2014年03月08日

◆「真珠湾」の1年前(2)

情報収録:平井修一


アメリカが軍艦の建造を怠けた其の結果、1933年(フランクリン)ルーズベルト氏が大統領になった当時には日米の海軍力の割合は古い船を加えまするとアメリカの10に対して日本の8・5程度にはなったのでありますが、恐らく実力に於ては日米大差のない状態になったのであります。

又其の前年1932年アメリカが我国の満州事変に対して盛に不承認主義を以て妨害をしていた当時に於きましてアメリカの海軍当局者は日本の海事力に対して、アメリカは全く勝味がないと云うような考え方になって居ったのであります。

又事実に於きましても其の当時の力は大体大して距りがなくて、従ってアメリカから日本に攻めて来る場合には全く勝算がないと云うような状態にあったのであります。

そこで大統領は就任と同時に其の形勢を見ましては是は大変だ、何とかして一日も早くアメリカの海軍力を(ワシントン会議の)所謂条約比率、御承知のように5対3、日本の3に対してアメリカの5、是だけの勢力を早 く築き上げなければならないと。

大体ルーズベルト氏は、アメリカのビッグネーヴァーパーティ、大海軍論者と云う一派がアメリカの政界、実業界を中心として一つの勢力を持って居るのでありますが、其の大海軍主義者の中のルーズベルト氏は有力なるメンバーである。

勿論同氏は長く海軍次官をして居る関係もありまして、海軍のことに付ては恐らく今日のアメリカ政治家中心の何人よりも詳しい知識と、而して海軍に対する理解とを持って居るのであります。そこで33年に大統領に 就任するや直ぐにあのニューディルに依る産業復興計画の為の軍艦建造と称して32艘の軍艦を大急ぎで造ると云う案を決定しまして軍艦建造を 命じたのであります。

この結果アメリカの海事力は充実されて108万噸(トン)の海事力が揃いまして、日本に対して5対3の比率を維持することが出来る計算になったのであります。

処が其の翌々年日本がロンドン会議を脱退し続いてワシントン条約を破棄したのであります。アメリカはロンドン条約中のエスカレーター条項を採用しまして更に十数万噸の建艦を加えまして126万噸迄引上げること になったのであります。

日本の海事力がどれだけであるかと云うことは最近は我々が申上げる自由を持たないのでありますが、恐らく此のアメリカの126万噸の海事力に対して5対3の比率を保ったものだろうと思うのであります。

それから翌年1937年になりますと世界の形成は段々軍拡及武力制覇と 云う風な形勢に動いて来ましたのでアメリカでは第二ヴィンソン計画が成立しました。

之に依って其の126万噸の兵力を更に2割だけ増加し34艘、 約20万噸の軍艦を増加することが承認され、それから本年(1940)の1月になりますと3番目のヴィンソン案が議会を通過しまして、之に依っ て又それに1割1分を加えることになったのであります。

昨年(1939)戦争が始まって米国民の軍事熱が自ら昂まって来た機会を利用しまして、本年の海軍予算は大体日本の金に直しますると43億円に上ったのであります。此の43億の海軍費と云うものは海軍の歴史に於 きましては初めての大きな額であります。

処が本年の5月ご承知のようにドイツの欧州大陸に於ける勝利がアメリカを刺激しまして、アメリカは将来は自分の力だけで大西洋を護らなければならないような形勢が来ないとは限らない、是は本気で大至急海上国防の充実を図らなければならないと云うので、ルーズベルト大統領は予算決定以後、5月18日に第一次臨時緊急国防費と云うものを議会に提出しまして、そうして其の中から21億円を建造中の軍艦促進の為に投ずること になったのであります。

そうすると其の後フランスが戦敗し、愈々イギリスが孤立の状態に陥ったのでアメリカは更に第2次臨時緊急国防費を議決しまして、其の中から約25億円を海軍の方に振向けたのであります。そこで本年度にアメリカ 海軍が使う金は約90億円となったのであります。

それだけでも既に未曾有の巨額であり、我々を驚かすに十分であったのでありますが、7月に入りますと更に第3次臨時緊急国防費と云うものが議会を通過しまして其の総額は48億弗、日本の金に直しますと約208億円の臨時国防費が決定され、同時に軍事部長スターク大将の所謂両洋艦 隊が、即ち太平洋と大西洋に同時に艦隊を整備すると云う両洋艦隊、是が議会の承認を経て成立することになったのであります。

此のスターク計画と云うのは数字で申しますと現在の海軍兵力に対して7割だけ増加することになりますので、或は7割拡張と言い、戦闘艦七艘、それから航空母艦が8艘、巡洋艦27 、駆逐艦が115 、潜水艦40 、 合計200 艘の軍艦を建造してアメリカの兵力を7割だけ増し、そうして日 本、ドイツ、イタリーの3国の海軍が連合してかかって来たものに対して 対等の勢力を持つと云うのを標準としたのであります。

現在アメリカが造りつゝある軍艦、即ち第1次ヴィンソン案から第3次ヴィンソン案迄の計画で造りつつあり軍艦は、戦闘艦が10 艘、航空母艦が 5艘、巡洋艦が21 艘、駆逐艦が68 艘、潜水艦が43 艘、合計137艘の軍艦を造りつゝあるのであります。

それに先月(1940年9月)の8日にスターク計画に依る軍艦建造を各造船会社及海軍の造船所で引受決定しましたので、其の結果今日アメリカが造りつつある艦及造ることに決まって是からキール(船底を船首から船尾にかけて通すように配置された構造材)を置く艦、それ等を加えますると、戦闘艦が17 艘、航空母艦が13 艘、巡洋艦が48 艘、駆逐艦が176 艘、潜水艦が83艘と云う数字になりまして、合計が337 艘になる。

この337 艘が同じ時に或一つの国に依って建造されると云うことは 恐らく空前であることは勿論でありますが、将来も斯ういうことは起こり 得ないと考えられる程の大建艦なのであります。

私は昨年イギリスが同時に112 艘の軍艦を造って居ったのを以て近年に於ける記録的な建艦であると考えたのでありますが、アメリカの今や将に試みんとするものは約其の三倍に當る厖大なる計画でありまして、戦闘艦17 隻と云うのは今日我が国が持って居る戦闘艦の約2倍に匹敵する分量であります。斯う云う風な大建艦が滞りなく完成するかどうかと云うことは一つの研究問題なのであります。(つづく)(2014/3/6)

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