2014年03月13日

◆「番犬発言」に小松が怒るのは当然だ

杉浦 正章



野党の“生け贄”作戦に乗るな


どう見ても共産党に売られたけんかに法制局長官・小松一郎が孤軍奮闘している。


それにもかかわらず、安倍政権はろくろく助け船を出さない。小松はがんで入院中だったにもかかわらず、国会論戦を見ていたたまれずに「安静にしていればよくなるという話でもありません」と決死の覚悟で国会答弁に臨んでいる。


その発言は感情的な側面もないわけではないが、共産党や一部マスコミの狙いは、国会答弁で素人の小松の“舌禍”を巻き起こし、集団的自衛権反対の“生け贄”にして辞任に追い込み、安倍政権を挫折させるところにある。


これが分かっていない自民党も公明党も幹部が一緒になって小松を批判している。物事が見えない連中というのは全く度し難い。


共産党の戦略は明らかに、国会における政治的駆け引きになれない小松から、失言を引きだして集団的自衛権容認阻止への突破口にしようとしているところにある。そのやり口を見ると、実に巧妙だ。


まず4日の参院予算委で共産党の小池晃が挑発に出た。小池は小松に対して「あなたは憲法の番人なのだから、安倍政権の番犬みたいなことをするな」と噛みついた。よほどこの侮辱発言が悔しかったのか、小松はこれに乗ってしまった。


翌日社民党の質問に対して「共産党は日頃から国民の人権をことさら重視している。公務員にもプライバシーや名誉にかかわるものも含め憲法上基本的人権が保障されている」と反論したのだ。本来なら共産党の質問に答えるべきところだが、小松から見れば共産党も社民党も大差ないと思ったに違いない。筆者でもそう思う。


この答弁を聞いて、共産党はしめたと思ったに違いない。「引っかかってきた」と思ったのだ。そして答弁から2日もたった7日に、参院予算委終了後、国会の廊下で共産党の大門実紀史が小松を呼び止め「共産党に直接抗議して欲しかった」と絡んだ。


重病を患うと誰でも短気になるが、小松が反論すると大門は「あなたはそんなに偉いのか」とさらに挑発。顔を近づけてつかみかからんばかりの大げんかとなった。松の廊下ならぬ院内廊下の刃傷ならぬ口論だ。マスコミに報道されて上からまずいと注意されたのか小松は、必要も無いのに12日大門事務所を訪れて謝罪した。


共産党を相手にして謝罪すれば済むと思った小松が浅慮であった。案の定大門はこともあろうに一番の弱点の病気を突いて挑発した。必死の覚悟で病院を抜け出ている者に対して、全国最大規模の建設労働組合出身の大門は「法制局長官を辞任して療養に専念すべきだ」と、まるで吉良上野介のように嫌味たっぷりに“いたぶった”のだ。


小松は鯉口は刀を持っていなかったから切れないが、堪忍袋の緒は切った。「そんなことは言うべきではない」と食って掛かってまたまたけんか別れだ。


小松発言問題はもう一つある。小松が「安倍首相は国家安全基本法案を国会に提出するという考えにはない」と発言した点である。これが「法制局長官如きが首相の意向を述べるのは生意気だ」と自民党の一部から不満が出た。参院自民党幹事長・脇雅史は「法制局長官に法案提出権があるわけではない。余計なことだ」と批判した。


しかし、安倍が基本法案を提出しないことなどは常識になっている。秘密保護法で懲りて、集団的自衛権の行使関連法案を一本化せず、自衛隊法の改正など数本の法案改正に分散して秋の臨時国会で処理する戦術に変更する方針だからだ。別に小松が発言しても既成の事実を踏襲しただけで問題はない。


要するに冒頭説明したように、小松批判は野党とマスコミの一部による一点突破の生け贄にしようとする魂胆が濃厚なのだ。


小松は安倍が憲法解釈を「私が最終判断をする」と述べた点で野党と一部マスコミが「立憲主義の否定」と大騒ぎしている問題について反論している。「立憲主義の否定には当たらない。的外れの批判だ」と発言して、真っ向から対決しようとしているのだ。


その小松を仕返ししておとしめようとばかりに一部新聞の記者が質問するのに乗ってしまって、脇のように浅薄にも自民党内から小松を批判したり、このところ態度がでかい公明党国対委員長・漆原良夫のように「発言は注意して欲しい」といった苦情が出るのだ。


まさに小松は集団的自衛権の行使をめぐって孤軍奮闘の感がある。時には野党とけんかする型破りの法制局長官がいてもいいと思う。


しかし政府・与党は冷たい。首相周辺からは「かばいきれなくなる」との声が上がる。さすがに首相・安倍晋三は「立派に仕事をやり遂げていただきたい」と問題視していないが、当然である。ここで小松の首級をあげられては、集団的自衛権の行使容認が大きな挫折を迎えることになりかねないからだ。


首相周辺はかばいきれなくても、かばわなければならない構図であることを知るべきだ。かばわなければ災いは自らに降りかかるのだ。まあ、小松も自らを抑えて、法解釈に専念すべきであろう。いくら政治の素人だと言っても、共産党ごときとけんかをしても何の得もない。損するだけだ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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