昔、映画に「拝啓天皇陛下様」というのがあった。極貧の家庭に育った青年。
徴兵された日本陸軍の衣食住が立派なので除隊になりたくない、
と天皇陛下に「おねがい」の手紙を書くという筋であった。
天皇陛下に対して陳情するのが可笑しいから笑える映画になったのだろ
うが、陛下に様を付けるのも可笑しかった。無学を笑う話でもある。実際は起こりえない話だろう。
ところがちゃんとした教育をうけた大人でも敬称のことを習う機会は無いのが昨今のようだ。メイルで「安倍総理大臣殿」という公開質問状が来た。総理大臣の殿とは失礼だとは思わぬご仁らしい。
そこで「大使ですら閣下なのに総理大臣に殿では失礼では無いですか」
と言ってあげたらだいぶ経ってから礼のメイルがあった。ご自分なりに調べて納得がいったらしい。
様とか殿以上の人に手紙を書くことの無いまま過ぎると、総理大臣に付ける敬称など知らぬまま、或いは恥をかいていることを知らぬまま死ぬことになる。そういう私は、人生の畑違い、外務省で大臣秘書官をさせられてあらためて知った。
大臣以上は「閣下」であり、大統領も閣下である。外交官では大使は閣下、総領事は「殿」を用いる。大臣は勅任官ではないが認証はされるから閣下でいいだろう。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
で「敬称」について書き込みがあったから引用、紹介する。
閣下(かっか)
身分や地位の高い人を敬って、その名の下に付けていう敬称。 貴族、大統領や首相、大使などの高位の官職、軍の高官などに用いられ、またはそれ自体が独立した呼称として用いられる(例:大統領閣下)。
もともと勅任官(天皇からの被任命者)以上の者に用いた。現在では主に外交儀礼として大臣や(他国の)将軍などの官名・職名につけられる。
また、英国など貴族制度のある国の場合は爵位の下に敬称としてつける。
閣下の敬称をつける際に、相手が博士の学位を有している場合は、官名、名前の下に博士閣下と呼称することもある。「〜大統領●●博士閣下」
殿(どの)
主に書き言葉で用いられる。「様」などを使う場合のような特別な敬意を示す必要は無いが、便宜上なんらかの敬称が必要な際に使われる。事務的な連絡に用いられる敬語である。
公式な場合や組織内の文書のやり取りでは上下の区別なく用いられる。
私的な文書のやり取りでは目上の人には使われない。
役職に続けて用いることがある(例、部長殿)。
ただし「○○部長殿」のように「名前+役職+殿」のように用いるのは役職名も敬称として用いることから二重敬語とみなされ、使用には注意が必要である。
現在、「殿」は見下している印象を与えかねないため、事務的連絡でも「様」を用いる動きが見られる。
様(さま)
相手を尊敬する意味で使用される。口頭でも文書でも使われ、どの場面でも用いることに違和感が少ない敬称である。 ただし中国では「先生」である。
文書では、基本的に「様」と「さま」は区別なく使われる。
「お客様」の意味合いとされる為、病院の患者の名札は「様」代わりに「殿」を用いることが多い(ただし呼ぶ時は「さん」付け)。 中国語では「様」は用いず「先生」を用いるようである。
各位(かくい)
複数の人に対する敬称。 相手が複数である場合に、相手の後ろに付けて用いる(例、広報担当者各位、報道関係者各位)。 対象者を省略し単に「各位」として使う場合も多い。
「各位殿」という表現は、二重敬語にあたるため間違いである。
氏(し)
肩書きを別にして紹介する時に使用し、一般に会話ではあまり使われず、文書または報告や報道といった感情を伴わない場面で使う。また、古風には「うじ」とも読む(用法は同一)が、同様に一般には殆ど使われない。
御中(おんちゅう)
文書の宛先などで、相手が企業や官公庁、学校などの団体などの場合に用いる
貴下(きか)
同輩以下の者(主に男性)へ対する敬称。通常は文語体の書面上(手紙など)で用いる
医師への手紙では「先生」の後に「御侍史(おんじし)」や「御机下(おんきか)」をつけ「○○先生御侍史(御机下)」とすることが多い。
関取(せきとり)
大相撲で十両以上に位置する力士の敬称。「○○(四股名)関」としても使用される。これに対し、幕下以下は「取的」とされ、さん付けで呼ばれる。
陛下(へいか)
天皇、皇帝、国王の敬称。君主、皇后に対して呼びかける語。またはそれ自体が独立した呼称として用いられる(例:皇帝陛下)。
尊敬の対象を直接呼び掛けることを忌むことで敬意を示す敬称であり、「玉座、高御座(たかみくら)の陛(階段)の下においでのお取り次ぎの方にまで申し上げます」程度の意味。
日本では天皇、三宮(皇后、中宮など)、皇后、皇太后、太皇太后の敬称。使用の規定は皇室典範にある。
日本以外の王室の相当する地位にある者への敬称としても用いられ、この場合は英語のYour/His/Her Majestyとほぼ互換。
殿下(でんか)
皇太子以下皇族の敬称。 王族、皇族の男性に用いられ、またはそれ自体が独立した呼称として用いられる(例:皇太子殿下)。
「御殿の下に控えておいでの、お取り次ぎの方にまで申し上げます」という形での敬意の表現に由来する。元来は皇族への敬称であるが、醍醐天皇の頃より、摂政、関白、のちには征夷大将軍等にも用いた(例:太閤殿下)。
明治以降は再び皇族のみに用いるようになった。
現在の使用の基準は皇室典範に定められている。皇太子以下親王・内親王・親王妃・王・王妃・女王に用いる。日本以外の王室の相当する地位にある者への敬称としても用いられる。この場合は英語の Your / His /Her Highness などとほぼ互換。
妃殿下(ひでんか)
王族、皇族の男性の配偶者に用いられ、またはそれ自体が独立した呼称として用いられる。
但し、皇室典範第23條に定められているとおり、皇族への敬称は「陛下」、「殿下」の2種類しか存在しないことに留意すべきである。つまり、「妃殿下」は、それ自体が「敬称」ではなく、「『皇太子妃』殿下」、「『親王妃』殿下」、「『王妃』殿下」など「身位+敬称」の略である。
猊下(げいか)
最高位の聖職者の敬称。 主としてダライ・ラマや宗教上の権威者に対して用いられる。またはそれ自体が独立した呼称として用いられる(例:法王猊下)。
キリスト教ではローマ教皇・枢機卿・総主教など、仏教でいえば教主、門主、門跡、管長、僧正、などに対して用いる。(例えばダライ・ラマ猊下、浄土門主心譽康隆猊下。ローマ教皇の場合に 聖下を使う場合がある。このときは「Holyness」が対応する。)。
仏陀の説法を師子吼(ししく。師子は獅子に同じ)、説法の座を師子座という。また?猊(さんげい。サンは俊のにんべんの代わりにけものへん)は獅子の一種。
すなわち、猊下とは「師子座の下(=の側近の方)にまで申し上げます」の義。
台下(だいか)
高位の聖職者の敬称。 仏教で言えば教主、門主、門跡、管長、僧正、などに対して用いる(例えば、各大本山の門主)。
聖下(せいか)
英語の his holiness の訳語としてカトリック他のキリスト教系の高位聖職者の敬称として用いられる。慣例的に猊下が使われることもある。聖下が天皇に用いられる語である聖上と混同しやすいという理由から、ローマ教皇に対して日本政府では台下を使用している。
2007・04・09