扱いに慎重になる。

しかし、大臣、副大臣、政務官などとして行政府に入っている国会議員 は、漏洩しても行政職を罷免されるだけで、国会議員たる資格を失わな い。行政府の職を失っても立法府の職は安泰なのである。

しかも、悪いことに、国会議員は、自分が国家の枢機に参画し、国家の秘 密を知りうる重要な地位にいることを選挙民などに喧伝(けんでん)する ため、深い考えもなく、秘密を暴露する傾向がある。

防衛省、検察庁、警察庁、海上保安庁などの責任者は、行政職に就いた国 会議員から秘密が漏れることを警戒して、どこまで真実を伝えることが妥 当か、常に気を砕いているともいう。民主党政権時代、多くの機密情報が 政権に伝わらなかったことをみてもそれは分かる。昨日まで安保反対、自 衛隊違憲を唱えていた人々に安全保障上の機密を話せるはずがない。

大もめにもめて特定秘密保護法は成立したが、自衛官をはじめとする国家 機密を扱う現場の責任ある国家公務員たちの多くは、国会議員の安全保障 意識の低さを恐れていることを、議員諸兄は肝に銘じていただきたい。 (おおの としあき・編集委員)産経ニュース【視線】 2013.12.23

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