2014年06月08日

◆公明党が守るもう一つの解釈

石井 聡
 

集団的自衛権の行使を認めてこなかった憲法解釈と同様、あるいはそれ以上に、公明党が「変えてはならない」と心に刻んできたはずのものがある。政教分離をめぐり「宗教団体の政治活動は問題ない」としてきた内閣法制局の見解のことだ。

憲法20条は「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と規定している。これを理由に、公明党と支持母体の創価学会との関係が「政教一致」ではないかとの批判が繰り返されてきた。

しかし、内閣法制局は「政教分離は宗教団体の政治活動を禁止しない」「宗教団体と国政担当者は別個の存在で違憲ではない」との見解を示し、公明党の政権参加も問題ないとの立場をとってきた。

近年では、自民党内にも靖国神社参拝問題とからんで政教分離の緩和論があり、この問題にはおおかたケリがついていたのかと思っていたところへ、野中広務元官房長官の「待った」がかかった。

行使容認のための憲法解釈変更について、創価学会の広報室が慎重な見解を示したのをとらえ、「政教分離と言いながら、なぜ憲法解釈について発言するのか」と民放番組で語ったのだ。自民党と創価学会をつなぐパイプ役だった氏の発言は波紋を広げた。

「政教分離と言いながら」というのは、創価学会が昭和40年代に「政教分離宣言」を行ったのを指しているのだろう。ただ、宗教団体が政治問題について見解を示すのはとりわけ異例ではない。

現政権に批判的な野中氏が行使容認を推進する趣旨で発言したとは考えにくい。となると、政教一致批判がぶり返す前に沈静化を図ったのだろうか。

平成20年、政府は政教分離をめぐる内閣法制局長官の国会答弁を撤回する答弁書を出した。

当時の法制局長官が衆院予算委員会で「オウム真理教の麻原彰晃死刑囚が党首だった真理党が権力を握りオウムの教えを広めたら、政教分離に反するか」という質問に「違憲」と答弁した。

ところが、公明党の山口那津男政調会長(現代表)から「誤解を与える」と質問主意書が出されると、立場を翻したのだ。

公明党と創価学会としては「法の番人」の権威を失墜させてでも、従来の見解を守った形だ。ちなみに、行使容認への慎重論には「憲法解釈の法的安定性」を理由としたものが多い。

公明党との連立に踏み切った自民党はどうか。平成の初期、野党として「政教一致」を追及する構えを見せたが、自自公連立政権の発足以降は下火になった。宗教団体と密接な関係にある政党の政権参加にあたり、何らかの制限が必要かという点について、十分に吟味した形跡はみられない。

連立による多数の確保に加え、選挙協力面でのメリットの大きさの前に、一部の連立慎重論はかき消された。選挙協力についても、課税を減免される宗教法人が、特定政党を選挙で応援することの妥当性を問う声はあったが、明確な判断は避けてきた。

連立を継続するなら、どこかで結論を得てすっきりさせておくべきではないか。(論説副委員長)産経【一筆多論】 2014.6.7

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