2014年05月13日

◆対中抑止で“安保連携の輪”確立を

杉浦 正章



習近平が「アジア新安全観」でオバマに対峙


上海は厳戒態勢に入っている。日本ではマスコミの怠慢でほとんど報道されないが秋のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議と並んで中国が重視する「アジア信頼醸成措置会議」(CICA)が来週に予定されるからだ。ロシア、中央アジア、韓国など親中国の国々の首脳、閣僚を集め20,21日に開催される。


注目されるのは中国国家主席・習近平がこの場で米大統領・オバマのリバランス(再均衡)政策に対抗してアジアにおける安保協力の新メカニズム「アジア新安全観」を打ち出すことだ。ウクライナ問題で米欧諸国から孤立しているロシアのプーチンはこれに乗る可能性が強い。


東南アジア情勢は西沙諸島事件に端を発して、中国対日米基軸による軍事ブロック対峙の様相を一段と強める方向となった。日米は既に出来つつある対中連携の輪を確立して対抗すべきである。


他国の横っ面をひっぱたいておいて信頼醸成会議でもあるまいが、同会議は1992年カザフスタン大統領が提唱して、24か国がメンバー。日米などはオブザーバーとして参加する。西沙諸島で対峙しているベトナムもメンバーであり、このところ中国にすり寄っている韓国は柳吉在(リュ・ギルジェ)統一部長官を出席させる予定だ。


この席で習近平は「アジア新安全観」を打ち出す。この新安全観について外交部報道官の華春瑩は4月16日の記者会見で、「中国側はCICAでアジアの新安全保障観の確立を推進し、アジアの安全保障と協力の新メカニズムの構築について検討することを希望する」と発言している。


さらに同報道官は「アジアの問題はアジア主導で解決すべきであり、アジアの安全保障もまずアジア諸国自身の協力強化を通じて実現すべきだし、それは完全に可能だとの声を共同で世界に発することを望んでいる」と説明した。


中国側から漏れ来る情報を総合すると習近平は、米国が日米、米豪、米フィリピン、米韓同盟など二国間同盟で中国包囲網を形成しつつあることに対抗して、多国間による安保協力関係を確立したい意図が見られ、信頼醸成会議をその第一歩とするものとみられる。
 

さらにロシアとの接近を目指す習近平はプーチンとも会談、新安全観への同調を求める。プーチンは世界的な孤立の中にあり、渡りに舟とばかりに賛同するものとみられる。もともと西側諸国間では「中ソ軍事同盟」の危険がささやかれており、両国にとっても米欧、東南アジアけん制で大きなメリットがある。


習の狙いはオバマの日、韓、フィリピン、マレーシア歴訪で確立されつつある対中包囲網に反転攻勢をかけるところにある。日本の一部評論家の中には西沙事件を軍部の独走などと主張する向きが居るが、これは噴飯物だ。


なぜなら石油掘削の発表はオバマ歴訪の4日後であり、明らかに米国が手を出しにくい急所を狙っての対米けん制だ。もちろん習近平も承知の上での海洋覇権行為だ。


中国はさらに秋のAPEC首脳会議に向けて外交攻勢を強めるものとみられる。ただ中国はフィリピンやベトナムが想像以上に反発したことに戸惑いを見せている。西沙諸島事件に関する国内の報道も極力抑えており、事態の進展によっては指導部への直撃になることを警戒している。


フィリピンやベトナムの対中強攻策の背景には、オバマのリバランス効果に加えて、首相・安倍晋三が頻繁に東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国を訪問、尖閣問題と南シナ海の問題での共同歩調を訴えたことが想像以上の効果となって現れていることを物語っている。


ASEAN が10日、事実上中国に自制を求める首脳宣言を採択した背景にも“安倍効果”がうかがえる。


日本がとるべき外交戦略としては、さらにこの安倍路線を進めるしかあるまい。首脳外交が最大のプロパガンダになるのである。日米とも6月4日のG7首脳会議で対中けん制に動くことは可能である。


しかしアジアにおける主要会議は11月にオーストラリアで開催されるG20首脳会議が対中けん制の大舞台になり得るが、それまでにはまだ時間がある。ぼやぼやしていると中国の外交・軍事攻勢に席巻される恐れがある。


ここは日米主導によりオーストラリア、フィリピン、マレーシアにベトナムなど共通の利害のある諸国をこの夏にも東京かワシントンに集めて安全保障に関する首脳会議を開催すべきではないか。


今後放置すれば中国は南シナ海ばかりでなく東シナ海でもより一層の海洋覇権行為を仕掛けてくることが予想される。共通の利害を持つ国々が連携の輪を確立することで抑止力を強め、中国の“戦意”をくじいておくことが必要だ。


当面東南アジア情勢は中国対日米を軸に激しい外交・安保上の拮抗(きっこう)段階に入るものと予想される。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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