2014年04月17日

◆中国経済窮地 政経分離の兆し強まる

杉浦 正章



日米首脳は対中対露で共同歩調確認へ


極東とウクライナ情勢が緊迫化する中で米大統領オバマが1週間後に来日する。首脳会談に向けて日本はその外交を地球規模の視点で俯瞰する必要に迫られている。


安倍・オバマ会談は我が国の外交・安保路線の再確認で絶好の機会であるとも言える。大きな方向は日米首脳が軍事同盟強化と深化を確認し、その上で対中、対露で共同歩調を取る流れであろう。


日本は、対中関係では膠着した政治関係をひとまず棚上げにして経済文化交流を進め、対露関係ではG7に同調して、外相の訪ロなど独自の外交路線を当面控える方向を打ち出さざるを得まい。


23日来日して25日に韓国に向かうオバマとの会談で最大のテーマは極東情勢とウクライナ問題であろう。中国国家主席・習近平の対日基本戦略は日米分断と日韓分断により、日米韓の連携にくさびを打ち込む事にある。


その1歩としてのまず韓国抱き込みでは成功しつつあるように見える。これに対してオバマの戦略は日米、米韓の同盟を再確認して日米韓を軸とする極東での政治・軍事プレゼンスを再構築することにある。


安倍はこの路線に基本的には異存はない。またオバマは朴槿恵との会談で過度なる対中傾斜の危険に言及するものとみられる。


日中関係は先に「針の落ちる音にも注目すべき」と書いたが、ここにきて対話の機運らしきものが生じてきた。その背景は中国経済の悪化と、米国による尖閣防衛の強い意思表示であろう。


中国は「政経分離」へと対日政策を転換せざるを得ない情勢に陥りつつあるかに見える。16日発表の1〜3月期の国内総生産(GDP )の成長率は、実質で前年同期に比べて7・4%となり、13年10〜12月期より0・3ポイント下がった。


減速は2四半期連続で、6四半期ぶりの低水準だった。中国は主要指標の数字を自由に操れる国であり、GDPが実際にはさらに下回っているとの観測すら生じている。既に世界経済の「エンジン役」の失速は鮮明であり、不透明な「影の銀行」からの借り入れを含む借金問題で債務不履行(デフォルト)騒ぎが相次いでいる。


影の銀行の約60兆円の理財商品が年内に返済期限を迎えるとの試算があり、これが債務不履行となれば、経済の大混乱は必至である。貧富の差の拡大、地方の不満増大、若者の失業率の高止まりと習近平は泥沼の経済情勢悪化に足を取られているのだ。


翻って尖閣問題をめぐる状況を見れば、米国防長官・ヘーゲルが訪中で、日米安保条約に基づいて行動する方針を明確にさせたことが大きなショックとして作用している。つまり尖閣奪取不可能の構図が現出したのだ。


中国が占拠した場合、占領軍が制空権確保が確実な日米連合軍の反撃で壊滅的な打撃を受けることは避けられないからだ。


“尖閣戦争”で敗退した場合、筆者が繰り返して強調してきたように共産党1党独裁政権を直撃する。国内は暴動が頻発して政権崩壊は免れまい。つまり習は国内経済と外交安保で手詰まりの状態に陥っているのが実態なのだ。


こうした中で明らかに中央の意を受けた胡錦濤の息子・胡徳平が来日して、秘密裏に安倍と会談したことは重要な意味を持つ。安倍が日中対話再開にむけて強い決意を表明したのは確実であり、胡はこれを習に伝達したことも確かであろう。関係悪化以来初めて間接的ながら意思の伝達ができたことになる。


対日関係について習は既に安倍との会談は拒絶する一方で経済関係の維持拡大は認めている。GDPの悪化は、日中経済関係強化の路線を選択せざるを得ない状況にあるからだ。


都知事・舛添要一の訪中を歓迎する方針であり、日中友好議連(会長・高村正彦)の訪中もトップレベルの会談が期待されるに至っている。こうした流れは不測の日中軍事衝突の事態が一番心配なオバマの方針とも合致することであろう。


一方ウクライナ情勢で、安倍はプーチンとの個人的な友好的関係を維持しつつも、行動はG7と歩調を合わさざるを得ないだろう。尖閣で「力による現状変更は看過できない」としている以上、ウクライナ情勢がさらなる悪化を示している現在、ロシアに接近することは論理矛盾であり不可能だ。


したがって外相・岸田文雄の訪露は断念せざるを得まい。外相が訪露を断念すれば、今秋に予定されていたプーチンの訪日も中止になる可能性が高いが、ウクライナ情勢を見ればロシアが当面北方領土で大幅譲歩することはあり得なくなった。


この対露方針もオバマの期待に添うものであろう。したがって日米首脳会談は対中、対露で共同歩調を確認するものになることは確実であろう。とりわけ対中関係では安倍が進めるオーストラリアと東南アジア諸国などによる対中封じ込め路線推進を確認するだろう。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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