2014年06月17日

◆「核」が日中開戦を抑止する(38)

平井 修一


元陸上自衛隊中部方面総監の松島悠佐(ゆうすけ)氏の論考「戦争の教科書」(2006年)を読んでいこう。

               ・・・

自衛官として38年間奉職し、防衛の実務を通して、戦争が起きるメカニズムと、それに備える諸外国の防衛体制を見てきた。

特に米軍との共同訓練、防衛研究などを通じて、米軍の特徴や我が国防衛の特異な問題点をよく理解することができたし、また、東西冷戦の最中に西ドイツ軍への留学や防衛駐在官としての勤務を通じてNATO(北大西洋条約機構)の実体をかいま見る機会も得た。

「戦争は起こるものだ」と考えている国と、反対に「戦争は起こらないだろう」と考えている国との間には、防衛に対する認識や備えの姿勢に大きな相違があるのは当然だろう。

日本は、まさに後者の方である。第2次世界大戦後、アメリカがわが国の防衛を含めて、北東アジアの安全保障に主体的な役割を担っていたために、わが国もそれに依存し、いつの間にか「戦争が起きないことを前提とした安全保障観」を持つようになってしまった。

幸いに60年に及ぶ平和が維持できたが、これはとりもなおさずアメリカとの共同防衛体制をとっていたからであり、1980年代末までわが国の脅威であったソ連も、アメリカとの衝突を好まず日本にも手を出せなかったと言えるだろう。

また、中国も10年ほど前までは、国内治安の安定と国内経済の改善施策が優先し、わが国に直接脅威を与えるような国力も備えていなかった。北朝鮮も同様であり、反日の底流はあるものの具体的な脅威とはなり得なかった。

したがってわが国も、有事法制もないままに、「専守防衛・非核3原則・戦略的兵器不保持」というような防衛体制で、「いざとなったらアメリカに頼る」という安易な防衛体制をとり続けることができたのだろう。

同時期、ヨーロッパの正面では事情は違っていた。ソ連ならびに東ドイツなどのソ連衛星諸国によるワルシャワ条約機構とNATOの諸国が相互に100万を超える軍隊を対峙させて緊張が続いていた。特に西ドイツはNATOの最前線として、戦争は起こるものとの前提に立って防衛準備を整えていた。

例えば有事法制は地方条例に至るまでしっかりと整備され、実効性検証のための訓練も定期的に行われていた。西ドイツに対する米軍の来援も具体的に計画され、戦車・大砲・重車両などの装備品はすでに西ドイツ内に事前集積してあり、アメリカ本土から兵員だけを空輸してくれば、すぐに戦力発揮できるようになっていた。わが国の安保体制との差は歴然としていた。

これまでの半世紀とは違って、これからの北東アジア情勢は緊張が激しくなって来る。中国の拡張政策は、経済力の発展、資源エネルギーの確保、軍事力の増大など、年ごとに顕著となり、周辺国への脅威となりつつある。

台湾問題は、中国とアメリカの衝突にもなりかねない。

朝鮮半島の情勢は、韓国の左傾化が進み、北朝鮮の意図する「赤化統一」に向けて動く可能性が強くなっている。この活動を支援する中国と、自由民主統一を望む日米が、半島情勢をめぐって対立する構図ができるかもしれない。

周辺のそのような事情を考えれば、わが国も、戦争は起きないだろうとの安易な気持ちで防衛を考えているわけにはいかなくなってきた。

戦争を避けるためにも、戦争に備えるためにも、戦争と軍事に真正面から向き合って、その現実を知らなければならない。(つづく)(2014/6/16)


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