2014年06月23日

◆「核」が日中開戦を抑止する(41)

平井 修一


(承前)松島悠佐氏の論考「戦争の教科書」から。

              ・・・

わが国は唯一の核被爆国として世界の核廃絶を求める姿勢を明らかにするとともに、自らは核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」との非核三原則を堅持している。

しかし現実には、わが国周辺のロシア、中国は核保有国であり、また北朝鮮も自ら核保有を宣言している。特に中国と北朝鮮は、わが国とは政治、経済、社会制度が異なり、現在でも何かにつけて反日感情も強く、安全保障上警戒を要する国である。

このような周辺の状況を考えれば、核廃絶を訴えるクリーンな政策を強調するだけでは、現実的な核の脅威には対抗できない。核抑止とは、相手が「核攻撃は得策ではない」と判断し、核攻撃を思いとどまることによって成り立つものであり、そのためには、相手の核使用に対してこちらも核を使用して報復ができる能力を持っておくことが必要である。

わが国は、核による恫喝を受け、あるいは核攻撃を受ける可能性が高まってきた場合には、同盟国であるアメリカの核に依存する体制をとっている。みずからは核を保有せず、アメリカの核に依存する体制は、核拡散防止条約の批准国としての立場、あるいは国内法で核兵器の保有・使用を禁止してきた立場から、将来とも堅持していくことが望ましいものであろう。

しかし、このような核戦略については、防衛計画の大綱にひと言「核兵器の脅威に対して、核兵器のない世界を目指した積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するものとする」と書かれているだけで、具体的なことは何も書かれていない。

むしろ「核兵器のない世界を目指した現実的、斬新的な核軍縮・不拡散の取り組みにおいて積極的な役割を果たすものとする」とうたって、核攻撃に対する防衛よりも核廃絶を標榜する平和国家のイメージを強調している。米国の核抑止力に依存するとしても、もう少し実体的で具体的な対応を考えておかなければならないだろう。

核カードを米国に依存するのであれば、わが国が核の恫喝を受けたり、あるいは被爆したような場合には、本当に米国が核カードを行使するような強固な連帯感を育成することが重要であり、そのためには、米国との間に平素からしっかりとした議論を重ね、明確な協定を結んでおかなければならない。

核の使用は優れて政治的な判断を要することであり、核の敷居をどのように設定するのか、どのような状態になったら核使用に踏み切るのか、日米の政府間で十分に話し合い、核使用の手続きを明確にしておくことが大事である。

さらに、もしわが国周辺に使用することが避けられぬ状態になった場合には、日米のダブルキー方式を採用するなど、具体的な協定を締結しておかなければならない。

また、現在の非核三原則のうち「持ち込ませず」の考えは、現実的には無理があり、米軍の空母や原子力潜水艦、戦略爆撃機などは、当然ながら核攻撃能力を常時保持していると思われ、それが日本に寄港するに際して、核兵器をどこかに残置してくるような措置をとるのも不可能だし、それを承知で国是として掲げているのも不自然な話である。

現実の問題として、米空母等が我が国の港湾に寄港する際に、搭載済みの核兵器を持ち込むことまで拒むことは難しく、逆に米国の核抑止力を無効にする施策を、わざわざ宣伝していることにもなっている。より現実的な視点から非核三原則を見直すことが必要である。

核に対する微妙な国民感情があり、国家の姿勢としてクリーンな政策を強調しているため、核戦略と銘打って国民の目に触れる計画としては明らかにすることは難しいのだろう。

だが、もし核攻撃を受ければ、わが国は致命的な損害を受け、国民生活への影響も極めて大きくなることは必至であり、国家の基本的な考えとその対応を明確に国民に示す必要があるだろう。それによって、核に対する国民のコンセンサスを得ることができるし、核の脅威に向き合う姿勢が明らかになるだろう。

また、弾道ミサイル防衛に関連して、核攻撃への対処についても少し真剣に考えなければならない時期にきている。

世界で唯一の核被爆国として、わが国が核廃絶に特別な願望を持っていることは当然だが、だからといって非核三原則を唱え、核廃絶を標榜し、自国のクリーンな思惑ばかりを追求して、現実的な対応を怠っていることは問題である。

わが国周辺には現実に核保有国が存在し、弾道ミサイルも配備されている(注)。これを抑止するために米国の核に依存するのであれば、そのことを十分に担保する方法を確保しておかなければならない。(つづく)

             ・・・

注)北朝鮮、核兵器8発保有か=実戦配備はなし―SIPRI(時事通信6/16)

【ロンドン時事】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は16日、世界の核軍備に関する最新報告書を発表し、北朝鮮が2014年1月現在で推定6〜8発の核兵器を保有しているとの分析結果を明らかにした。ただ、実戦配備はしていないとみられる。

報告書によれば、北朝鮮は13年にプルトニウム生産能力の向上で「大規模な取り組み」を進め、「これまでの初歩的な核爆発装置とは性質が異なる核兵器の生産に少数ながら成功した」。衛星画像によると、同国は再稼働させた寧辺の核施設原子炉の燃料棒の製造に着手したもようで、この原子炉では年間で核爆弾1個分に相当する量のプルトニウムの生産が可能という。

一方、北朝鮮が軍事目的の高濃縮ウランを製造したかどうかは未確認と指摘。また弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭、あるいは関連技術を開発したとする証拠は得られていないとしている。

世界全体の核保有総数(14年1月現在)は、核拡散防止条約(NPT)体制下で核兵器保有を認められた米英仏中ロ5カ国が計1万6075発。ほかにインド、パキスタン、イスラエルがそれぞれ80〜120発保有していると見積もられている。(2014/6/22)
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