2014年01月15日

◆小泉の原発ゼロ一点突破選挙は無理

杉浦 正章



逆に細川の佐川疑惑が蒸し返される


記者会見での「殿ご乱心」はそのままであったが、けしかけた変人・小泉純一郎の目つきが異様に光っていた。まるで耳を切ったゴッホのようにこわばり付いた顔つきであった。


そして両者の関係は主役のドンキホーテが小泉で、佐川疑惑で汚れたサンチョパンサ・細川護煕がこれについて行くという“真逆”の様相でもあった。


小泉は会見をあえて舛添要一の出馬会見に、意図的にぶつけたのであり、桝添は見事に霞んでしまった。全国紙の一面トップはすべてかっさらった。都知事選最初の出だしは小泉戦略が見事に奏功したが、問題は最初のうまさが持続するかどうかだ。


どうして小泉をここまで怒らせてしまったかだが、「年寄りを粗末にするとたたる」ということわざがそのまま当てはまる。小泉はかねてから首相・安倍晋三を育ててやったのは自分だと言う思いが強い。森内閣で、安倍を官房副長官に推挙したのは小泉だった。小泉政権では異例のサプライズ人事で安倍を幹事長に抜擢した。


ところが安倍は首相になってから何の“恩返し”もしない。小泉をどこかの小さい国でも「特使」か何かで使ってやればよかったものを、外交や内政で元首相としてお出まし願うのは森喜朗ばかりで、小泉は蚊帳の外だ。


とりわけ小泉が頭にきたのは自らの「原発ゼロ」の主張を安倍政権が無視したことだ。「そうか無視するならやってやろうじゃないか」と、ドンキホーテは槍を手にして立ち上がったのだ。嫉妬に狂った遺恨試合の様相だ。


ところが立ち上がったはよいが、展望は開けるのか。14日の会見では早くも馬脚を現した。なぜ馬脚かというと、かつての郵政選挙と同じ手法を踏襲したからだ。その手法とはシングルイシュウでの一点突破だ。郵政改革を抵抗勢力の峻別で戦ったあの方式だ。


小泉は「原発はゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なしで日本は発展できないというグループの戦いだ」と原発を最大の争点に位置づけようとしたのだ。ところが柳の下にいつも泥鰌(どじょう)はいない。小利口な桝添がまんんまとこれに乗るわけがない。


あえて激突を避けて「すぐにゼロは無理でも、原発に依存しない社会がふさわしい」と発言、論争を回避した。主要候補のうち「原発維持」を唱えるのは泡沫すれすれの田母神俊雄くらいのものであり、他の候補は全て小泉のようにすぐにゼロかどうかは別にして、「将来は依存しない」だ。将来が百年後か千年後かは別にして、そう言っておけば格好が付く話だ。


したがって小泉の「原発ゼロ」戦略は最初からつまずく形となったのだ。陶芸家をやって「新聞も読まないテレビも見ない」世捨て人の生活を送ってきた細川が、「原発問題は国の存亡にかかわるという危機感を持っている」と突然言い出しても国民への説得力の方が「ゼロ」だ。国の存亡にかかわるのは本人の存在であることに「ご乱心」の殿は分かっていない。


だいたい小泉も細川も東京都知事の座を奪ったからと言って、原発をゼロに出来るという論理構成が成り立たない事を知らない。支持票を集めたからといってこれが原発ゼロにつながる構図などあり得ない。


そもそも原発問題も含めたエネルギー政策は国家の専権事項であり、原発が「ゼロ」の東京都が口を出すべき問題ではない。東京都は原発立地自治体ではなく、都は東電の大株主と言ってもわずかに1.34%しか保有していない。1.34%で会社の方針が決まることはない。


加えて東電には大震災で国の資金が大量に入っており、株式の50%超を政府の原子力損害賠償支援機構が握っている。小泉が逆立ちしても、現在の発言権は国にあるのだ。


国は原子力規制委員会の結論を待って粛々と原発を再稼働する方針である。すでに有力規制委員が審査が進む6原発10基の名を挙げ、「基準に不適合とされる原発が出てくるとは想像していない」と発言している。夏までには都知事選があろうがなかろうが再稼働するのであって、疝気筋が口を出せる問題ではない。


そもそも二人とも首相時代は原発を推進していたではないか。民度の低い東京都民はそれでもスローガンに動かされる可能性が強いが、灯油が2000円の高値になった上に、電気料金の大幅値上げで家計が青息吐息なのは原発が動かないからだということを、教えてやらなければ殿様や女どもは分からない。


こうして小泉戦略は「空回り」のながれだ。読売は社説で「原子力発電は、国のエネルギー政策の根幹にかかわる問題だ。脱原発を都知事選の争点にしようとするのは疑問である」と主張している。


朝日ですら15日付の社説では原発ゼロの主張を「都民が考えるにはふさわしい」と述べながらも「原発一色に染めるスローガンの争いには賛成できない」とまるで読者にまた裂きを食らわすような社説を書かざるを得ない羽目になっている。


それよりもなによりも小泉ドンキホーテにとってサンチョパンサの佐川問題をどうするかが喫緊の課題だ。官房長官・菅義偉はさすがに鋭い。論点を佐川疑惑に絞ってガチンコ勝負に出た。


菅は「猪瀬さんがカネの問題で辞職した。細川さんについても総理大臣当時に佐川急便から猪瀬さんの倍のお金の問題で辞任した。都民はどう受け止めるか」とどぎつい一発を食らわせたのだ。たしかに細川は返済時の領収書の写しを国会に提出したが、佐川急便の社名も押印もなく国会は空転、結局政権を投げ出した。


投げ出したから追及はそこでストップしているが、猪瀬のケースと同じ疑惑が晴れたわけでは全くない。ここに「脱原発」は主要候補が総論賛成で、細川の佐川問題だけが猪瀬辞任と絡んでクローズアップする構図が出てきているのである。

  <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック