2014年03月26日

◆北危機の共通意識が日韓打開へ糸口

杉浦 正章
  


「不倶戴天」からは一歩前進:日米韓会談


礼記(らいき)の「不倶戴天(ともに天をいただかず)」の状況は打開できたが、史記の「恨み骨髄に入る」はまだまだ解けそうにない。これが、日米韓首脳会談の本質だろう。


26日開催された約50分の会談では東アジアンの安保情勢が中心議題となり、北朝鮮問題を中心に、北東アジアの安全保障について緊密な連携の基に協力していくという認識で一致した。


北の危機という共通項が日韓打開への糸口となった。就任以来1年半にわたって対話ゼロであった日韓首脳が、歴史認識というのどに刺さったとげには触れず、まがりなりにも対話をしたことになる。


米大統領・オバマが嫌がる大統領・朴槿恵をテーブルにつけたことは、北朝鮮に対するけん制になることは当然だが、日米にとっては3国首脳会談に懸命のくさびを打ってきた中国国家主席・習近平への巻き返しでもある。オリンピックではないが、集うこと自体に重要な意義がある会談であった。


核サミットの場は、G7による対ロシア非難の場と化したが、極東情勢をめぐっても日中韓で冒頭からすさまじい暗闘が繰り返された。まず先手を打ったのは習であった。朴をなんとでも取り込もうと、伊藤博文暗殺の安重根記念館建設で「私が指示した」とすり寄った。


元より反日で凝り固まっている朴は、ころりと取り込まれて、ここに「中韓歴史認識共闘」が実現するに至った。日米韓首脳会談へのくさびであることは言うまでもない。
 

これに対して安倍は、ウクライナ情勢をフルに活用した。その発言はプーチンに向けたと言うより、習近平に向けたものという色彩が濃厚である。安倍は記者会見で「ロシアによるクリミア併合は明らかに国際法違反であり、力による現状の変更は断じて許してはならない」と言明した。


「力による現状変更」は中国の尖閣侵犯で常套句として使っているものであり、明らかに中国を意識した発言だ。これに加えて安倍はダメ押しの一撃を放った。「日本や東南アジアの友人たちにとっても人ごとでは済まされない。対岸の火事ではない」と言明したのである。


これは中国を名指しこそしないものの、南シナ海で圧迫を受けるベトナム、フィリピンの窮状と、尖閣で軍事圧力を受け続ける日本の状況を訴えたものだ。


この習と安倍のプロパガンダ合戦ともいえる勝負は、明らかに安倍の優勢勝ちであろう。なぜなら世界の国々は100年前の歴史認識で踊らされるほど甘くはない。今そこにある脅威の訴求力は、本来学者に任せておけば良い歴史認識でのプロパガンダを圧倒する力を持っている。


とりわけ東南アジア諸国にとって見れば、よく言ってくれたという発言であろう。一方で朴の“言いつけ外交”も依然衰えを見せなかった。


懲りない朴は3国首脳会談が確定しているにもかかわらず、25日付の独紙フランクフルター・アルゲマイネとのインタビューで「日本の一部政治指導者が慰安婦問題などで韓国国民の心を傷つけ、韓日関係を阻害している」と強調するとともに「日本はドイツに学ぶべきだ」述べたのだ。


朴得意の被害者を装って訴えているが、こうした訴えが果たして世界世論に対してインパクトがあるかどうかは疑問となってきた。


米欧やアジアの識者は戦後における日本の平和外交に理解を示しており、中韓がともに唱えるように安倍が突然変ぼうして軍国主義に日本を戻すなどと言う荒唐無稽なこじつけには踊らされないだろう。ウクライナで緊迫、G8が消滅して東西冷戦再来が言われる世界情勢は、「老婆の繰り言」に耳を傾ける余裕もない。


しかし朴の「恨骨(うらこつ)」路線は、継続する。その姿勢は紛れもないポピュリズムである。慰安婦に名を借りた大衆迎合路線であり、たちが悪いが一度吸った麻薬のようになかなか止まらない。


こうした中での3国首脳会談であったが、まず、張成沢粛正で予測が困難になった北朝鮮情勢をめぐって意見を交換した。冒頭、オバマは「アメリカと日本、韓国との同盟は、平和と安全保障を支えるものだ。北朝鮮の脅威に対して3か国は、揺るぎない体制でこれに応えていくことを示してきた。外交的、軍事的にこのような協調を強化したい」と3国連携強化の必要を強調した。


これに対し朴は「3か国のより緊密な協力の必要性が高まってきた。3人で意見交換を行うこの機会は非常に意味がある。北朝鮮の核問題は地域の平和と安定に対する重大な脅威であり、3か国を含めた国際社会が対応していくことが重要だ」と応じた。3国会談を「非常に意味がある」と強調した点は確かに「一歩前進」と言える。


安倍は「北朝鮮が核・ミサイル問題、さらには拉致問題や離散家族の問題など人道問題について、前向きな行動を取るよう、3か国でしっかりと協力していきたい」と述べ会談の意義を強調した。会談は全体として北の核とミサイルに対する危機感という共通項を“活用”して、狭いながら突破口だけは開き得た形となった。
 

オバマにしてみても、日韓の対立は、対北戦略ばかりでなく対中戦略にとってもマイナスである。朴の過度なる対中傾斜は、中国の誤算を招き、尖閣問題などで軍事行動に出る危険を伴うものである。


米国の大戦略は沖縄・尖閣・台湾・フィリピンと続く第1列島線の内部に中国を封じ込めるところにあり、同盟国韓国による過度なる中国傾斜は食い止めなければならない。習のくさびに対して、3国会談がくさびを打ち返したというのが、会談であった。


安倍は歴史認識で凝り固まった、固いカキの殻をこじ開けることに成功はしたものの、「日韓友好」にまでこぎ着けるのはまだ容易ではない。今後経済、文化の交流を促進して、慰安婦問題などでも率直に話し合い、さらなる朴の軟化を図るしかあるまい。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック