2014年06月23日

◆東証の取引時間拡大「混とん」

高橋 寛次


東京証券取引所の株式の取引時間拡大に向けた議論が混迷を深めている。インターネット証券会社が強く実施を求める夜間取引に対し、対面販売を主力とする大手や中小の証券会社が猛反発。代案として浮上した「夕方」案に加え、通常の取引終了時間を現在の午後3時から延長すべきだとの主張も派生し、3案とも譲らぬ状況だ。一方でいぜん取引時間の拡大そのものに反対する声もあり、出口は見えない。

バトルロイヤル

「相変わらずまとまらない」取引時間拡大を議論する東証の研究会が第5回会合を開いた今月11日。終了後、川村雄介座長(大和総研副理事長)は疲労をにじませた表情で、こう漏らした。

2月に始まった同研究会は、毎月1回のペースで議論を進めてきた。現在、午前9〜11時半と午後0時半〜3時の計5時間に限られた東証の株取引時間では、勤務中のサラリーマンらが売買するのは難しい。個人投資家を多く抱えるネット証券を中心に、取引時間拡大の要望が強まる中で、日本時間の夜に取引できる海外市場に流れた投資家を、東証に呼び戻したい日本取引所グループ(JPX)が、実施時期や手法を議論する場として立
ち上げたものだ。

だが、研究会の委員19人のうち、証券会社など業界関係者は13人を占める。必然的に各社の立場や思惑が主張され、会合は毎回、議論が百出した。川村座長は「バトルロイヤルだ」と評したが、研究会はさながら証券会社同士の“利害闘争”の様相を呈している。

拡散する議論

当初、研究会の事務局である東証は、議論のたたき台となる試案で「夜間」案(午後9〜11時)を提示した。「日中に取引できない個人の取引機会を拡大する」(松井証券)ことに加え、少額投資非課税制度(NISA)の開始などで関心が高まった個人投資家の囲い込みへの期待からだ。

だが、営業マンや店舗を抱える対面型証券が夜間取引に対応するためのコスト増は深刻だ。研究会では「個別の営業員と顧客が人と人でつながっている」として、2交代制による対応も困難だという意見が出た。

また、既にある私設取引システム(PTS)の夜間取引規模は1日当たり10億円程度と売買高が小さい。売買量が増えなければ、大口の注文で株価が乱高下しやすくなり「公正さを欠く市場になる」(野村総合研究所の大崎貞和主席研究員)との懸念も根強く残る。

代案として出された「夕方」案(午後3時半〜5時)は、夕方市場を「別市場」と位置付け、株価の終値はあくまで午後3時とする。終値をもとに基準価格を算出する投資信託の業務に与える影響をなくす一方、時差のある香港やシンガポールの株式市場との取引時間の重複は増え、今よりもアジアの投資家に売買機会を提供できるプランだ。

だが、既存のPTSが営業する中で、東証が新たに別市場を作る意義がわかりにくいとの批判もある。

一方、コスト負担の軽い午後3時からの取引時間「延長」案(午後3〜4時)も検討された。ただ、研究会では「少しの延長では、ニーズを十分に取り込んだ市場の提供にはつながらない」という意見もあり、3案には一長一短がある。

結果、東証の研究会が8月中旬までに出す予定の報告書では、「両論併記どころか、4論や8論になるかもしれない」(川村座長)といい、特定の時間帯を望ましいとする結論は出さない見通しだ。東証は、関係者の意見をある程度集約する思惑だったが、議論はむしろ拡散した。

根強い反発

こうした中で、大和証券グループ本社の日比野隆司社長は、「時間当たりの取引が減るだけ。社会全体のコスト増に見合う効果があるか、慎重に考えてほしい」と、拡大そのものに反対を表明している。

JPXの斉藤惇最高経営責任者(CEO)は17日の定例会見で、「いつまでも温めているのは経営ではない」と、研究会が報告書を出したら早期に最終判断する考えを示した。

だが、証券各社の賛同を得られない形で決着しても、実現は容易ではない。グローバルな取引所間競争が進む中で、活性化につながる解が出せなければ、世界で存在感を示すことはできない。産経ニュース2014.6.22  

     
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