2014年06月11日

◆インドの前向き積極外交を中国が刮目

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年5月29日(木曜日)通巻第4253号>  <前日発行>  

 〜モディのインド、前向きな積極外交を中国が刮目
  矢継ぎ早に歓迎メッセージ、宿敵パキスタンはシャリフ首相が訪印〜


インド総選挙結果は予想を遙かに超えてBJPが圧勝、単独過半を抑え組閣 した。

モディ首相の就任式には長年のライバル、シャリフ(パキスタン首相)が 訪問して握手した。「恩讐の彼方に」とはいかないまでも、軍事対決をつ づけるパキスタンの首相がインドの新首相をすぐに訪問するのは異例中の 異例である。

また米国が敵対的姿勢を改め、モディに訪米を要請した。つい先日まで 「モディはヒンズー至上主義の危険人物。イスラム弾圧の黒幕」と罵倒し ていたのに?

この米国の変化も注目しておいて良いのではないか。

中国は事態の急旋回にやや狼狽しながらも、楊潔チ国務委員(前外相)が 北京駐在インド大使を招き、新政権を歓迎する旨をつたえたほか、李克強 首相も祝意のメッセージを送っていたことが分かった。なにしろ中印貿易 は中国側が480億ドルのプラスである。

「両国はハイレベルの外交コンタクトを絶やさず、協同とあらゆる方面で 交流を強化出来るうえ、アジアならびに世界平和に貢献できる」とした。

しかし1962年に発生した中印国境紛争は停戦しているだけで、両国の領土 係争ではなんら歩み寄りが見られず、中国はインドのアルナチュル・プレ デシュ州の9万平方キロの土地が中国領だと言い張り、インドは「中国が インド領の38000平方キロを軍事占領している」として両軍は国境地帯に にらみ合いをつづけている。

パキスタンはタリバンの出撃基地と化し、アフガニスタンの政権はまった く安定を欠くが、いくら中国がパキスタンと軍事同盟を結んでいようと も、イスラム過激派対策は別の問題である。

中国の新彊ウィグル自治区ではテロが絶えず、習近平は数日前にも「対テ ロ戦争」を宣言したばかり。緊張はます一方である。

新彊ウィグル自治区のイスラム過激派は「タリバン化」している。


▲新彊ウィグル自治区の過激派の戦術変更に注意

北京にあるシンクタンク「改革と発展委員会」がまとめた報告に拠れば、 最近のテロ活動には三つの特徴があるという。

第一にこれまで特定の地域に集中してきた過激派の活動は中国全土に拡大 した。雲南省昆明でのテロや広州駅でのテロは、地理的拡大を象徴している。

第二に政府、軍のみならず一般市民を標的とするなど無差別テロと化して いる。またウィグル自治区の過激派拠点はホータン、カシュガル、アクス などだが、すでに200の自爆装置が押収され、1・8トンの爆薬が発見 されており、背後に控えるイスラム過激派団体の重層的な支援態勢が存在 する。

第三に政府の対策は力による取り締まりばかりで対応能力に疑問がある。王楽泉が新彊ウィグル自治区の党委員会書記を務めた時代、「鉄腕治彊」 と言われたが、「7・5大虐殺事件」が発生し、ウィグル人の大量の逃亡 事件も付帯した。

後継の張春堅時代前期は「柔治」政策に転換した。けれども効き目はな く、自爆テロの頻発に習近平は「対テロ戦争」と姿勢を硬直化、今後の血 の弾圧はエスカレートしてゆくだろう。
     
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