2014年03月30日

◆ハイリスク手術をクリアした(3)

石岡 荘十


〜心臓手術、怖れるに足らず〜

8 インフォームドコンセント 〜腎機能の低下〜  
 

インフォームドコンセント(IC)は、執刀医が手術の概要を説明し、勿論、手術予測死亡率も明らかにした上で、患者の手術同意を求めるものだ。47歳の次男と40の長女が同席した。以下、山崎医師の説明である。

「危険因子は、左心室の機能そのものが劣化して強心剤を使っていることです」

「腎臓の機能がかなり悪い。腎臓が正常に働いていれば、腎臓が老廃物などを取り除く力がどれくらいあるかを示すクレアチニン・クリアランス(CCR:Creatinine Clearance)が、通常は約100のところ、26.4しかなかった。正常な機能の4分の1しかない」。

「腎臓の機能障害をステージング(?〜?)というもので評価をしているが、いまはステージ?。60パーセントぐらいの可能性で、術後人工透析が必要だと考えている」

山崎医師の説明は手術予測死亡率の問題へと踏み込んでいく。

9 衝撃の心臓手術予測死亡率 〜ユーロスコアとジャパンスコア~手術に伴うリスクは、手術予測死亡率(手術して30日以内に患者が死亡する確率)で推定される。その確率は「ユーロスコア(EURO Score)」や「ジャパンスコア(Japan Score)」という方法で算出される。

ユーロスコアは、正確なモデルシステムだとされている。手術前の患者の状態を17項目にわたってチェックして算出する。ユーロスコアでは20%が手術の限界、それ以上は専門用語でいう「手術不適応」、手術をしても意味がないとされている。

ジャパンスコアはこれに習って日本独自の方法で死亡を予測する方法だ。山崎主任教授が計算した。その結果、私のスコアは、
 
・ユーロ-----28.83%
・ジャパン---39.9%

想像をはるかに超える高率な死亡リスクをはじき出した。

通常、冠動脈バパス手術の予測死亡率は精々3%、僧帽弁置換手術は高くとも5%だから、同時に手術をしたとして、年齢的な危険因子を併せ考えても考えても、死亡リスクは10%を超えないはずだ。(参考:金沢大学病院 バイパス+弁置換死亡率2.03%)。

日本より手術死亡率が高いといわれる米国の学会の統計(The Society ofthe Thoracic Surgeons,2003)でも、僧帽弁の人工弁置換術は5.5%、冠動脈手術を同時に行なった場合は13%だった。だから、ユーロスコアの28%を超える私の数字は、治療法としての手術という選択肢を無情にも否定する残酷な数字だった。

私の場合、39.9%。ジャパンスコアがユーロスコアを10%以上超えている。

加えて、ジャパンスコアは死亡率(Mortality)と、「術後合併症発症率」といわれる後遺症(Morbidity)の発症率のトータルの計算が行われる。

私の場合、手術をしたときの死亡率と、死亡しなくとも後遺症が残るかもしれない確率を合算した数字(Morbidity & Morbidity)は、79.1%だった。

ということは、運良く手術で死ななかったとしてもなお40%近い確率(39.2)で後遺症が残りますよ、という非情な数字であった。足して8割、これじゃあ逃れようがない。一命をとりとめても、人工透析は覚悟しなければならないのか。

10 手術の危険因子とは何か

僧帽弁置換手術と冠動脈バイパス手術を同時に受けた場合、私の予測死亡率がこのように桁違いに大きく想定されるのはなぜか。患者一人ひとりの手術予測死亡率はそれぞれの患者が持っているマイナス要素、危険因子によって大きく左右される。

危険因子として挙げられるのは、手術をしなければならない心臓疾患以外の慢性疾患(併存疾患)、例えば肺機能の低下、腎機能低下、糖尿など。手術のとき起こるかもしれない合併症、患者の高年齢なども手術のリスクを嵩上げする要因となる。

初回待機(*)の冠動脈バイパス手術(CABG)のときの年齢の影響について、欧州心臓・胸部外科学会(EACTS)からは、5歳きざみで年齢別死亡率が報告されている。

*「初回待機」というのは、「はじめての手術で患者の容態が比較的安定しているため、余裕をもって手術日を決めて執刀できるケースのこと。56歳未満---0.9%、 61-65歳 ---1.3%、 71-75歳 ---2.9%、 80才以上---6.7%

はじめての手術か2度目、3度目かによっても予測死亡率は大きく変わってくる。心臓手術の経験がある“ばついち”の再手術の場合は、最初の手術で心臓周辺の臓器が癒着している。このためこれを丁寧にはがす(剥離)必要がある。それだけ手術中の出血のリスクが高くなる。

手術時間がそれだけ高くなることも患者にとっては大きなマイナスだ。さらに人工心肺を使った場合、腎臓が悪い患者は手術後、人工透析が必要になることが多い。肝臓が悪い人は出血が止まりにくくなり、大量輸血をする危険性もある。心筋梗塞のリスクもある。

そんなことで、再心臓手術は初回手術の5〜6倍、難度が高くなるといわれる。(つづく)

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