2014年03月29日

◆「中台統一」懸念で政治問題化

田中 靖人


台湾の立法院占拠はサービス貿易協定が発端 

台湾の学生らが立法院を占拠したのは、昨年6月に中台双方が一層の市場開放を目指して調印した「サービス貿易協定」の承認をめぐり与党、中国国民党が審議を打ち切ったことが原因だ。

同協定は、2010年9月に発効した中台間の事実上の自由貿易協定(FTA)にあたる「経済協力枠組み協定(ECFA)」の柱の一つ。サービス貿易協定では、新たに中国側が80項目、台湾側が64項目を開放。中国側は他国・地域には未開放の電子商取引、娯楽、医療サービスの3分野を認めるなど、台湾側に大幅に譲歩したとされる。

 だが、台湾では、中小企業が多い業界を中心に、巨大な資本を持つ中国企業の参入で淘汰(とうた)されかねないと懸念が高まり、学生の間でも、就職先が失われるとの認識が広まった。

 加えて、中国企業による印刷業の寡占が進んだ場合、間接的に出版や言論の自由が侵されるのではないかという懸念など、中国側が目指す「中台統一」に利用されかねないとの不信感を生んだ。2月中旬に中国・南京などで行われた、分断後初の主管官庁トップ(閣僚級)協議で、中国側から早期承認を求められたことも、問題の「政治化」を促したとみられる。

 民進党は、協定の条項ごとの審議を求めて抵抗。立法院で過半数を占める国民党が今月17日、「審議が3カ月を超えた」として委員会審議を打ち切ったことで、学生らの乱入を招いた。馬英九総統が23日の記者会見で「発展のために選択肢はなく、(承認は)これ以上待てない」と述べたことも、学生の反発を強めている。
産経ニュース2014.3.27

関連情報:

『三橋貴明の「新」日本経済新聞』 2014/03/28
三橋貴明

台湾で学生たちが中国とのサービス貿易協定に反対し、立法院(日本でいう国会)を占拠し、学生・市民の一部が行政院(内閣)に突入する事態になっております。

日本では、あまり報じられない(特にテレビでは)のですが、本問題は我が国を悩ませる問題とリンクしており、極めて重大であるため取り上げます。

27日、廣瀬勝氏(中国投資を警告する日台共闘の会代表)および沈柏勝氏(台湾投資中国受害者協会理事)にお目にかかり、台湾の現状について色々と聞いてまいりました。

『台湾の学生側集会に首相、対話は決裂 立法院占拠
http://www.asahi.com/articles/ASG3Q6DPFG3QUHBI00S.html
 台湾の立法院(国会)を学生らが占拠して5日目となった22日、江宜樺(チアンイーホア)行政院長(首相)が周辺で行われている集会を訪ねた。江氏は学生側が求めた中台サービス貿易協定の取り下げに応じず、対話は決裂。江氏は改めて記者会見し、学生に議場退去を求めた。

学生側は対話の条件として協定取り下げなどを求めたが、江氏は「協定は台湾に有益」として拒否。このため、学生側は十数分ほどで話し合いを打ち切り、馬英九(マーインチウ)総統が直接話し合いに応じるよう求めた。占拠は違法との立場から江氏は議場には入らなかった。

江氏は記者会見で、学生らの熱意を認めつつ、民意を代表する最高機関である立法院の占拠は許されないと強調。議場を占拠して要求受け入れを迫る学生らの手法を厳しく批判した。一方、立法院周辺には学生らを支援しようと連日数万人が集まっている。』

台中サービス貿易協定は、金融、広告、印刷、レンタカー、「通信」、宅配、娯楽施設、スポーツ施設、映画、韓国、旅行、内装工事、老人ホーム、卸売、小売、運輸、美容室、クリーニング、オンラインゲーム、葬儀など、恐ろしく幅広い「サービス分野」について、
「台湾が中国に市場を開放する(=制度を変更する)」というものです。

「え? 逆は?」

と思われたかも知れませんが、なぜか台湾の対中ビジネスの方は「福建省のみ開放」であったり、「中国側が主導権を握る形で開放」だったりするのです。言葉を選ばずに書けば、不平等条約です。

特に、危険視されているのが「通信」で、一般のインターネット通信も「台湾側は」完全に中国に対し市場開放をしなければなりません。(対する中国側は福建省において、台湾のネット販売業者が拠点を設けることを認めるだけです。しかも、出資55%以下という制限付き)通信を中国共産党側に「開放」するとなると、これはもはや、「国家の安全保障に関する機密情報も、中国共産党にダダ漏れ」という事態を招きかねないわけで、台湾の学生や市民たちが激怒して当然です。

(逆に、中国共産党が国内のネット環境を外資に『開放』するわけがないわけでございます)しかも、馬政権は本協定を「秘密交渉」として推進し、交渉が妥結し、馬総統がサインした「後」に中身を台湾国民に公開したもんですから、大変です。学生たちが激怒して当たり前です。馬政権は「民主主義のプロセス」をすっ飛ばしたわけでございます。

冗談でも何でもなく、この貿易協定は台湾の「独立」に対し、決定的な刃と化すでしょう。TPP同様に、台湾においても貿易協定は最終的に議会(立法院)の批准を得なければなりません。民進党などの要望で、馬政権は協議の見直しを進める姿勢を見せていたのですが、3月17日に打ち切り。結果的に、学生や市民の猛反発を受けることになりました。
 
さて、馬政権発足以降、台湾では両岸関係条例が大幅改定されるなど、次第に「中国共産党に国を開く」状況が進んできました。現在、中華人民共和国の人民は、台湾に四年間居住するだけで台湾の身分証を取得することができます。信じがたいことに、その時点で「公務員」にもなれるとのことです。

今回の台中サービス貿易協定の中にも、中国のビジネスマンが一定のお金を支払うことで、簡単に台湾移住が可能で、ビザ更新も無制限に行えるという内容が盛り込まれています。本協定が発効すると、台湾は「中国人の波」に飲み込まれることになるでしょう。

ところで、台湾は日本以上の少子化です。合計特殊出生率は1.07(2013年)程度に過ぎないのですが、以前は毎年25万人子供が生まれていたのが、現在は12万人になってしまっているそうです。

なぜか。

理由は簡単で、中国とのビジネスが盛んになり、中国人労働者との賃金競争が激化し、台湾国民(あえて書きますが)の所得が伸びなくなってしまったためです。以前は、一世帯で3〜4人の子供を育てることができたのですが、今は1〜2人が限界とのことでございます。

そして(ここからが重要ですが)、台湾の馬政権は、中国移民を増やす理由として「少子化」を挙げています。

そもそも、中国人と労働市場で競争する羽目になり、所得が伸びず、子供を増やせなくなった台湾において、少子化を理由に「更なる移民拡大」を馬政権は推進しているわけです。実際に馬政権の思惑通り、台湾にさらに中国人民を呼び込んだところで、労働市場の競争がますます激化し、実質賃金が切り下げられ、台湾国民はこれまで以上に子供を増やすことができなくなるでしょう。

「少子化の対策は、日本の場合はデフレ脱却だ」

と、繰り返し語ってきました。「大前提」として、国民の所得が実質的に増えていく環境を取り戻さなければ、少子化問題は解決のしようがありません。

それにも関わらず、現実の日本や台湾(そして、恐らく他の国々も)では少子化や人口減少を理由に、更なる実質賃金の切り下げをもたらす「国境を越えたヒトの移動の自由」が推進されています。あるいは、推進されようとしています。

また、我が国のTPP交渉も、やはり「秘密交渉」です。TPPの中身が「内政問題」であるにも関わらず、内政をつかさどる国会議員ですら情報にアクセスすることができません。異様です。

というわけで、台湾の問題を他人事として捉えないようにして欲しいのです。日本国民と台湾国民は、共に「根っこが同じ問題」に苦しめられているわけですから。

PS
三橋無料Video「中国侵略問題」を公開中
http://www.youtube.com/watch?v=Bner2NC2O-8 (情報収録 中山)

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