2014年03月24日

◆もう劇場型政治の時代ではない

〜大阪市長選〜

杉浦 正章



都構想は実現不可能に


政治的には独り相撲にすら負けたのが大阪市長選の結果であった。候補が事実上一人だから投票率がメルクマールになるが、たったの23.59%。候補者に対する有権者全体の信任度を示す絶対得票率は17.85%で、市長選史上4番目に少ない体たらく。


市長・橋下徹の劇場型政治手法に、さすがの大阪市民も「ノー」を突きつけたことになる。すぐに“民意”に頼るポピュリズムに、“民意”が拒否権を行使したのだ。


そもそも、橋下の政治判断は最初から誤算があった。最近の重要選挙を見ても“民意”は浮ついた「風」による選挙を否定している。総選挙や参院選挙では大衆迎合の民主党が決定的に否定され、2月の都知事選でも細川・小泉ポピュリズムが完膚なきまでに敗れている。


有権者は地に着いた政治、落ち着いた政治を求める時代となっているのだ。それを見誤って、議会に見据てられたから「お母ちゃん」とばかりに有権者に抱きついて、大阪都構想なるヌエ的な政策を訴えても、有権者はだまされなかったのだ。


6億円もの血税を使って、このような大誤算をする政治家の素質が問われて、これが否定された選挙であった。これにより2重行政を改める大阪都構想は、事実上実現不可能となった。実現させるには法定協議会で設計図を作り、住民投票にかけなければならない。


しかし橋下の狙った法定協の人事差し替えは、議会の専権事項でありもともと無理。住民投票も、市議会、府議会共に過半数に達しておらず困難だ。橋下はやぶをつついて蛇を出してしまったというのが、今回の選挙結果にほかならない。


橋下はそもそも制度を作る前にやるべき事があることを忘れている。それは府知事の松井一郎と話し合って、2重行政を出来るものから一本化することである。それをポピュリズム目当てで都構想などという大向こううけを狙った看板を立てるから、有権者から足元をすくわれるのだ。


これで維新内部がどうなるかだが、石原慎太郎ら旧太陽系と松野頼久ら大阪系の亀裂は拡大傾向をたどるだろう。橋下の中央政治への影響力は低下こそすれ強まることはないからだ。


争点は山積している。まず原子力協定への賛否をめぐって推進派の石原らと反対派のあつれきは高まる方向だ。既に石原は原子力協定に反対するなら離党する意向を表明している。


野党再編についても橋下頼りの結いの党は、ますます窮地に陥る流れだ。石原は結いの党に当てつけるように、みんなの渡辺喜美と会合するなど、接近している。石原の老化と橋下の求心力喪失は、維新を政党として空中分解の危機に置くだろう。


首相・安倍晋三がどう出るかだが、基本的には利用できるだけ利用する戦術だろう。官房長官・菅義偉と維新との関係は良好に保たれており、今後集団的自衛権行使への憲法解釈変更に向けてみんなとともに維新の賛成を取り付けることは重要なポイントである。


抜け目なく維新が喜びそうな「地方自治法改正案」も国会に提出している。内容は都府県と政令都市の重複行政一本化で「調整会議」を設置できるようにするものであり、明らかに橋下の大阪都構想を側面支援するものだ。都構想は実現しなくても重複行政は改めるべきであり、今国会で成立させるべきだろう。


こうして“風雲児”橋下は地元政治でも中央政治でも袋小路に追い詰められたというのがその実態だ。選挙に当たって「駄目なら落として欲しい」が口癖だったが、得票率がたったの18%では、「落としてもらった」のと等しい。


民意の圧倒的な支持を背景に捲土重来を期しても、期待する「大義」は得られなかった。懲りない男は国政選挙出馬にも、食指を動かしているというが、もう政治家としては限界ではないか。これ以上世上を騒がすことをやめ、騒がすなら得意の民放番組でタレントに戻って活躍して欲しい。


新聞は橋下の独り相撲に既成政党が参加しなかったことを批判しているが、自治体の長が恣意的な選挙に打って出たからといってこれに付き合う必要は無い。自民、公明、民主などが候補を擁立しなかったのは、当然であり、その戦術は上首尾であった。馬鹿な選挙に参戦しないのもまた意志表示であろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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