2014年06月20日

◆「核」が日中開戦を抑止する(40)

平井 修一


(承前)松島悠佐氏の論考「戦争の教科書」から。

               ・・・
1933年ナチスドイツが誕生し、ヒットラーの拡張政策が始まった。ヒットラーは1938年のミュンヘン会議で、チェコのズデーデンラントの併合を要求した。次第に増大する要求だったが、これを認めてやればヒットラーは満足し、ナチスドイツの拡張政策は終わるだろうと信じて、イギリスのチェンバレン首相はその要求を受け入れた。

その結果、要求すれば何でも応じると考えたヒットラー、さらにオランダ、ベルギーへの侵攻も誘発し、第2次世界大戦へと突入する原因を作ってしまった。

チェンバレンの宥和策として、今でも大きな歴史上の反省事項になっている。独裁者の理不尽な要求に譲歩する姿勢は、結局それを拒絶するときに起きる危険以上の大きな危険を生むことを教えている。

わが国自体が今、そのような状況になっていることを認識しておかなければならない。北朝鮮の拉致や工作船などのテロ行為、理不尽な要求に対して毅然として制裁する措置が取られていない。

中国の調査船の不法な活動、一方的な海底資源の採取など、わが国の国家権益が侵されるような事態に際しても、及び腰の態度で対応している。

我が領土「竹島」への韓国の不法な占拠、ロシアによる北方四島の長期にわたる占有、中国と台湾の尖閣列島への干渉、中国の調査船による不法な海洋調査など、放置しておくと後で取り返しのつかぬことになりかねない。

竹島は残念ながらすでにそういう状態になっており、もはや武力攻撃でもしない限り取り返せないだろう。

ヒットラーの拡張政策の火種に油を注いだのは、チェンバレンの宥和政策だと言われているのに、その反省は生かされていない。

19世紀に中国大陸を支配していた清国は、朝鮮半島を属国と見なし、朝貢外交を求めて支配下に入れようとした。これに対し日本は、朝鮮半島の独立を狙いとして、清国の勢力を半島から排除する目的で日清戦争を起こした。

大東亜戦争の間、中国は日本の侵略を受け、また蒋介石の国府軍と毛沢東の革命軍との国内線に勢力をそがれ、外への権力拡大は低調になっていたが、国内の統一と治安の維持がある程度進むと、ベトナムに対する懲罰攻撃やチベット併合など、周辺諸国への活動が活発になってきた。

中国は目下、東シナ海の日中の中間線付近で石油や天然ガスの掘削と採取を行っており、周辺海域における海洋資源や石油などの調査は30年も前から計画的に進められている。それに対して我が国は、国家施策としては何の対応策も取らず、放置したままの状態を続けてきた。

小笠原諸島にある沖ノ鳥島は日本の領土だが、中国は「国際海洋法で定める島ではなく岩である」と主張し、周辺海域での調査をしようとしている。目下、石原都知事が先頭にたって、島に施設を作り実効支配を明確にして、中国の不当な要求を排除する計画が進められている。

このような(自国を世界の中心として他国を野蛮と見る)中華思想を背景とした中国の権益拡張政策は「覇権強硬外交」(パワーポリティクス外交)と呼ばれて、アメリカをはじめ周辺諸国から相当の警戒感をもって見られている。中国のこの種の政策に対して隙を見せてはならないというのが国際間の通念である。

中国は1992年には「領海法」を定め、東シナ海の尖閣諸島、ならびに南シナ海の全海域を自国の領海と定め、西沙諸島や南沙諸島を自国の領土に組み込み、これらの海洋権益と領海の保護を海軍の任務に付け加えた。これに対してベトナム、マレーシア、フィリピンなどの周辺国との領有権争いが顕在化している。

文明史家の黄文雄氏は、中華思想が「黄禍」となる恐れを指摘している
(注)。(つづく)

               ・・・
注)かつては主に欧米で、日本を含めたアジア人(黄色人種)による脅威を一般に「黄禍」と呼んだ。宮崎正弘氏は「チャイナライズ(華化)をもじって、華禍と定義したのは黄文雄氏でした。黄禍でなくて華禍です」と書いている。中共中華文明による侵略浸透、軍事力を背景にした秩序破壊、覇権主義が華禍である。世界の脅威であり、さすがの米国もうんざりしている。

ウォールストリートジャーナル2014/6/6より。

米国防総省は5日、中国の軍事動向に関する年次報告書を発表し、中国が軍事費を急速に拡大させており、同国の影響力は高まり、世界規模で米国に対峙する方向に向かっているとの見方を示した。

報告書によると、米国の軍事費は減少している一方、中国はステルス機やサイバー兵器、武装無人機の開発のほか、海軍の増強に巨額の支出を行っている。

先にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議では、中国軍の高官が米国のアジアでの行動によって中国は敵対的にならざるを得なくなる恐れがあると警告したのに対し、ヘーゲル米国防長官は中国が「周辺国をかく乱する一方的行動」をとっていると非難した。

国防総省によれば、中国の2013年の軍事費は1450億ドル(約14兆7900億円)超と推定されている。中国の公式の軍事予算は2004年以降年平均9.4%の伸びを示してきた。一方米国は13年間に及んだイラクとアフガニスタン戦争が終結に向かっているため、軍事費は今後抑制される見込み。

報告書は「中国は軍備への投資により、戦力を遠方まで展開する能力をますます向上させている」と述べている。米国の13年の軍事費は約5800億ドルだった。

国防総省は、中国空軍について「前例のない規模で積極的に近代化を進めており、西側との能力の格差を急速に埋めている」と分析した。ただ、中国はステルス戦闘機を開発しようとしているものの、数多くの課題に直面していると指摘、少なくとも5年間は克服できないだろうと予想している。

報告書はまた、中国は引き続き米国を標的にサイバー戦争を仕掛けていると警告した。米司法省は5月に、米企業のネットワークに侵入し企業機密を窃取したとして、中国軍当局者5人を起訴した。

報告書はまた、中国が軍事費を拡大させている主因は依然として台湾問題で、同国は台湾に対し高度な軍事行動を起こす能力を一段と高めたと分析している。(2014/6/18)

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