2014年06月09日

◆「核」が日中開戦を抑止する(34)

平井 修一


地政学者の奥山真司氏が「ミアシャイマーの提案する四つの対中戦略」をアップしている。

氏はジョン・ミアシャイマーの『大国政治の悲劇』の第二版の翻訳作業中で、「最後の第十章がすべて今後の中国の分析に書き換えられており、いくつか興味深い記述があります。とくに気になったのが、今後の中国に対してアメリカやその同盟国がとるべき戦略についてのもの。ミアシャイマー自身によれば四つあるとのことですが、今回はここで特別に要約して掲載しておきます」とある。以下ざっくりと転載する。(見出しとカッコ書きは平井による)
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■中国を封じ込めるのは困難

台頭する中国に対処するための最適な「第一の戦略」は「封じ込め」である。これによれば、アメリカは北京政府が領土を侵略したり、アジアにおいて影響力を拡大するために軍事力を行使するのを牽制することに集中すべきであることになる。

この目標のために、アメリカは中国周辺のなるべく多くの国々を巻き込んで(軍事力均衡のための)バランシング同盟の結成を狙って動くことになる。そこでの究極の狙いは、NATOのような形の同盟関係を構築することだ。冷戦期のNATOは、ソ連の封じ込めという意味ではかなり効果的な制度だったからだ。

また、アメリカは世界の海の支配の維持に努めなければならず、これによって中国がペルシャ湾や、とりわけ西半球のように、離れた地域に戦力を投射するのを困難にしなければならないからだ。

オフショア・バランサー(沖合から影響力を行使し安定を図る国)として豊富な歴史を持つアメリカにとって理想的な戦略というのは、なるべく背後にいて、中国の周辺諸国に中国封じ込めのほとんどの重荷を負わせるというものだ。

つまりアメリカは実質的に中国を恐れるアジアの国々にバック・パッシング(脅威を及ぼしてくる国に対して別の国を使って対抗させる)をするということだが、これは以下の二つの理由から、実際には行われない。

その理由としてまず最も重要なのは、「中国の周辺国が中国を抑え切れるほど強力ではない」ということだ。したがって、アメリカには反中勢力をリードするしか選択肢は残されておらず、アメリカの強力な力のほとんどをリードすることに傾けることになるはずだ。

さらにもう一つの理由は、中国に対抗するためのバランシング同盟に参加する「アジアの多くの国々の間には大きな距離の開きがある」という点であり、これはインド、日本、そしてベトナムの例を考えてみても明白だ。

したがって、ワシントン政府には「彼らの間の協力関係を取り持ち、効果的な同盟体制を形成する」必要が出てくる。もちろんアメリカは冷戦時代に似たような状況にあったわけであり、ヨーロッパと北東アジアでソ連を封じ込める重荷を背負う他に選択肢はなかった。

現地の国々が潜在覇権国(中国)を自分たちの力で封じ込められない場合には、沖合に位置しているオフショア・バランサー(米国)というのは、実質的にオンショア、つまり岸に上がらなければならなくなるのだ。(米中激突になりかねないから中国封じ込めは難しい)

■それでも「封じ込め」は最も効果的

「封じ込め」の代わりとなる戦略は三つある。最初の二つは、「予防戦争」を起こしたり、中国経済の発展を遅くするような政策を採用することによって中国の台頭を阻止することが狙われている。

ところがこの二つのどちらもアメリカにとっては実行可能な戦略とはならない。三つ目の戦略は「巻き返し」(rollback)であるが、これは実行可能でありながらその利益はほとんどない。

「予防戦争」が実行不可能な理由は、単純に中国が核抑止を持っているからだ。アメリカは自国、もしくは(日本など)同盟国に対して(核による)報復可能な国(この場合は中共)の本土に対して破壊的な攻撃を仕掛けることはできない。また、中国が核兵器を持っていなかったとしても、アメリカの大統領が中国に対して予防戦争を仕掛けることは想像しづらい。

中国がこのまま急激な経済成長を続けることができるのか、そして最終的にアジアを支配しようとして脅威となるのかは誰にも確実なことが言えないのだ。この未来の不確実性も予防戦争を見込みのないものにしている。

「中国経済の成長を遅くする」という戦略は、核戦争に比べれば確かに魅力的な選択肢ではあるが、これもまた実行不可能なものだ。この場合に一番の問題となるのは、アメリカの経済にダメージを与えずに中国経済を鈍化させる実際的な方法が存在しないという点だ。

「封じ込め」に代わる三つ目の戦略は「巻き返し」であるが、これにはアメリカが中国の弱体化を狙って、その友好国の政権の体制転換をしたり、さらには中国国内でトラブルを起こしたりすることを含む。

たとえばパキスタンが中国側と密接な関係を結んでいるとすれば(これは将来確実に実現しそうなことだが)、ワシントン政府はパキスタン政府の体制転換をして、親米派のリーダーにすげ替えるのだ。もしくはアメリカは新疆ウイグル自治区やチベットなどで独立派を支援するなどして政情不安を煽ることもできる。

アメリカは冷戦時代にソ連に対して主に「封じ込め」を実行していたが、現在わかっているのは、いくつかの面で同時に「巻き返し」をやっていたということだ。一九四〇年代後半から五〇年代前半にかけてソ連国内で反乱工作をしかけていただけでなく、親ソ派と思しき世界中の無数の政府のリーダーたちを次々と追放していった。

実際にもワシントン政府は、一九五〇年代から六〇年代にかけて中国に対していくつかの隠密工作を直接仕掛けている。

このような「巻き返し」工作は、超大国の間のバランス・オブ・パワーにはわずかな影響しか与えておらず、ソ連崩壊を早めることにはつながらなかったと言えるが、それでもアメリカのリーダーたちはあらゆるところで「巻き返し」を実行しており、ワシントン政府の政策担当者たちが将来強力になった中国に対して、この政策を使わないはずがないとは言い切れないのだ。

それでもアメリカにとっても最も効果を発揮する戦略が、今後も「封じ込め」である事実は変わらない。 (以上)
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米国を後ろ盾とするアジア版NATOの盟主は日本が務めざるをえない。経済力と基本的な通常兵器と優秀な将兵を持ち、同盟国に最新兵器を供与する能力があるのは日本しかないからだ。しかし、最大の問題は、核武装のない盟主に付いてくる国があるか、ということだ。

日本とアジアが中共に侵略されたくないのなら、日本の核武装は絶対的な必要条件である。(2014/6/8)

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