2014年03月27日

◆リコノミクス不発で中国失墜へ

平井 修一


支那ウオッチャーの宮崎正弘氏が3月20日、「中国の大手デベロッパーが倒産した。いよいよ不動産バブルの崩壊が本格化する。中国経済の狂乱はおしまいである。これから中国で始まるのは320兆円規模の地方政府債と500兆円規模の理財商品のデフォルト本格化である」と書いている。

そうなら大歓迎だが、ちょっと調べてみた。

第一生命経済研究所・経済調査部の主任エコノミスト、西M徹氏も中国経済の先行きに警鐘を鳴らしている。

<今月5日から始まった第12回全国人民代表会議(全人代)第2回会議。最終日の李克強首相による記者会見は中国経済が抱える様々な問題に対して網羅的に対処する方針を示したものの、昨年の今頃に金融市場でもてはやされた言葉である「リコノミクス(李首相主導による構造改革によって安定成長を目指す政策運営)」は完全に鳴りを潜め、中国経済の独自性や特異性を前面に押し出した政策運営がなされる可能性が出ている。

目下のところ、中国経済を巡る最大のリスクの一つと考えられるのはいわゆるシャドーバンキングを巡る問題であるが、理財商品をはじめとする不透明要因が膨張している状況に鑑みれば、対策はより素早く実現に移されることが望ましいものの、現時点においては「中国の理屈」で行われる方向性は変わっていない。

このことは、今月7日に大手太陽電池メーカーの社債が利払い不履行(デフォルト)状態となったほか、その後も数社で社債と株式の交換が停止される動きがみられるなど異常事態に陥っていることにも現れている。

共産党及び政府が「中国の理屈」を前面に押し出した対応を図ることはそれ自体仕方のないことだが、一連の対応は中国の金融商品は「信用できない」というレッテル張りに繋がるリスクを高めたと言える。

中国の公的債務残高のGDP比は世界的にみても低水準にあり、理財商品や地方政府債務などシャドーバンキングを通じた債務を公的に処理せざるを得ない事態に陥ったとしても、現時点では対応が可能な水準にあると考えられる。

しかし、シャドーバンキングを巡る問題が大きくなった後も新たな理財商品は売り出されているなど事態が沈静化する見通しは立っておらず、状況は悪化の一途を辿っている。問題の根本的な解決を先延ばしすれば、事態は一段と悪化して政府による問題対応能力が限界を迎える可能性も懸念される>

夕刊フジも「中国“3大バブル”の終わりの始まりか」とこう報じている
(3月20日)。

<中国南東部の浙江省の不動産開発会社が事実上破綻した。「影の銀行(シャドーバンキング)」の深刻化や社債のデフォルト(債務不履行)に続き、中国経済最大の病巣とされる大手不動産にも破綻ドミノは及んできた。

地元メディアなどで破綻状態と報じられたのは、浙江省にある不動産開発業者。35億人民元(約575億円)の負債を抱え、資金繰りができなくなった。銀行15行から融資を受けているが、個人からも違法に資金を集めた疑いで経営者らが当局に拘束されたという。これを受けて中国市場では、不動産関連企業の株式や債券が売り浴びせられた。

アジア経済に詳しい企業文化研究所理事長の勝又壽良氏は指摘する。

「不動産景気を原動力に高度成長をほしいままにしてきた中国だが、バブルが崩壊したら、中国の金融機関もドミノ倒しになる。政治的な混乱も不可避だろう」>

中共は不動産開発を景気の調節弁にしてきた。上げたい時は大いに投資し、過熱を冷ましたい時は投資を抑えた。このやり方が効かなくなってきたのだ。御用新聞の人民日報も「中国経済 足取りが緩やかに」と報じている(3月20日)。

<1-3月の情勢は楽観できない。アナリストたちの一致した見方はこうだ。社会消費財小売総額が継続的に減少していることは、中央政府が反腐敗の方針を継続していることをある程度反映する。また最近の不動産の売れ行きの鈍化も、住宅や家電製品などの支出を減少させている。固定資産投資をみると、製造業の減少ペースが最も目立ち、ここから一部の産業が直面する生産能力の過剰という「持病」がうかがえる>

鼻息が荒かった中共がどうして「持病」になったのか。

関志雄・野村資本市場研究所シニアフェローが日本記者クラブで「中国経済の現状と課題 チャイナリスクは克服できるか」とこう講演している(2014年1月24日)

<ある程度、経済が発展すると、余っていると言われた労働力はどんどん不足します。賃金も上がっていきます。そういう段階になると、従来のように、単純な組み立てなどの労働集約型産業でいくら頑張っても、もはや経済発展はそれ以上進まない。

ここに来ると、必要なのは、労働力の投入量の拡大よりも、イノベーションを通じて生産性を上げていくことになります。具体的には、産業の高度化が必要になります。ごくごく例外として、日本や韓国、台湾のように成功するケースもあるが、多くの発展途上国は、大体このあたりで経済発展が挫折してしまう。世界銀行の言葉を使えば、「中所得の罠」に陥ってしまうのです。

中国の2012年の1人当たりGDPは6000ドルを超えた。それを基準にすれば、200カ国の国連加盟国の中では、90位ぐらいなのです。まさに中所得のレベルに達しています。

だから、これから中国は日本のように一気に先進国の仲間入りを果たすのか、それとも中南米の国々のように、経済発展がこれから挫折して、先進国との距離が小さくならないのか、という分岐点に来ています。

もう一方の「体制移行の罠」についてです。中国はベルリンの壁が崩壊して以降のロシア・東欧と似ているという面があると申しあげましたが、実は似ていない面もあります。ロシア・東欧は短期間で体制移行を遂げようとして、いわゆるビッグバン・アプローチ、つまりショック療法をとった。90年代においてはハイパーインフレや金融危機が起きるなど、いろいろな紆余曲折がありました。

これに対して、中国の場合は、より漸進的な形で改革を進めてきました。三十数年たったいまも、まだ社会主義という看板を変えていない。漸進的改革という意味は、単に時間をかけてやっていくということだけでなく、言い換えれば、やりやすい順で、既得権益を尊重しながら進めていくというものです。

アメかムチかと言われれば、できるだけムチを使わないでアメ一本というのがいままでの中国のやり方なのです。そのおかげで三十数年にわたって10%近い成長をしてきたのです。ごく最近までロシア・東欧のビッグバン・アプローチよりすぐれているという評価を得ています。

しかし、考えてみれば、やりやすい順でやっていくと、やりにくい部分ばかり残ってくるのではないか。いま、まさにそういう場面に差しかかっている、というのが清華大学の先生方の考え方なのです。その中でも、市場経済に見合った形での政府の役割の転換と国有企業の改革が遅れています>

国有企業の改革は利権が絡んでとてもできそうにない。断行すれば内乱になるかもしれないからだろう。

在米の経済学者、何清漣がこう書いている。

<中国人民代表大会/政協商会議のクライマックスは「政府工作報告」です。

「中国経済の成長方式の転換と積極的財政政策と穏やかな貨幣政策等有利な要素の影響下に、中国経済は継続して安定発展をつづけようとしている」

とあります。ハッキリ言ってこの前提自体が矛盾したものです。積極財政政策というのはつまり政府が沢山カネを使うということです。一方「穏やかな貨幣発行」というのは貨幣発行量をコントロールすることです。

過去数年、政府のプロジェクトがひとつ増える度に銀行の貨幣発行で支えられてきました。もし貨幣や債券を発行しないならお金は何処から来るのでしょう? 報告にはそのルートの記述がありません。

不動産バブルの崩壊は時間の問題です。経済構造の調整が実現する以前に就職と国民収入を向上させるなどというのはホラ話です。中国人の8割は中・低収入水準にあり、大量の失業者はなんとかかんとかやっと生存しているだけで、低収入者は生活に必要なもの以外にお金は使いません。

中間階級は住居取得のためにローン奴隷になっており、これまた景気よく消費などできることではありません。

中国政府は過去十年、不断に紙幣を増刷して地方債を発行し、さらに政府投資が経済を牽引してきました。その結果世界最大の紙幣印刷機になり、高度のバブル化をとげ地方政府は債務の泥沼です。報告は「穏健な貨幣政策」を唱ってますから、これではもう紙幣印刷で地方債を増発できません>

カネはない、信用もない、助けてくれる友好国もない、たっぷりあるのは汚水と汚泥とPM2.5・・・中共が手詰まりになってきたことは確かだが、どのように倒れるのだろう。

人民日報3月24日から。

<中国発展高層フォーラム2014年―2014年の世界経済情勢見通し」が22日から24日にかけて北京で開催された。国務院発展研究センターの劉世錦副主任は、中国経済はモデル転換の時期にあり、現在は財政金融リスクのコントロール、非貿易部門の効率向上、新たな成長分野の模索の加速という3つの課題に直面しているとの見方を示した。

劉副主任は、当面の財政金融リスクは地方の資金調達プラットフォーム、不動産、生産能力の過剰な産業、シャドーバンキングなどの分野に集中している。リスクはそれぞれに絡み合い、連鎖し合って、リスク波及のループを形成しているとの見方を示した>

改革開放の30年で北京の大気汚染は回復不能になった。有効な手立てはない。30年でおかしくなった中国経済も有効なリスク回避策は示されていない。習近平も李克強も「汚職摘発、腐敗一掃」という名目の内ゲバ(派閥争い、内部闘争)に明け暮れている。リコノミクスは「中国の夢」で終わりつつある。さっさと終わってくれ。(2014/3/25)

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