2014年06月24日

◆「核」が日中開戦を抑止する(42)

平井 修一


(承前)松島悠佐氏の論考「戦争の教科書」から。
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・専守防衛で国は守れない

専守防衛は昭和45年の防衛白書で正式に使用して以来、わが国の安全保障の基本理念として政府が掲げてきたものだが、これによってわが国の防衛力の行使が非常に抑制的なものになってしまった。

国会での政府答弁(昭和56年)を要約すると、「わが国は、相手からの攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その対応も自衛のための最小限度にとどめる。防衛上の必要からも相手の基地攻撃をすることなく、専ら我が国及びその周辺において防衛を行う」という概念である。

北朝鮮は目下、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発・配備を推進し、わが国への脅威を作り出している。これに対応して、わが国も弾道ミサイル防衛システムの導入を決定し、海上自衛隊のイージス艦搭載ミサイル、ならびに航空自衛隊のペトリオットミサイルの改修を実施中である。

しかしこのミサイルによる防衛だけでは、国土を十分に守ることはできない。弾道ミサイル防衛用のミサイルは未だ命中精度に問題があり、しかも相手のミサイル発射から国土に着弾するまでの数分の短い時間で撃墜しなければならない難しさがある。

さらに、わが国の4隻のイージス艦と米軍が配備しているイージス艦を加えても対応力は限られており、ペトリオットミサイルの配備も首都圏、阪神地区など主要な政経中枢の防護に限られている。

北朝鮮が100〜200基も配備しているとされるミサイル攻撃に対して、初動は対応できたとしても、引き続く攻撃に対しては、最終的に相手の発射基地を攻撃し破壊することが必定になるだろう。

そういう状況を考えると、相手の基地を攻撃しないという専守防衛の考えでは有効に対応できないことは明らかである。相手の基地攻撃は、結局米軍に依存することになるのだが、米軍が果たしてわが国が望むような時機、場所、方法で攻撃してくれるだろうか。

もちろんそうなるように日米関係を緊密一体化する努力は必要だが、「自国の決定的な安全を他国に委ねる」戦略を基本に据えているのは間違いだろう。

専守防衛という理念は、平和国家を標榜するために掲げた「観念的な看板」であり、軍事的な視点から見れば「非現実的な理念」である。少なくとも、国際的な安全保障に主導的に取り組もうとする日本が掲げる政策ではない。

・戦略的兵器の不備

「わが国には国家戦略がない」とよく言われるが、特に安全保障や防衛に関しては、憲法の制約を受けて戦略的思考の枠を自ら狭めている。

たとえば、自衛権行使の権限については、「集団的自衛権の権限はあるが、憲法の制約上行使できない」と自ら制約を加え、また防衛力の保持も専守防衛を基本として、自衛のための最小限度に限定し、その結果、戦略的防衛力のほとんどを米国に依存している。

要するに、自分に降りかかってきた火の粉を払うことが国の防衛という考えに立っているので、広範な地域での「戦略的な思考ができない」でいる。

これを受けて装備の調達でも、戦略的な兵器は保持しないとの方針の下、アメリカから輸入した戦闘爆撃機の爆撃装置を外して、周辺国への攻撃ができないように改造する措置まで講じてきた。

しかしながら、最近の弾道ミサイルの脅威に対しては、単に領海・領域に侵入したものを撃ち落すだけでは、ミサイル防衛は不完全であり、相手国のミサイル発射基地への攻撃や破壊も考えないと、国民の生命は守れない。したがって、専守防衛の考え方を改め、相手の国に届くようなミサイルや爆撃機を保持することも考えなければならない。

また、防衛自体は我が国領土領海だけで起きるわけではなく、朝鮮半島や台湾での紛争が波及することも考えられ、むしろその方が多いかもしれない。

さらに、シーレーンの安全確保が国家存立の絶対要件になっており、台湾海峡やマラッカ海峡のような海運における大動脈の安全な通行を確保する必要がある。

このような観点から、わが国の安全保障は「東アジア全域を戦略的に把握」して置くことが必要であり、そのための戦略情報収集体制、さらに必要な場合には所要の部隊を派遣できる戦略機動力と、妨害を排除できる制圧力と打撃力を備えることも必要になってくる。

戦略情報収集については、北朝鮮によるテポドンミサイル発射を受けて、2003年から情報収集衛星が打ち上げられたが、まだ緒についたばかりである。その他の分野では、戦略的兵器も不備であり、アメリカに依存する以外に戦略的に対応できる体制は整っていない。(つづく)(2014/6/23)

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