2014年02月19日

◆集団的自衛権で「転ぶ人」続出

杉浦 正章


公明党も遅かれ早かれ容認か


江戸幕府のキリシタン弾圧・拷問により、信仰を捨てた宣教師を転びバテレンと言うが、このところ集団的自衛権の憲法解釈をめぐって、転ぶ人、転びそうな人が続出している。


まず解釈改憲反対の牙城であった、内閣法制局が転んだ。次ぎに党首が反対している公明党の閣僚・太田昭宏が転んだ。そして幹事長・井上義久が転びそうだ。あちこちから雨漏りし始めて、公明党代表・山口那津男は二本の手では穴を塞げず、足まで使って塞がなければならない状態だ。


首相・安倍晋三にとっては滅多にないチャンスが到来しつつあることになる。


小さくしか報じられていないが、予算委で注目すべき発言は内閣法制局次長・横畠祐介の答弁であった。法制局は解釈改憲を可能とする長官・小松一郎が体調不良で入院したため、永田町では「クーデターが発生するのではないか」とささやかれていた。法制局は解釈変更反対論者が圧倒的多数であったからだ。


しかし、筆者などは長年法制局を観察して、時の政権のために法解釈を変えるのが法制局であると知らされてきたから、結局「三百代言」戻ると見ていた。


その通りで、小松の代理で答弁に立った横畠は12日「従来の解釈を変更することが妥当との結論が得られた場合には、これを変更することが許されないものではない」と答弁した。横畠は反対論者であったから、法制局特有の持って回った言い回しでまさに転んだことになる。


一方政権与党の公明党はやはり12日の答弁で国土交通相・太田が転んでしまった。太田は「安倍首相が話していることについては認めている立場だ」「全て首相が答えていることに同意している」と全面的に安倍の解釈改憲論に同調したのだ。憲法解釈の変更は閣議決定で行われるが、太田が署名しなければ閣内不統一ばかりか、連立解消となる。


したがって安倍にとっては願ってもない発言である。加えて、転びそうになっているのが公明党幹事長・井上義久だ。18日の記者会見で集団的自衛権容認への解釈変更について「私どもは真っ正面からこれを否定しているわけではない」と発言したのだ。


さらに続けて井上は注目すべき発言をしている。それは「公明党が結党された当時は自衛隊は憲法違反であり、日米安保は破棄すべきだという政策であった。だが、その後の社会状況の変化に対応して3年ぐらいかけて『自衛隊を容認する』、『日米安保を容認する』と安全保障政策を変えてきた。


安倍首相が言うように安全保障環境が大きく変わっていることは我々も認識している。今、本当に何が必要かということを真っ正面から向き合って、しっかりと集団的自衛権について議論をしていきたい」と述べたのだ。


これは筆者がかねてから分析してきた読みと全く一致する。有事法制やインド洋の給油支援活動、自衛隊のイラク派遣などで、当初は反対しても結局妥協に転じているのだ。筆者は「豹変は公明党のお家芸」と分析してきたが、井上発言はこの傾向を裏付けるものであろう。


この相次ぐ集団的自衛権容認への発言が意味するものは何かと言えば、みんな、維新両党の安倍への接近である。井上は「隙間を広げてその間に入り込もうとする人たちが居て難しい」と隙あらば公明党に代わって連立入りしようとする渡辺喜美と石原慎太郎に当てこすっている。


要するに自公連立は何が何でも維持したいというのが公明党の“本音”なのであろう。賛否両論がある党内論議も、徐々に賛成論が強まり始めている証拠でもある。


これに対して山口の立場は微妙だ。山口は政権成立当時は「断固反対。やるなら政権離脱」としてきたが、党内の空気を反映して徐々に過激発言を控えるようになってきている。しかし、根底には根強い絶対平和主義に根ざしたような反対論がある。


太田が発言すれば、山口は党内に「太田さんは安保法制懇の考えを見守りたいという考え」と釈明。井上が発言すれば記者会見で「容認すると言っていない」と説明するといった具合だ。しまいには18日「安保法制懇が4月に報告書を出しても今国会中に結論を出すのは容易ではない」と述べ始めた。これは形勢不利と悟って、引き延ばしの条件闘争に転じたのであろう。
 

安倍は報告書を見たうえで方針を打ち出すことを明言しており、4月に報告書が出れば会期末の6月までに閣議決定したいのであろう。しかし山口が騒いで、これに一部マスコミが同調する事態が予想される中で中央突破できるかどうかだ。


本来国会は自衛隊法改正案など関連法案が出てから関与する流れだが、事は憲法解釈の変更でありなかなか突っ走れない事情もある。山口の意向を忖度(そんたく)して夏まで先延ばしするか、環境が整ったとして国会中に判断するか、極めて高度の政治判断マターだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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