2014年01月12日

◆「大東亜戦争肯定論」を読む A

平井 修一


林房雄の著書「大東亜戦争肯定論」(1964年刊)を読んでいる。この本については西尾幹二先生が当時目を通して、「そういうことだろう、違和感はなかった」と書いていたので、それならと遅ればせながら小生も読み始めたというわけだ。

林は1903年(明治36年)5月〜1975年(昭和50年)10月。小説家、文芸評論家で、三島由紀夫とも親交があった。「大東亜戦争肯定論」は中央公論1963年9月号から65年6月号にかけて連載され、その後、番町書房で正(1964年)・続(65年)2冊で刊行された(のち全1巻)。

さらに2001年、夏目書房で単行本全1巻で再刊、のち普及版が出版されたが、夏目書房の倒産(2007年)により、古書以外での購入はできなくなった。小生が今手にしているのは最初の1冊(正)で、図書館で借りた。

林はあえて、敗戦後GHQにより使用を禁じられ、占領終了後もその用語がタブー視された「大東亜戦争」という名称を用いた。GHQがNHKや新聞を通じて日本人に植え付けた「日本悪者論、自虐史観」が、1964年頃から「それはおかしいのじゃないか」と思う人が少しずつ現れてきたようである。

朝日や岩波などの左翼論壇全盛の中でこの本の刊行は、大東亜戦争を見直すきっかけになったのではないか。その意味で歴史的な本ではなかったか。第1章と後書きのごく一部を要約して紹介する。

             ・・・

「東亜百年戦争」。確かに人騒がせな題名に違いない。聖戦、八紘一宇、大東亜共栄圏などという戦争標語を復活し、再肯定し、もう一度あの「無謀な戦争」をやり直せというのかと、まず疑われる恐れが十分にある。

ありのままを言えば朝日新聞紙上の小論争の中で、

「私の大東亜戦争肯定は、私自身の歴史研究の成果であって、現在でも変わらない。この“無謀な戦争”が世界史の転換に与えた大衝撃は、ウェズ(注)やトインビーの証言を待つまでもなく、戦後の世界史が実証している」
という気負い立った一言を吐いた。それが中央公論編集者の目にとまり、「大東亜戦争のどこを、どんなふうに肯定するのか」と尋ねられ、発言の責任を取らせられた形になった。

私は編集者のその問いに答えることにした。題名は私自身が選んだものだ。決してその場の思い付きではなかった。長い間の持論をそのまま文字に著しただけである。

大東亜戦争の本質に関する議論は、いろいろな場所ですでに始まっているようだ。あの「不可解で不条理な戦争」を自己自身の歴史としてとらえ、自身の目で再照明したいという願いは今日の「考える日本人」に共通する心情ではないか。日本人の一人一人がこれを行わねばならぬ時が来ていると私は考える。

私は日露戦争の直前に生まれた。シベリア出兵、山東出兵、満洲事変、日支事変を経て大東亜戦争。平和は知らない。私たちが知っているのは戦争だけだ。10年続く平和はなかった。

徳川時代の少なくとも200年間は平和であったという。外国との戦争はなかった。2世紀以上も平和に生きた時代があり、1世紀近くを戦争で明け暮れした時代がある。

私たちが平和と思ったのは、次の戦闘のための「小休止」ではなかったか。徳川200年の平和が破られた時に「長いひとつの戦争」が始まり、それは昭和20年8月15日にやっと終止符を打たれた、のではなかったか。

「太平洋戦争を起こしたのは明治以来50年の軍国主義教育のせいだった」という論がある。この感じ方、考え方は現代知識人の心情のひとつの典型であるが、どんなものだろう。戦争教育なしには戦争は行えないが、教育以前に戦争があるのではないか。

少なくとも戦争の予感またはその萌芽がなければ戦争教育は行われない。教育以前に、それを必要とする戦争事実が発生していたのだ。明治維新をはるかに遡るある時期に「東漸する西力」(東洋へ押し寄せる西洋の力)に対する日本の反撃戦争が開始されていた、と私は考える。「再版大東亜戦争史観」だと叱られそうだが、もう少し私の意見を聞いていただきたい。(つづく)
               ・・・

注)ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866年9月21日 - 1946年8月13日)は、イギリスの社会活動家、歴史家、著作家。小説家としてはジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれる。

ウェルズは日本国憲法の原案作成に大きな影響を与えたとされる。特に9条の「平和主義と戦力の不保持」は、ウェルズの人権思想が色濃く反映されている。ウェルズの原案では「平和主義と戦力の不保持」は「全ての国に適用して初めて戦争放棄ができる」と記されており、結果として日本のみにしか実現しなかったことで解釈に無理が生じ、9条改正議論の一因となっていると言われている。(ウィキ)(2014/1/5)

     
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